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プロアスリートは脳から育てよ ビジュアルで迫る現場

現場探究

昨年度、5人の卒業生がJリーガーとなった大阪・興国高サッカー部。2006年から同校を率いる内野智章監督はこれで23人の教え子をJリーガーに育てたことになる。全国高校選手権への出場は19年度の1度だけ。そんな高校からどうして多くのプロが生まれるのか。背景には脳の力を引き出す練習法や、勝利よりも個の力の向上に重点を置く指導理念がある。

5月下旬に同校の練習場を訪れると、部員たちは試合で使う5号球よりも明らかに小さなボールでドリブルやリフティングに励んでいた。監督に聞くと、子供用の3号球だという。

内野監督は高知大在学中、徳島大の脳の研究者から「脳に普段と異なる刺激を与えると技術習得のスピードが上がる」と聞いた。たとえば、いろいろな大きさや素材のボールを使ったり、雨にぬれて滑りやすいコンクリートの上や凹凸のある地面でプレーすることで脳に「いつもと違う」という刺激が伝わり、練習効率が上がるのだという。

大学卒業後に愛媛FC(当時JFL)でプレーした内野監督は指導者へ転身する際、指導法の研究のためブラジルのストリートサッカーの映像集を購入。そこでブラジル人が日常的に様々な大きさのボールを使っていることに気づき、徳島大の研究者の話がよみがえってきた。

そこで大きさや重さが異なるボールを5種類用意し、それを使い分ける練習メニューを組んだ。内野監督は「自分で蹴ってみても、使うボールによって違う筋肉が痛くなる」と体に違う刺激が入っていることを実感。ボールが小さいほど芯をとらえてトラップしないと思わぬ方向に飛んでいくため、部員からは「普段3号球を蹴っていると、5号球が扱いやすくなる」との声も聞かれた。

10㍍ほど離れた場所からボールを投げ、途中で目をつぶり落下点を予測してトラップする練習も課す。これも徳島大研究者の「視覚に頼らないと他の感覚が研ぎ澄まされる」との教えを生かしたメニュー。ボールから一度目線を切らせる練習法も、技術にたけた選手が育つ要因だろうか。

様々なポジションを経験させるのも内野流だ。同校出身で日本代表FWの古橋亨梧(ヴィッセル神戸)にも在学中はボランチやサイドバック(SB)を経験させたという。古橋は当時から50㍍5秒9の俊足だったが、足で相手をぶっちぎるだけでは細かい技術は上達しない。そこで足の速さが通用しないボランチでプレーさせ、足元の技術を磨く努力をする方向に導いた。

現在3年生の武本射雅も本来はボランチだが、今はSBでプレー。「(対面する相手がいる)SBを経験して1対1に強くなった。パスの選択肢も広がった」

全員のポジションを固定し、1年生から磨き上げれば全国でも勝ち進めるチームができるだろう。だが、内野監督には、育成年代でも部活では勝利が評価される日本のサッカー文化を変えたいという思いがある。「勝利よりも世界で活躍する選手を育てたい」。これからも部員の技術向上を後押しする。

(田村城)

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