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コロナ禍乗り越え最終戦完勝 来季の光見えたホンダF1

最終戦のアブダビGPではレッドブル・ホンダのフェルスタッペンはポールトゥウィンで完勝した=AP

2020年のF1は12月13日決勝のアブダビ・グランプリ(GP)で、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(オランダ)がポールトゥウィン(予選1位からの優勝)を決め、幕を閉じた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が7月にずれ込んだシーズンはメルセデスが圧倒的な強さを見せたものの、最終戦ではホンダ勢もライバルと遜色ない速さを披露した。来季は7年ぶりの日本人ドライバー、角田裕毅(20)のアルファタウリ・ホンダからの参戦も決定。ホンダF1最終年となる21年に向け、光が見えた最終戦だった。

ルイス・ハミルトン(英国)、バルテリ・ボッタス(フィンランド)のメルセデス勢2台とフェルスタッペンの争いになった12日のアブダビGP3次予選。2位と0秒025という僅差だったが、ボッタスを抑えて今季初めてポールポジション(PP)を獲得したフェルスタッペンは「メルセデスの独壇場となったシーズンで1回だけでもポールが取れてうれしい」と喜んだ。

決勝でも好スタートを決めると、序盤からメルセデスの2台を引き離した。1周目で1秒以上に差を広げ、レースでの追い抜きを容易にするためにリアウイングを可変させて空気の抵抗を減らす装置、DRSを後方のマシンに使えなくさせた。その後は1度も首位を譲ることなく2位のボッタスに16秒近い差をつけてチェッカーを受ける完勝だった。

フェルスタッペンは最終戦で今季初のポールポジションを獲得した=ロイター

舞台となったヤス・マリーナ・サーキットは長いストレートが2本あり、コース終盤にはコーナーが連続するテクニカルな区間がある。パワーユニット(PU)のパワーと車体性能の総合力が問われるコースで、14年のPU導入以降、勝ったのはメルセデスだけ。そのサーキットで王者を力でねじ伏せた意味は大きい。

ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはシーズン最終戦という状況下でのこのサーキット限定としつつも「信頼性、戦略なども含めた総合的なパッケージとしてメルセデスを上回った」と評価。その上でメルセデスの独走を許したシーズンについて「まだまだ王者メルセデスにはかなわなかったことを胸に刻む1年」と総括した。

苦しい1年だった。昨季はフェルスタッペンが3勝をあげ、冬のテストも順調にこなしていた。確かな手応えをつかんで開幕に臨もうとしたところで新型コロナの影響で3月13日にメルボルンで開幕するはずだった第1戦オーストラリアGPは突然の中止。その後、欧州各国が相次いでロックダウン。ようやく開幕したのは4カ月遅れの7月のオーストリアGPだった。

この中断期間、メルセデスとの差は想像していたよりも広がった。ホンダの山本雅史マネージングディレクターは「開幕時、メルセデスは2ステップくらい上にいた」と振り返る。PUを供給するメルセデス、フェラーリ、ルノーといったライバルたちの拠点は欧州。これに対してホンダは栃木県さくら市にあるHRD Sakuraが開発拠点であり、そこで製作したPUを前線基地となる英国のミルトンキーンズにあるHRD UKに送ってシーズンを戦う。コロナ禍で国をまたぐ移動に制限がかかり、円滑な開発という点では不利は否めなかった。

その上、開幕が大幅に遅れたことで過密日程になり毎週のようにGPが開催された。日本からの出張者は一度帰国すれば、待機期間などがあるために次にレースに参戦することができない。山本氏は「ほとんどのエンジニアが開幕から一度も日本に帰国できなかった。家族とのコミュニケーション、レースに集中する環境づくりという面で大変な1年だった」という。

そうした厳しい環境の中でも第5戦の70周年GPでは絶妙なタイヤ戦略を生かしてフェルスタッペンが勝利を飾り、赤旗中断など荒れた第8戦のイタリアGPではアルファタウリのピエール・ガスリー(フランス)が自身初、チームとしても旧トロロッソ時代の08年以来の勝利をつかんだ。

「両チーム、特にレッドブルは空力など少しずつでもアップグレードしてくれた」と山本氏。ホンダもPUの最適化に努め、田辺氏が「(メルセデスに)けっこう近づけた、という感じ」と手応えを口にするところまで進化した。それは15年の再参戦以来初めてPUの使用基数を規約内におさめたことにも表れた。信頼性の向上が戦績にも目に見える形で反映されるようになったといえる。

ハミルトンは通算最多勝利記録を更新するなど11勝をあげ、早々と7度目のワールドチャンピオンに輝いた=ロイター

ホンダ勢以外に目を向けると、製造者部門で7連覇を果たしたメルセデス、特にハミルトンの強さが際立つ1年だった。第2戦のシュタイアーマルクGPで今季初勝利をあげると、5連勝を含む11勝をあげ、第14戦のトルコGPで早々と7度目の総合優勝を決めた。また第11戦のアイフェルGPではミヒャエル・シューマッハー(ドイツ)が持っていた通算勝利記録に並ぶ91勝目をマーク。シューマッハーの息子のミックから、シューマッハー愛用のヘルメットを贈られると「彼は僕のアイドルだった」と喜び、第12戦ポルトガルGPであっさり記録を更新した。

メルセデスのPUを使うレーシングポイントは第16戦のサキールGPでセルヒオ・ペレス(メキシコ)がスタート直後の接触で一度は最下位に沈みながら、荒れたレースを制して初優勝を飾るなど、製造者部門4位につけた。レーシングポイントを最終戦でわずかに上回り3位となったのがマクラーレン。名門復活を期して来季はPUをルノーからメルセデスに載せ換える。

逆に不振にあえいでいたのがフェラーリ。これまでメルセデス、レッドブルとともに3強の一角を占めていたが、今季はシャルル・ルクレール(モナコ)が2度表彰台に上がったのみで、製造者部門では6位と低迷した。レースによってはPUを供給するアルファロメオにコース上で抜かれるなどスピード不足は明らかだった。

ホンダF1最終年となる21年は現在のところ、3月21日決勝のオーストラリアGPで幕を開け、12月5日決勝のアブダビGPまで全23戦が予定されている。20年は中止となった鈴鹿サーキットでの日本GPも10月10日決勝の日程で組み込まれた。

新シーズンに向け、各チームのドライバーは8人が入れ替わった。ホンダ勢ではレッドブルにペレスが加入する。今季のレッドブルのドライバーはフェルスタッペンとアレキサンダー・アルボン(タイ)だった。「他チームに比べて予選、レースを通じてエースドライバーとの差が大きい」と田辺氏も認めるように、アルボンの力不足は否めず、チームとしての戦術をとることが難しかった。実力者の加入により、競争力は高まった。

移籍、復帰組ではアルピーヌ(ルノーから名称変更)に加入するフェルナンド・アロンソ(スペイン)と、フェラーリからアストンマーチン(レーシングポイントから名称変更)に移籍するセバスチャン・フェテル(ドイツ)の注目度は高い。アロンソは2度、フェテルは4度、過去にタイトルを手にしている。

アブダビでのテスト走行でアルファタウリの車に乗り込む角田。2020年はF2で3勝をあげ総合3位につけた=ゲッティ共同

そして、ハースに加入するミック・シューマッハーとニキータ・マゼピン(ロシア)とともに下部カテゴリーのF2から昇格したのが角田だ。タイトルはシュマッハーが手にしたが、2人はF2が2年目だったのに対して角田は今季がF2初参戦。にもかかわらず、素早い順応性を見せてPP4回で今季3勝を挙げて総合3位につけた。山本氏は「毎戦毎戦、成長する姿が見られた」と高く評価する。

20歳でのF1デビューは日本人ドライバーとしては最年少。2014年の小林可夢偉以来7年ぶりの日本人の参戦に角田は「夢はワールドチャンピオン。ルーキーらしく攻めの走りをしたい」とした上で、「シーズン序盤は自分の走りをして車の限界値を知ったり、どこまでタイヤが持つかを確かめたりしたい。それを後半戦に生かしたい」と意気込む。

アブダビGP終了後、田辺氏は「あすから(来季に向けた)開発に取り組む」と話した。新シーズンの開幕まで3カ月弱。シーズン中の開発に多くの制約がある中で、いかにオフシーズンの間にライバルとの差を縮めていくか。「去年から今年にかけてのオフシーズン、メルセデスと他チームの進歩は差があった。今年から来年にかけても相当頑張らないと、追いつき追い越せない」と田辺氏。有終の美を飾るには立ち止まる時間はない。

(馬場到)

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