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実力互角 球史に残る下克上シリーズを

長かったプロ野球シーズンがいよいよ最終章を迎える。ヤクルトとオリックスの日本シリーズがきょうから始まる。前年の最下位チーム同士によるシリーズは史上初めてとのこと。球史に残る熱戦を期待したい。

近年パが圧倒も、今年は五分の戦いか

過去2年はソフトバンクが負けなしで4連勝した。セ・リーグは2012年の巨人を最後に勝てておらず、近年はパ・リーグが優勢だった。しかし今年の両軍は五分五分とみている。投手力では先発陣が充実しているオリックスが一枚上手。打力は山田哲人、村上宗隆の中軸のほか、塩見泰隆、青木宣親、両外国人らが並ぶヤクルトに一日の長がある。

オリックス山本由伸に対し、ヤクルト奥川恭伸の先発が有力な第1戦はいきなりの見せ場だ。初戦が大事なのはいうまでもないが、黄金期の西武・森祇晶監督のように第2戦を重視するチームもある。高卒2年目にして最も安定感のある奥川を高津臣吾監督がどこで使うかに注目していたが、正攻法で山本にぶつけるようだ。どんな相手でも逃げずに勝ちにいく姿勢はいかにも高津監督らしい。

成長著しい奥川は山本に投げ勝てる可能性を秘めている。ギャンブルではあるが、勝てれば大いに勢いづく。レギュラーシーズンでは中9~10日で投げていたが、シリーズの展開次第では2試合目の登板もあり得るだろう。

少し気になるのはオリックスの宮城大弥だ。クライマックスシリーズ(CS)での登板がなく、間隔が空いてしまった。久しぶりのマウンドが初めての日本シリーズというのはなかなか難しい。

シリーズ包む独特の緊張感

自分の現役時代を振り返ると、日本シリーズにはやはり独特な緊張感があった。私は5回のシリーズで6試合に先発しながら1度も勝てず、4敗、防御率4.45の数字が残っている。

いま思えば、普段なら手間を惜しまず丁寧に攻める場面で、力で抑えようとして失敗するケースが多かった。知らず知らずのうちに力んでいたのだろう。広島のエースだった北別府学さんも日本シリーズでは勝てていない。北別府さんや私のような丁寧な投球を身上とするタイプにとっては、普段通りに投げるのが難しい舞台なのかもしれない。

特に記憶に残るのは2本のホームランだ。1本目は1999年の第3戦。0-0の四回2死からダイエー(現ソフトバンク)の小久保裕紀選手を中前打で出し、城島健司選手に2ランを打たれた。勝負のアヤとなったのが小久保選手の打席だ。2ストライクと追い込んだ後、いつもなら内角高めを見せてから外で勝負する場面で、捕手の中村武志から外角のサインが出た。私たちの考えが違うことはめったにないので「あれ?」と違和感を覚えたのだが、「まあいいか」とその通りに投げて中前に運ばれた。

後で中村に確認すると、こういうことだった。小久保選手はバッテリーがサインを交換する間、垂らしたバットを揺らして待つのが常だった。2ストライク後、中村はいつものように内角高めを要求したのだが、バットと重なってサインが見えにくかった私がけげんな顔をしたという。私がサインを嫌がったと思い込んだ中村は、そこで選択を変えたらしい。2死無走者という状況もあり、疑問を抱きながら確認せずに投げてしまったのが結果的に高くついた。

もう1本は日本一に王手をかけて迎えた04年の第6戦。2-1の六回、和田一浩選手に逆転2ランを打たれた。外角の勝負球を延々とファウルで粘られた後、内角に投じたスライダーをスタンドまで運ばれ、逆転で日本一をさらわれた。後で本人に聞くと「あのまま外で攻められたら打てなかった」と話していたからこちらの根負けだ。短期決戦では得てして1球が勝負を分ける。

下克上達成、「心のリセット」も勝負のカギ

いまにして思えば、私を含めた当時の中日ナインはリーグ優勝した時点でそれなりに満足してしまっていた気がする。巨人やヤクルトなど手ごわいライバルが多かったので無理もないが、黄金期の西武などはリーグ優勝を通過点と捉えていたといい、みているところが違った。

今年のシリーズを戦う2チームは激戦のペナントレースを制して、下克上をなし遂げた。満足感に浸ってもおかしくない状況でどれだけ心のリセットができているか。それもシリーズのカギになるとみている。(野球評論家)

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サウスポーの視点(山本昌)

プロ野球・中日ドラゴンズで投手として活躍した山本昌さんの連載コラムです。自身の選手としての思い出、現役選手やプロ野球界についての想いをつづっています。

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