クロアチア不屈、くめども尽きぬ誇り ワールドカップ3位決定戦制す - 日本経済新聞
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クロアチア不屈、くめども尽きぬ誇り 3位決定戦制す

前回の準優勝に続く殊勲の3位。人口約400万人のバルカンの国のどこから、これほどのサッカーの力が沸いてくるのだろう。どうやったらモドリッチやコバチッチ、ペリシッチのような選手を生み出せるのだろう。秘訣を教えてもらいたくなる。

モロッコの気迫に、クロアチアも熱さで応じた。前に出ようと力を振り絞る両チームの姿勢によって、3位決定戦は胸熱くなる攻め合いと化した。「チームのみんなが信じていた。僕らの士気の高さは見てもらってわかったと思う」とMFマイエル。7分に先制した2分後、すぐ追いつかれたものの、試合はコントロールし続けた。「中盤をコンパクトに保ち、モロッコよりも多くのチャンスをつくれた」と主将のモドリッチは胸を張る。

ポジションの概念など二の次で、うまい選手はピッチのどこでプレーさせてもうまい。ペリシッチがそう。攻撃が持ち味のタイプのはずが、事もなげにサイドバックをこなしている。飛来するクロスをCBかのようにはね返し、失点すれすれのピンチも防いだ。

攻めで目の付け所がいいモドリッチは、どこがやられると危ないかもすぐに感付く。だから守備の局面でもいつも肝心なところにいる。90分間、どんな苦しい時間帯であっても。このモドリッチやコバチッチからボールを奪おうとしても、ボールを逃がされ、奪えない。ではと構えると、好きに回される。だから試合をクロアチアの手中に収められてしまう。

1点目はトリックプレー気味のフリーキックから。ゴール中央にいたペリシッチがスッと左へ抜けながら、上半身をひねって逆側のゴール前へ折り返す。この力強いヘディングが、グバルディオルのダイビングヘッドを呼び込んだ。

勝ち越し点も美しかった。左からカーブのかかったクロス気味の弾道がゴールネットに収まった。この手のシュートを得意にしていたというオルシッチは「キャリアで最高のゴールになったね」。

その2点目はゴールの数プレー手前、相手ゴール前でのコバチッチのボールの即時奪回が効いている。中盤の底が持ち場のはずが、チャンスと見るや、いつでも自陣奥から長駆してくる。それは80分を過ぎて足が止まろうかという時間帯になっても変わらない。疲れるという感覚がないのだろうか。疲れても走れてしまうのか。モドリッチも同じで、手本として見習いたくなる。

「最も大事なことはクロアチアが3位のメダルを勝ち取ったことなんだ。勝者として国に帰るのか、敗者として帰るのかではまったく違うのだから」。W杯を〝勝利〟で終えたという誇りがモドリッチからあふれ出る。「トロフィーにもう少しまで迫れたから、残念ではある。でもクロアチアが将来、欧州選手権なりネーションズリーグなり、ビッグタイトルを勝ち取れると僕は信じている。そして僕は、自分が代表チームに何らかのクオリティーをもたらせる限り、クロアチアのためにプレーし続ける」

国土や人口でみれば小さな国の人々の、大きな期待と、くめども尽きぬ誇りに応えたいという不屈の思いが、ブロンズメダルという形となって輝いた。

(ドーハ=岸名章友)

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