クロアチア、団結力の3位の中心に小さな巨人

初出場の1998年大会でクロアチアは一躍3位になって世界を驚かせた。今回の銅メダルも十分に驚異だろう。4年前のロシア大会より順位は一つ落としたが、主将のモドリッチも「最も大事なのは準決勝まで進んで3位を確保し、銅メダルの歴史をクロアチアに刻んだことだ」と胸を張った。
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1次リーグ初戦で対戦し、無得点で引き分けた相手との再戦。モロッコはボールの持ち手への強烈な詰めと推進力を武器とするが、ワールドカップ(W杯)でアフリカ勢に無敗(2勝1分け)のクロアチアには、パワフルな突進を揺らぎながら受け流す耐震構造が備わっていた。
その中心にいるのがMFのモドリッチだった。メトロノームのようにゲームのテンポを自在に変えるプレー。すべてに意味があるパス。消耗が極限に近づいても、ぶれない技術。172㌢の小柄な体で肉弾戦も辞さず、試合が終わると誰よりも汚れたユニホーム。まさに10番の鑑(かがみ)であり、小さな巨人だった。

そんな主将に負けじと周りも一芸を披露した。FKで挙げた7分の先制点はマイエルのチップキック、ペリシッチの体をひねりながらの頭でのパス、グバルディオルのダイビングヘッドが鮮やかに連結したもの。ハンドボールの「スカイプレー」のように空中の点と点をつないだ技術力のすごみ。
42分のオルシッチの勝ち越しゴールも、カーブをかければポストの内側なら当たって入ることは織り込み済みのシュートだった。

日本、ブラジルとのPK戦をしのぎ、アルゼンチンに敗れた失意を乗り越え、たどり着いた3位にクロアチアのダリッチ監督は「あらゆる努力を尽くした選手全員をたたえたい。このメダルは団結のたまものだ」と感激の面持ち。
そして今回が最後のW杯になる選手がいることを認めながら、22歳のスタニシッチ、シュタロ、既にビッグクラブで争奪戦が勃発している20歳のグバルディオルら次代を担う若手が銅の経験を積んだ意義も強調したのだった。

3位決定戦にフル出場しプレー時間が700分を超えた驚異の37歳、モドリッチは注目の去就についてチームにとどまる意思を明らかにした。
「少なくとも2023年夏のネーションズリーグまでは続けたい。その後のことは分からない。肉体的なことを含めて自分がどう感じるかによる。自分にチームを良くする力がないと分かったときは代表から退くだろう」

「でも、もし僕がまだ特別なクオリティーをチームにもたらせるのであれば、代表でプレーをし続ける。ほかのどんなクラブでプレーするよりも、代表のためにプレーすることが僕の人生において最も大きな誇りだから。それだけに最終的な決断を下すのは簡単なことじゃないんだ」
世界最高峰のクラブ、レアル・マドリードに属するモドリッチだから、余計に胸を打つ代表への、祖国への愛。その純度が、このチームの強さの根源にある。
(ドーハ=武智幸徳)
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