フランス、驚異の粘りもPK戦に泣く W杯連覇逃す

壮絶な打ち合いの残り香が、決着後もピッチに漂っている。そう思わせるほどに決勝戦のボルテージを引き上げたのは、フランスのとんでもない粘りだった。後半も残り10分ほどという土壇場から2点差を追いついただけでも驚きだが、延長戦の前後半もついえようかというところで再び同点とした。簡単には引き下がらないディフェンディングチャンピオンの底知れぬ爆発力、恐るべし。
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アルゼンチンにしてみれば「魔の2分間」だっただろうか。楽勝ムードを一瞬にしてエムバペに吹き飛ばされた。コロムアニがもぎとったPKを決めたのが80分。その1分後にはゴール左前でエースの右足が火を噴いた。浮き球で渡ってきたパスをダイレクトボレーでたたいた。

息を吹き返してからのフランスは、アルゼンチンに食い下がったという生易しい類いのものではない。スペースさえ与えられ、いったんギアが入れば、ほんのわずかの隙で相手を恐怖の底に陥れられる。ゴール前をじゅうりんするエムバペの恐ろしさに、アルゼンチンは肝を冷やし続けている。
108分にメッシの勝ち越し点が入ったときには「フランスももはやここまで」と誰もが思ったことだろう。そこからまたもやPK獲得で追いすがり、1試合で2度のPKを決めたエムバペはハットトリック達成。延長戦終了間際にコロムアニがGKとの1対1に躍り出たとき、セーブで間一髪逃れはしたものの、アルゼンチンサポーターは心臓が止まりかけたはずだ。

80分まではチームは眠っていたのかと首をかしげたくなる。プレーの反応も出足も鈍く、ボールの争奪戦でことごとくアルゼンチンに先を越され、バイタルエリアに簡単に侵入を許した。「出場した選手は(体調のうえでは)フィットしていたし、前の試合と同じエネルギーを出した。言い訳にはならない」とデシャン監督はいう。確かに先発陣に目立った欠員はいなかったが、直前に体調不良のメンバーが相次いだことが尾を引いたのかもしれない。
史上3カ国目の連覇の夢は途絶えた。それでもデシャン監督は、フランスサッカーの未来への旅はこの日の「敗北」では終わらないと力を込めた。「フランスには大きなポテンシャルがある。多くの若い選手が経験を積み、レベルの高さを示した。将来については心配していない。楽観視しているよ。多くの選手が次回のワールドカップ(W杯)でもまだ30歳以下だ。成功は約束されていると思っている」
(ルサイル=岸名章友)
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