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ラグビー新リーグ開幕へ 姫野、代表引っ張る刀研ぐ

ラグビーの新リーグ、NTTリーグワンが7日に開幕する。2019年ワールドカップ(W杯)日本大会の熱狂を再現し、海外の主要リーグに肩を並べるためにできた新舞台。昨年はニュージーランド(NZ)でプレーした日本代表ナンバー8の姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)も帰国し、日本のファンの前で大暴れする。

自分という刀、チームという刀を研ぎ澄ましたい。ラグビー日本代表の姫野和樹は語る。新しいリーグはそのための絶好の「砥石」になる。

桜のジャージーに袖を通してまだ3年。そうは思えぬほど代表では不可欠の存在だ。昨年は数々の試練で鍛えられた。2月、単身NZへ。強豪ハイランダーズへの期限つき移籍には並々ならぬ覚悟があった。「自分が結果を残さないと今後、日本人がNZでプレーできない。日本人の価値が自分のプレーで変わる」

NZで新人賞、心身とも成長

世界屈指のリーグのレベルにはすぐ慣れた。日本人離れした馬力を生かした突進。太い腕でボールをもぎ取るジャッカル。2019年W杯でも見せた得意技は十分に通用した。新人賞に輝く活躍。その陰で心に負担を掛けていた。

「毎週レベルの高いラグビーをするので気持ちを奮い立たせないといけなかった。家がシェアハウスで、本当に落ち着ける場所もなかった」。5月に1週間のオフがあった。「安堵感で張り詰めていたものがブチンと切れて。もうダメだとなった」。帰国まで考えた。

悩みの中、真摯に自己と向き合った。夕日に照らされたビーチで、自室のバルコニーで。真っ白な紙に問いと答えを書きつづる。なぜ悩んでいるのか。根本の原因は何か。なぜ、なぜと問い続ける。たどり着いた答えが「自分で自分にプレッシャーを掛けていた」。責任感や真面目さはこの人の美徳だが、この時は少し大きすぎた。

「日本を背負う感覚を捨て、まずラグビーを楽しもうと切り替えた。何を楽しむのかまで突き詰めて考えた」。例えば、得意のボールキャリー(突進)やジャッカル。残りのシーズンは「すごく生き生きとプレーできた」。

「今まではシーズン終盤に余裕をなくしてパフォーマンスが落ちることがあった。今回は自分でメンタルを変えられた。成長を感じられた」。内心を掘り下げ、解決策を見つけた自信がNZでの最大の収穫だ。

異国でもがいた経験は代表でも生きた。11月の欧州遠征でアイルランドに敗れた。好調の強豪国とはいえ、5-60は10年ぶりの大差。内容でも完敗だった。

姫野はまた内省した。結果が「自分たちに慢心や満足があった」。新型コロナウイルス禍で日本代表は約2年、活動ができなかった。ブランクにもかかわらず世界3位のオーストラリアなどを相手に健闘。それがおごりを生んでいた。

選手からコーチ陣に掛け合い、ミーティングを開いた。本音をぶつけ、危機感を共有する。試合前の準備から厳しくやろうと意思を統一した。重要な会議の開催を主導したリーダー陣の一人が姫野だった。

2週間後のスコットランド戦。敗れはしたが、20-29と健闘。何より「チャレンジャーの心構えをすごく感じられた。チームの転機となった」。遠征中に選手主体で立て直した経験は、来年のW杯フランス大会に向けて糧となる。

「トヨタで初代王者」と意気込む

実り多き1年を終え、今年は日本を戦場にする。「大好きなトヨタでリーグの初代王者になりたい」と意気込む。「本当にいい海外の選手が来ているし、チーム数が12に凝縮されたので高いレベルでできる」。新リーグの誕生を喜ぶ一方、グラウンド外には心配事がある。「家に帰れるし友達もいる。環境に甘えてのんびりラグビーをするのではなく、自分で自分を追い込まないと」。NZの時と逆に、自ら重圧を掛けるつもりだ。

危機感や主体的な自己錬磨は、日本代表の全選手に必要だとも考える。コロナ禍で国際経験を積む機会が減ったからなおさらだ。「リーグワンでおのおの何が足りないのか自己分析し、刀を研がないといけない」。姫野の重点項目の1つはパスやランの技術。「今はボールキャリー、一辺倒な部分がある。的を絞らせないアタックをしないといけない」。相手を惑わせられれば、突進力がより生きる。そのため畑違いのバックスの選手に頼み、個人練習に取り組みたいという。ポジションの垣根が低くなってきたラグビーだが、FWの選手がここまでやるのは珍しい。

前例にとらわれず貪欲に学ぶ姿勢はトヨタにも必要なものだろう。各国の代表経験者を擁する巨大戦力はコロナ禍で中止の1年を挟み、3季連続で国内の4強に入っている。ただ、その先が遠い。日本一からは35年も遠ざかる。

「トヨタは(シーズン終盤にかけて)少しずつ雑になる傾向がある。ディテールを突き詰めないとベスト4以上になれない」。チームの共同主将に就いた姫野は課題を見据える。「そのためには一人ひとりに考えてもらわないと。選手の主体性をもっと生かす取り組みをしたい」。一人でもがき苦しみ、自らを研ぎ澄ました経験。それを仲間と分け合い、チームと自己をさらに切れ味鋭い「刀」に変える。

(谷口誠)

リーグワン、「世界最高峰」目指す

NTTリーグワンは昨年までの社会人トップリーグ(TL)を発展解消して誕生する。各チームがホストエリアの自治体と連携して地域密着や社会貢献を進めるとともに、ラグビーの事業化で収益を拡大。世界最高峰リーグに育てる狙いがある。

初年度は24チームが参加。1部リーグは12チーム、2、3部は各6チームで争う。1部は6チームずつの2カンファレンスに分かれて1~5月にレギュラーシーズンを実施。同カンファレンスで2回戦総当たりのリーグ戦を行うほか、別カンファレンスの全チームと交流戦を行い、各チームが16試合ずつ戦う。勝ち点の多い4チームがプレーオフで優勝を争う。各リーグ間で毎年昇降格を行う。

1部のチーム数がTL時代の16から減ることでレベルの高い試合や接戦が増えそう。外国人枠も広がり、海外のスターが出場しやすくなる。昨季のTL王者・埼玉パナソニックワイルドナイツや、4強に入った東京サントリーサンゴリアス、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、トヨタヴェルブリッツを軸に初代王者が争われる。

1部の上位勢は海外の強豪チームとの対抗戦も計画されている。日本チームの実力を図る場になるとともに、選手が貴重な国際経験を積むことができる。

各チームは本拠地の自治体やスタジアムを設定。自分たちでチケット販売やファン拡大を目指す。ヤマハ発動機から分社化した静岡ブルーレヴズや東芝ブレイブルーパス東京は「プロクラブ」となった。リーグのタイトルパートナーにはNTTが就き、プリンシパルパートナーとして三菱UFJフィナンシャル・グループが契約した。リーグは事業化や社会貢献を加速するための制度改革を3年後に行う。

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