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ラグビーリーグワンどう運営? 事業トップに聞く

今月開幕したラグビーのリーグワンでは各チームが興行権を持って事業を行っている。「プロ化」はしなくても運営体制を一新したケースは多い。3チームのキーマンに戦略を聞いた。

■東京SG ハイブリッド型確立

前身のトップリーグ(TL)を最多タイの5度制した東京サントリーサンゴリアス。サントリーホールディングスでの管轄は企業の社会的責任(CSR)の部署から新設のスポーツ事業推進部に移った。統括するのは昨春まで明大ラグビー部監督を務めた田中澄憲ゼネラルマネジャー(GM)だ。

――事業化の形はどうなりましたか。

「年間予算の中での運営から、自分たちで事業性を確立することになった。完全プロ化ではなく、実業団とのハイブリッドみたいな形。企業スポーツの継続可能なモデルをつくる」

――体制は。

「パートナー企業の営業などは代理店にお願いする方が楽だが、10人弱の社員でやっている。素人集団だけれど、企業スポーツの感覚を変えるためにも苦労した方がいい。努力の成果で優勝できれば達成感がある。事業も同じ。今後は行政、地域との関わりを強くするための人を増やしたい」

――収益の見通しは。

「初年度の事業規模は20億円弱。うち自前で稼ぐのは最大6億~7億円。初年度のパートナーシップ収入は目標の約1億円をクリアし、2年目の目標の1億8000万円くらいに届きそうだ。ファンクラブも好調で初年度の目標の2300人は見えた。ただ新型コロナウイルスの拡大で状況は変わる。3~4年で稼ぐ額を倍以上にしたい」

――チケットの平均単価はJ1の二千数百円より高めです。

「それくらいの世界をつくろうと。社員にもチケットを買ってくださいと伝えている。コロナもあってかホーム開幕戦の集客(1万人)は目標の1万5000人には届かなかったが、ホストゲームで約4億円の売り上げを目指す」

――スタジアムの確保が課題です。

「我々だけではできない。つくるとなった時、ぜひサンゴリアスにと言ってもらえるよう、普及活動や地元の商店街などに向けた活動をやっていく」

――リーグへの要望は。

「ゼロだと思っていたリーグからの分配金が数千万円もらえそうだ。TL時代はチームが年1500万円を払い、チケットも買っていたからありがたい。20年前、日本の野球やサッカーは世界トップとの事業規模の差は小さかったのに、放映権料などで差がついた。リーグワンはチームもうまく使って稼いでほしい」

埼玉 分社化で責任明確に

埼玉パナソニックワイルドナイツは三洋電機時代の2008年に「今年優勝できなければ廃部」の方針が決まっていたが、その年から日本選手権を3連覇。元監督の飯島均GMのもと、いち早く事業化を進めてきた。4月にはスポーツチームを統括する部署の分社化を控える。

――収入やファン拡大に率先して挑んできました。

「社員の一体感醸成やブランドイメージを果たしながら、チームを新しい構造にするためにプロ化、責任の明確化を進めてきた。この数年は4つの『S』を考えろと言っている。勝利、集客、収入、スカウト(選手獲得)。勝てば集客が増え、お金が集まり、いい選手を取ってまた勝利に結びつく。いいスパイラルになってきている」

――分社化の影響は。

「意思決定を早くでき、責任の明確化につながる。バレーボールなど他チームとはノウハウの横展開もする。仲はいいけど、事業面で負けたくないという関係になれたらいい」

――19年ワールドカップ(W杯)会場の熊谷ラグビー場が本拠地に。ホテルやレストランも併設する練習場も構えた。

「試合が少ない分、365日何かやりたかった。公園を散歩している人らに近くで見てもらえる環境を作った。トップスポーツの真剣な練習を数十メートルの距離で見られる環境は他にない」

――チームの露出に力を入れてきた。

「テレビドラマ『ノーサイド・ゲーム』の撮影にも全面協力した。W杯の年に池井戸潤さん原作のドラマに関われる。勝ち負けは取り戻せてもこのチャンスは二度とない。『ドラマファースト』という言葉をつくり、撮影の合間に練習していた」

――事業の見通しは。

「初年度は20億円近くじゃないか。3年くらいで30億円にする。自前の興行収入で6億円、残り24億円の半分がスポンサーなどの外部の収入、半分が責任企業というのが短中期の見込み。独自のシステムを入れ、チケットレス化などの取り組みも始めた。欧州の規模を見ると30億で世界一のチームを作れる。ラグビーは世界のトップランナーの距離が近いが今やらないと永遠に追いつけない」

東葛 地域のハブ理想共有

NECはラグビーのグリーンロケッツ東葛とバレーのレッドロケッツを束ねるスポーツビジネス推進本部を新設。本部長と両チームの代表を兼ねる役職にバスケットボールBリーグなどで知見を持つ梶原健氏を招いた。

――どんな戦略で進めてきましたか。

「事業をする考えがこれまでなかったので、何を目指すのかというビジョンづくりから始めた。ベクトルは社内じゃなく外。地域に目を向け、人と企業、地域がコミュニケーションをするためのハブになることを意識してきた」

「ラグビーとバレーの人員にNECのマーケティング部門が一緒になって推進本部ができた。プロ野球などで経験のある外部の人10人弱も招いた。ビジネス系の人員は現在約30人だがもっと増やしたい」

――事業規模の見込みは。

「初年度は14億円。自力で稼ぐ金額は今までゼロだったが、約4億円となりそう。当初見込みの倍だ。2割ほどはチケットとファンクラブなどで7~8割がスポンサー収入。千葉県全体をホストエリアにせず(我孫子市、柏市などの)東葛に絞ったことが成功した。地域の企業の反応はすこぶるいい」

――本拠地開幕戦の観客数は3651人でした。

「毎試合の目標5000人に届かなかった。集客は唯一、あまりうまくいっていない部分だが悲観はしていない。コロナの影響もあったし、地域の人に見に来てもらうには3~4年は掛かるもの。残りの試合はホームタウン協定を結んだ8市の市民デーとして来てもらいやすくする」

――開幕前に新加入選手の違法薬物問題が起きた。

「全社員・選手への薬物検査や注意喚起などを改めて行った。外部の委員会に原因を調査してもらっており、結果を踏まえて再発防止策を進める」

――中長期的な目標は。

「事業規模は昨年の1.5倍くらいに増えたがまだ他より小さい。3年後に自前で10億円を稼いで事業規模を20億円にし、優勝争いをしたい。5年後には30億円のイメージだ」

――チームの分社化もあり得るか。

「NECはスポーツの価値を非常に高く評価しており、必要なものという認識はある。ただ、会社の組織のままだと発展に上限がかかるかもしれない。未定だが、地域に出て、もしかしたら外部の資本も検討しながらやる方が将来性ではプラスかと思う。いずれはサッカーやバスケの親会社があるプロチームのようなイメージを持っている」

――リーグへの要望は。

「予想外の分配金はありがたい一方、プロチームと実業団が混ざっているので意識統一が必要。分社化にはこだわらないが、J、Bリーグのようにチームの収支決算を公表できるようにすべきだ。それだけで稼ごうという意識が高まる」

(聞き手はスポーツビジネスエディター 谷口誠)

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