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サッカー日本代表、将来見据え育成年代の国際交流再開へ

サッカーの日本代表は関係する多くの方々の協力を得て、なんとかワールドカップ(W杯)カタール大会のアジア最終予選を完走できた。6月にはブラジルなど海外から代表チームを招いて国際親善試合も行う。そして新型コロナウイルスの影響でここ2、3年、満足に国際交流ができずにいたアンダーエージの選手たちも、ようやく戦いの渦の中に本格的に戻れそうだ。

まず、2024年のパリ五輪を目指す21歳以下(U-21)日本代表が6月1日にウズベキスタンで開幕するU-23アジアカップに出場する。1次リーグの相手は3日がアラブ首長国連邦(UAE)、6日がサウジアラビア、9日がタジキスタン。あくまでもこのチームの最終目標はパリ五輪なので、その強化のために、2年後に23歳になる若いメンバーを日本はこの大会に送り込む。

現時点で2歳上の相手と戦うのは骨が折れるだろう。中2日の連戦という日程も過酷だ。それでもパリ五輪最終予選を兼ねて行われる予定の24年のU-23アジアカップも同じレギュレーションで行われるだろうから、選手にとって、いい経験になるのは間違いない。大岩剛監督の下、6月19日の決勝を目指してチーム一丸で高いハードルにチャレンジしてくれるといい。

アジアカップが終わると、U-21代表は9月のアジア競技大会(中国・杭州)にも参加するはずだった。残念ながら、こちらは新型コロナの感染拡大で大会そのものが延期になった。選手にすれば成長のチャンスを一つ失ったわけで、こういうことが他の大会に波及しないことを祈るばかりだ。

U-21よりカテゴリーが一つ下のU-19日本代表もアジアの戦いに乗り出す。来年インドネシアで開催されるU-20W杯出場につながる、U-20アジアカップ予選(9月)に挑むのだ。

そのチームづくりのため、この世代は5~6月にフランスで開催される第48回モーリスレベロトーナメント(旧トゥーロン国際大会)に参加する。出場チームは地元フランス、アルゼンチン、ガーナ、メキシコなど強豪ぞろい。C組の日本は5月31日にアルジェリア、6月3日コモロ、6日コロンビアと対戦し、12日の決勝を目指す。

このトーナメントは欧州のサッカーシーズンのオフに行われるので強豪チーム、有望選手が集まりやすく、世界中のスカウトが金の卵を見つけに地中海の町にやって来る。今回目を引くのはインドネシアの参加だ。来年のU-20W杯のホスト国としてコロナ禍にもめげずにチーム強化に動いている。

今年のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で中国勢の衰退と東南アジア勢の躍進が話題になったが、この年代から真剣に世界を見すえて強化に乗り出すようになると、インドネシアも力をつけるようになるだろう。

出て行くばかりでは真に互恵的な国際交流とはいえない。日本もようやく海外のチームを招く機運が高まってきた。5月にルーマニア遠征を行ったU-16代表は、6月8日から12日まで宮城・仙台で開かれるインターナショナルドリームカップに韓国、メキシコ、ウルグアイのU-16代表を招待して腕を磨く。

モーリスレベロトーナメントと提携関係にある静岡のSBSカップ国際ユース(8月)も、ここ2年はコロナ禍で国内のチームだけ集めて代替え大会を開いてきたが、今年はU-18の代表チームを世界各地から招く大会に戻せるように関係者の努力が続いている。

外国勢も日本との試合を熱望

実のところ外国勢は、アンダーエージでもW杯の常連になった日本で試合をしたがっている。その期待にコロナ禍ではなかなか応えられなかった。一方でコロナ禍がもたらした良い面として、海外の協会とのリモートによる折衝が当たり前になり、マッチメークの面ではコロナ前より交渉自体はかどるようになったそうだ。

そういう変化を無駄にする手はない。新型コロナのワクチン接種が進み、出入国の制限が緩和されるにつれ、国際交流のパイプが太く戻っていくのは喜ばしいことだろう。

スポーツ選手の場合、帰国後の拘束期間が1週間や10日もあると聞かされると、「日々の練習を制限されて体をなまらせるくらいなら、日本で活動していた方がましだ」という判断にどうしてもなりがち。そういう閉じた世界から抜け出し、ようやく子供たちの未来にとって大事な取り組みができるムードになってきた。

幸い、日本サッカー協会には「バブル」と呼ばれる隔離方式で東京五輪、W杯のアジア予選を完遂させたノウハウが積み上がっている。大人たちがしっかりリスク管理をしながら、今度はそれを育成年代にも生かしたい。

そもそも、なぜ、そんなに私が育成年代に国際経験を積ませることにこだわるかというと、こればかりは言葉をいくら連ねても分からせようがないからだ。

新型コロナ対策として「密を避ける」は合言葉になったが、欧州チャンピオンズリーグ(CL)が象徴する世界最先端のサッカーは、選手と選手が異常に接近した密の中で互いのプレーを削り取るように戦っている。その削り合いの中で組織として個人として、何ができるかが連続して問われる。

サッカーに不向きな夏場はバカンスに充てる欧州は気候的にサッカーに向いた時期しかリーグ戦をしないから、試合のインテンシティー(強度)はどんどん上がるという背景もある。

選手同士が近い距離でやり合っていること自体は映像を見れば分かる。その中で優れたチームがどうやって守備側が一番困る場所を突いているかも見れば分かる。が、映像でいくら繰り返して見て、攻め方、守り方を分析しようが、実際にやれるかどうかは別問題だ。

いろんなスタッツで速さや回数や強度を数値に表せても、実際にどう駆け引きするかは、スピード、ワンタッチプレーの質、運動量と強度の差を感じながらリアルに手合わせしないと絶対に分からない。

その気づきは早ければ早いほどいい。だからアンダーエージの選手を海外に送り込んで覚醒の機会を用意するわけである。アスリートにとっての1年は本当に貴重で、簡単に無駄遣いさせるわけにはいかないという思いもある。

サッカーという競技が世界中に広まったのは、大英帝国の時代に英国が植民地を中心にサッカーを輸出したからだった。もともとサッカーとは、閉じた状態に置いては発展も進化もしないものだと勝手に思っている。日本の育成年代にも、いろいろなところにいって刺激を受けたり与えたりしながら、眠っている細胞を揺り起こしてもらいたいと思うのだ。

裏返すと、特別な刺激もない練習環境と、自分たちと似通った相手と試合を繰り返す毎日を3年も4年も国内で過ごすのは〝鎖国〟同然だろう。それでは「ウィズコロナ」で動き出している世界と大きな差がついてしまうと恐れる。

(サッカー解説者)

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