駆けた三笘、日本がオマーン退け2位浮上 W杯予選

オーストラリアが中国と1-1で引き分け、3勝2分け1敗で勝ち点11にとどまり同組3位に後退。同組首位のサウジアラビアはベトナムを1-0で下し、5勝1分けで勝ち点を16に積み上げた。
得点の気配もなかった前半から一転、MF三笘(サンジロワーズ)の登場によって、暗雲は少しずつ晴れていった。
後半から左ウイングに入り、最初のプレーからためらいなくドリブルでしかけた。プレー選択はほぼ、突破の一択。それまで涼しい顔で日本の攻めをやり過ごしていたオマーンが、ぐらつき始める。ようやく日本にエンジンがかかり、左から揺さぶりをかける。
相手のブロックの奥へボールが入り始めた頃合いの81分。同じく途中出場で左サイドを活性化していたSB中山(ズウォレ)からのパスを、引き取った三笘が迷わず縦へ抜ける。折り返したボールに右外から詰めた伊東が足を伸ばした。
「ピッチに入ると外からみるよりもサイドにスペースがあった。もう少し周りを使って分散してもよかったけれど、状況も状況だったので、きょうはどんどんしかけようと」と三笘。敵陣の奥の奥、狭いエリアまでドリブルでかき分けていく、これぞドリブラーの真骨頂。フル代表デビューの三笘がピッチにもたらした「違い」が、日本を救った。
後ろからサポートした中山の「内助の功」も見逃せない。「自分が縦に速い選手と前後で組んだとき、『しかけてこい』という(任せてしまう)状態が多かった反省があって。今日はできるだけついていき、追い越し、2次攻撃につなげる意識を持っていた」。それが表現された決勝点だった。

この中山と三笘の投入が的中、交代カードで流れを引き寄せ、競り勝った。その通りではある。ただしどこか釈然としないところもある。前半の日本はオマーンに手も足も出せないような状況だった。
ボールが誰かに渡っても、絡む選手がいない。出し手と受け手の関係だけによる、単調なボール運び。どこに立てば、動けばパスを引き出せるのか、迷って動けなくなっているようにも見えた。中盤に3人を配する布陣は振るわず、散発的にしかゴール前に迫れず、「しめしめ」というオマーンの声が聞こえてきそうだった。
三笘のようなタイプは途中投入のジョーカーとして使うほうが効くかもしれず、前半は慎重にやり過ごし、後半に勝負をかけることが上策だったのかもしれない。それにしても、スコアは1-0、内容も紙一重。ワンマンショーといえる働きの三笘でさえ、後半途中からは単騎駆けをオマーンに読まれ始めていた。伊東もゴールしたのは疲れもにじんできてベンチに下がる直前だった。ボタンを一つでも掛け違えていたら、どうなっていたか。
ともあれ、W杯予選は結果がすべて。勝ち点3を上積みした日本はオーストラリアと入れ替わって2位に浮上した。アウェー連戦を連勝で乗り切り、年をまたいで再開する残り4試合に向けて大きく前進することができた。「来年1月や3月の時点で(B組の)3位や4位にいることは避けたかった。苦しみながらも勝ち点を積み上げられたことで、状況は好転し始めている。厳しい戦いが続くけれど、厳しい状況に身を置くことでチームは成長すると思っている」と主将の吉田(サンプドリア)。この日の前半の我慢が後半の攻勢を準備したのだとしたら、この最終予選の道中の苦難も、より強くなるための通過儀礼ということか。(岸名章友)
