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歴史的な「冬のW杯」の1年 サッカー界、暦の再構築を

2月18日にサッカーJ1リーグが開幕した。今季のポイントに、いつもとは違う圧縮された日程を各チームがどう乗り切るかがある。そこからカレンダーの在り方そのものに目が向けられ、日本サッカーにとってどんな日程を組み立てていくことがさらなる発展につながるのか、本格的な議論が始まる1年になればいいと考えている。

日程が圧縮された理由は、2022年の11月21日から12月18日にかけてカタールでワールドカップ(W杯)が開催されるためである。W杯といえば通常、欧州のサッカーシーズンが終わった後の6~7月に行われてきた。しかし、そんな夏場に中東でサッカーをやるのは選手にも観客にも危険なので、今回のカタール大会は特別に国際サッカー連盟(FIFA)は〝冬のW杯〟にしたわけである。

その影響はJリーグの日程にも及んだ。昨季のJ1最終節は12月4日だったが、今季はW杯への臨戦態勢を整えるために、1カ月も早い11月5日に最終節を迎える。その間に天皇杯(決勝10月16日)、ルヴァンカップ(決勝10月22日)が入り、J1参入プレーオフ(決定戦は11月13日)もあるから「ぎゅうぎゅう詰め」という感じ。ちなみに天皇杯決勝といえば「元日」のイメージだが、来年23年1月1日に東京・国立競技場を晴れの舞台とするのは全日本大学選手権の決勝である。

川崎、横浜M、浦和、プレーオフから神戸の4チームが出場するアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)も4月に熱戦の火蓋を切る。こちらも日本勢が属する東地区は8月までに準決勝を終わらせ、決勝は遠く来年2月という変則日程。

新型コロナウイルス感染の終息が見通せない状況では、カタールでW杯が始まる前にこれらの日程をすべて消化できるのか予断を許さない。運営側は大変な労苦を強いられるはずで、無事に完走できることを祈る気持ちでいる。

これだけのタイトなスケジュールになると試合の質にも影響するだろう。今季の前哨戦となった富士フイルム・スーパーカップ(2月12日)で、昨季の天皇杯王者浦和はリーグ王者川崎に快勝した。前から連続的にプレスをかけ、高い位置でボールを奪う攻撃的な守備が見事にはまったが、そういう強度を過密日程の中で、特に夏場にチームに求めるのは酷というもの。いろいろな大会を掛け持ちするJリーガーにとって今季は非常にタフなシーズンになるに違いない。

話はちょっと横道にそれるけれど、冬のW杯は欧州を主戦場とする選手(今や日本代表でも多数派)には悪い話ではない気がする。

国内のリーグ戦とカップ戦、チャンピオンズリーグ(CL)などを掛け持ちで戦う欧州のビッグクラブの選手はシーズンが終わる頃には疲労のどん底にある。そこから短い休養をもらってなんとか気持ちを切り替えるものの、体はへとへとのままW杯にやってくるというのが、これまで多く見受けられたパターンだった。

今回のW杯はシーズン終了後ではなく、シーズンが始まってまだ浅い時期に開催されるから、欧州のクラブで活動する選手もフレッシュな状態で大会に入れる気がするのだ。チームは活力にあふれ、メッシ(アルゼンチン)のようなスーパースターも大いに神髄を発揮し、予想以上にハイレベルな大会になるのではないか。

クラブサッカーのタイトな日程の合間を縫うように、日本代表の活動も行われる。フル代表は3月にW杯カタール大会アジア最終予選の最後の2連戦を戦う。ここで7大会連続の本大会出場を決められたら、6月と9月にFIFAが定めた約2週間ほどの代表活動期間で強化試合が組める。7月19日から27日にかけて中国で開催される東アジアE-1選手権にも参加する。

コロナ禍で海外の活動を控えていたアンダーエージの代表も本格的に稼働する。パリ五輪を目指すU-21(21歳以下)代表は、6月1日から19日にかけてウズベキスタンで開催されるU-23アジアカップに出場する。9月10日から25日まで中国・杭州でアジア大会もある。アジア大会と同時期に来年のU-20W杯出場を懸けたU-20アジアカップ予選もあるからチーム編成は大変だ。

どの大会にどの選手を送り込み、国際経験を積ませて成長につなげるか。所属クラブの強化担当を交えて行うその調整は昔からデリケートな作業なのだが、20歳前後でも所属クラブで主力になるような選手が増えている今は難易度がさらに増した感がある。Jリーグの最中にそういう選手がアンダーカテゴリー代表の活動で抜けていくのは、場合によってはクラブにとって痛手になる可能性もあるからだ。

カレンダーの作成は世界のサッカーにとって一大問題であるが、FIFAがつくるそれは欧州偏重といっていいだろう。欧州のクラブサッカーの全日程が終了しない限り、代表選手を集めたビッグイベントなど開催できないから当然といえば当然なのだが。

欧州サッカーのオフシーズンにあたる6~7月にW杯を行うのもそうだし、コロナ禍に直撃されて延期になっているものの、参加チームを拡大して4年に1度行うことにしたクラブW杯もこの時期に持ってくる考えでいる。欧州連盟は当然ユーロ(欧州選手権)をこの時期に開くし、南米連盟のコパ・アメリカ(南米選手権)も同様。

先ごろ、セネガルが初優勝したばかりのアフリカ選手権は1~2月開催だが、これは暑熱対策の問題もあるのだろう。その時期、アフリカの選手がチームを離れることにクラブ側は不満たらたらだが、1月の欧州はウインターブレーク中のリーグもあり、優勝争いの佳境でもないからギリギリ許容できる範囲なのだろう。

アジアはどうかというと、日本や韓国、オーストラリアに欧州組がいる現状を思うと、大陸最強を決めるアジアカップはユーロやコパ・アメリカと同じく欧州のオフシーズンに開かれてしかるべきだと思う。欧州のシーズン中に開催されて、約1カ月近くクラブを離れたら、ポジションを失う選手だっているだろう。

ただ、アジアは広く多様で東アジア、東南アジア、西アジアで文化も宗教も気候も風土も違うから、一律に夏開催と決められない難しさはある。

個人的にはJリーグのシーズンも欧州と同じく8月に始まって翌年5月に終わる形に合わせた方がいいと思っている。ほとんどの選手が国内にいて海外移籍がまれな時代ならともかく、選手がどんどん出入りする今は国際的な、特に欧州と連動したカレンダーをつくっていかないと、これ以上の成長は見込めない気がするのだ。Jリーグが欧州5大リーグに追いつき追い越せを命題とするなら、なおさらそうである。

日本サッカー協会とJリーグが手を携え、サッカー界を挙げてカレンダーを再構築する時が来ていると感じる。

(サッカー解説者)

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