興奮と歓喜に浸ったサッカーワールドカップ(鏑木毅)

サッカーワールドカップ(W杯)期間中、我が家も早起き、夜更かしを繰り返し、一喜一憂する興奮の日々を送った。
日本代表チームは決勝トーナメントでクロアチアにPK戦で敗れ、ベスト16だった。周囲からさまざまな評価がなされているけれど、まずはすばらしい結果だろう。
グループリーグ初戦のドイツ戦では前半に先制点を許し、見ていた私が「これは勝ち目がない」と早々に諦めた。翌日の仕事に備えて寝入っていたら、娘が「パパ勝ったよ」と絶叫し、大喜びしていた。
続くコスタリカ戦では攻め続けながらも喫した黒星にがくぜんとした。そして勝利は難しいと思われたスペイン戦は早起きしたかいがあって、劇的な勝利を目に焼き付けることができた。
日本チームが決勝トーナメントに進んだのは4回目。過去はいずれも紙一重の敗退に終わっていた。2010年の南アフリカ大会でもパラグアイにPK戦の末、屈しているし、前回のロシア大会ではベルギーに2点先行しながらも終盤に逆転を許した。
今回のクロアチア戦の敗北も先制点を挙げてからの試合の膠着状態を打開できず、わずかなところでベスト8入りを逃した。戦国時代に天下統一を果たした豊臣秀吉は「負けると思えば負ける。勝つと思えば勝つ」と、常に勝利への信念に揺るぎがなく、厳しく難しい戦を勝利へと導いたという。
もちろん、日本チームにも負ける気持ちなどなかったはず。ただ、最後まで勝ち切る確固たるイメージを選手全員で共有できていたかとなると、はたしてどうだろう。
相手のクロアチアは前回大会の準優勝チーム。W杯初出場を果たした1998年フランス大会でいきなり3位、そして6回目の今回も3位で終えた。たとえ選手が入れ替わろうと強豪としての伝統と意識は受け継がれ、精神的な優位性や勝利を信じ続ける精神的なスタミナに差があったように思えた。
1993年、日本サッカーが当時悲願だったW杯初出場を逃した「ドーハの悲劇」はいまも記憶に残る。当事者としてピッチに立っていた森保一監督が、同じ地で日本代表を率いて強豪を連破したのだから感慨もひとしおに違いない。
ドイツ、スペインを破った日本チームの歴史的な快挙は、選手の踏ん張りに加えてベンチの采配なくしてはなしえなかった。森保監督は冷静で、ときには冷徹な戦略家の一面をみせる一方で感情をあらわにした。その情熱と人柄がみごとなワンチームをつくったのだなと感じた。
だが素人ながら日本がベスト8以上に進むには何が不足していたのかを考えると、強国との試合経験を積むしかないところに突き当たる。そしてチームを強く、よりたくましくしていく上で日本人監督にこだわる必要はないと思える。
チームの心を一つにするという面では日本人監督は優位だろう。ただ今回も乗り越えられなかった「8強への壁」を突破するなら、壁の向こうを知る外国人指導者によってチームに経験値を植え付けていくのも、森保監督の采配同様に妙手となりうる。もっとも、誰が監督になっても応援し、一喜一憂することには変わらない。
(プロトレイルランナー)

プロトレイルランナーの鏑木毅さんのコラムです。ランニングやスポーツを楽しむポイントを経験を交えながら綴っています。
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