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騎手候補生の模擬レース 実戦さながら、実況・映像も

あっという間に11月も半ばを過ぎ、2021年もあとわずか。まだ少し早いかもしれないが、今年の競馬を振り返ると、横山武史騎手(美浦)の活躍が非常に強く印象に残った。昨年94勝をあげ、初の関東地区最多勝を獲得した5年目、22歳の若者は、今年既に88勝(19日現在、以下同じ)で、関東トップにして全国でも5位。このペースなら、前年のキャリアハイ更新はもちろん、年間100勝突破も夢ではない。

エフフォーリアとのコンビで見せた競馬はどれも印象深い。4コーナーから一気に勝負を決めた皐月賞。声に喜びが、そして笑顔に満ちあふれたインタビューは見ていて本当に気持ち良かった。敗れたダービーとて、単勝1.7倍。周囲には計り知れない、とてつもない重圧を背負いながら、実に堂々たる競馬を披露し、レース後は勝者にも敗者にも、惜しみない拍手が送られた素晴らしいレースだった。そして秋、タイトルホルダーと挑んだ菊花賞では「先頭は絶対に譲らない」という気迫に満ちたスタートダッシュから逃げ切り圧勝。1週後の天皇賞、強豪古馬相手にエフフォーリアとの世代交代を告げる完勝劇を演じた。

勝ち星を重ねるだけでなく、GⅠ、GⅡを各3勝。中身も濃く、活躍は見事の一言である。ダービーの後、彼を負かしたシャフリヤールの藤原英昭調教師が「彼(横山武)は間違いなく日本のトップに立つ男」と繰り返したが、その時が来るまでに、さほど時間はかからないのだろうか。今後が楽しみでならない。

最近は横山武を筆頭に、20歳を過ぎたばかりの若手騎手の活躍が非常に目立つ。改めて勝利数ランキングを眺めると、10位以内に20代は2人だけ。30代も3人で、あとは全て40代と、まだまだベテランは健在だ。それでも、3年目で21歳の岩田望来騎手は77勝をあげて全国7位。同じく3年目で20歳の菅原明良騎手は67勝で関東5位、全国12位と、トップ10が見える位置につけている。今年3月にデビューしたルーキーに目を向けると、ここまで26勝と25勝、デビュー時から競い合うように勝ち星を重ねる小沢大仁騎手と永野猛蔵騎手も存在感を示している。

デビューに向け10レース、チャンピオン決める

そんな若手騎手を毎年輩出するのが、千葉県白井市にある日本中央競馬会(JRA)競馬学校。来年3月のデビューを目指し、騎手課程第38期生の9人が、日々の学校でのトレーニング、そして実戦を想定した模擬レースを重ね、技術の向上に取り組んでいる。実は大先輩からバトンを譲り受ける形で、今年から我々ラジオNIKKEIのアナウンサーが、模擬レースの実況に本格的に携わることになった。従来も、10月初旬に競馬学校で行われる公開イベントの模擬レースの実況には携わっていたが、競馬場で非開催日に行われるレースの実況も担当することになり、10、11月と2回、私が東京競馬場で担当してきた。

騎手候補生の模擬レースは9月から年明け2月まで、全8回10レース行われ、それぞれのレースで獲得したポイントの合計でチャンピオンが決まる「競馬学校チャンピオンシップ」というシリーズ戦になっている。まず公開模擬レース2戦を含めた最初の4戦が競馬学校で行われ、5~8戦目の4戦は東京競馬場と中山競馬場の芝、ダートで実施。そして卒業試験を兼ねた9戦目、卒業供覧となる最終戦は、年明けに再び競馬学校で行われる。

今回、初めてその様子を目の当たりにした。競馬学校からやってきた騎手候補生たちは、検量室から装鞍(そうあん)所に向かい、パドックから各馬に騎乗して最終周回を行う。地下馬道を通って馬場入場すると、コース上でウオーミングアップを行い、ファンファーレが鳴るといざ実戦。レースを終えての後検量と、完全に本番と同じ流れで、予定時刻に沿って行われる。現役騎手も参加しており、私の仕事も普段のレース同様、実況席からまず馬場入場の際、人馬の紹介を行い、ファンファーレが鳴ると実況。これまた全く本番同様の流れである。使用する道具も、機材も、いつもと同じだ。

レース後はメディア撮影、反省の弁ばかり

レースを終えて検量室に向かうと、騎手候補生たちは奥の部屋で終わったレースについて、数十分にわたり、教官からいろいろ指導を受けているようだ。手前のスペースでは、今春入学した40期生(1年生)たちが、先輩の模擬レースのVTRを何度も見ながら、教官の話を真剣な表情で聴いている。きっと2年後の、自分たちの模擬レースを想像しながら。

教官の講評、指導が終わると、訪れているメディアの撮影に応じ、1人ずつレースの感想をコメントする。2戦ともにそうだが、レース後、相当厳しい指導を受けているのか、勝者も敗者も、皆反省の弁ばかりだった。

11月5日、彼らにとって初の芝の実戦となった6戦目は、最後の直線、ずらり横に広がっての激しい追い比べとなり、接戦を制した川端海翼君はこれがうれしい初勝利だった。やはり反省の言葉が口をついて出たが、「でもうれしかったのではないですか?」と問いかけると、笑みを浮かべて「すごくうれしかったです」。その一言を聞き、笑顔を見られて、何かこちらまで幸せな気分に。皆が未来のスター候補である。冒頭の横山武騎手ではないが、まずは全員の無事なデビュー、そしてその後の活躍を、期待せずにはいられない。

最後に、新型コロナ禍以来のここ2年は、公開模擬レースイベントが動画投稿サイト「ユーチューブ」で番組配信されており、その中に登場する各候補生のインタビューがなかなか面白い。鷲頭虎太君は空手が黒帯、その形は見事なものだった。ニュージーランド出身という西塚洸二君は、日本語が苦手と告白(逆に英語ができて羨ましい)。スペースの都合上、全員紹介できないのは残念だが、彼らの個性が強く感じられ、デビューの前に新人騎手の素顔に触れるには良い機会と思うので、興味を持たれた方はぜひご覧いただきたい。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 中野雷太)

各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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