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豪州戦をスタートに W杯予選、試練も輪広げる好機

フロンターレ リレーションズ オーガナイザー 中村憲剛

人生で初めて、試合後のインタビュアーの仕事を任された。12日、日本代表がオーストラリア代表に勝ったワールドカップ(W杯)アジア最終予選の後のことで、お相手は先制点を決めた田中碧選手。私が現役時代を過ごした川崎で育った後輩を、視聴者の前で祝福できたのは望外の喜びだった。

ネット中継のDAZN(ダゾーン)によるインタビュアーの割りあては、7日のサウジアラビア戦の前に決まっていた。そのサウジに日本が敗れてW杯カタール大会出場を危ぶむ声が渦巻くようになり、私の懸念も深まった。もしも豪州戦で決定的な敗北を喫したら……。負けた後にマイクを突きつけられ、あれこれ詮索されるつらさなら知っている。絶望の淵に沈む選手に何を聞けというのでしょう、ダゾーンさん?

そんな私の憂いを、日本サッカー界に垂れこめていた暗雲を、たった一つの勝利が吹き飛ばしてくれた。試合後はみなが笑顔で、会う人ごとにグータッチ。「日本がW杯に出場している姿を子供たちに見せたい」と語った碧の言葉がすがすがしかった。一つの試合で奈落に落とされ、天にも昇る心地にもさせられる。私たちにとって、日本代表とはかくも巨大なのだ。

今回の予選は、この「私たち」の輪が大きく広がる望みもはらんでいる。24年前、初めて本大会に道をつけたフランス大会最終予選。「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれるイランとの第3代表決定戦が国民的関心事になったのは、そこに至るまでにチームがたどった乱高下がドラマチックだったから。いまの試練もまた、より多くの人々にサッカーの応援団になってもらうチャンスなのかもしれない。

ここまで2勝2敗の日本は、地雷原をほふく前進するような最終予選とのつき合い方をやっと身につけたようでもある。過去6大会連続出場といっても、予選の「体験」そのものが申し送りされるわけではない。監督も選手も4年ごとに入れ替わる。所属クラブとの二足のわらじを忙しく履き替え、大陸を行きつ戻りつしながら、強化試合もなしに大一番に臨む難しさ。「大変だぞ」とOBたちに言われても、実際に自分の面を張られるまではわからないことがたくさんあったはずである。

東京五輪から昇格の碧、それと守田英正という元川崎の2人が豪州戦に先発したのも新鮮だった。4-3-3の型の採用といい、「相手を見て、相手を動かす」川崎のテイストが強まったことに驚いてもいる。ここまで主力メンバーを固定してきた森保一監督が、腹をくくって世代交代に手をつけたとみるべきか。

正直、もっとボールを握ってほしいし、握れるはず。「あの豪州戦がスタートだった」と後々評されるように、これからすればいい。

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