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W杯見えてきたサッカー日本 アウェー2連戦の試練克服 

サッカー日本代表が試練のアウェー2連戦を乗り越えた。2022年にカタールで開かれるワールドカップ(W杯)アジア最終予選で日本は11日のベトナム戦(ハノイ)、16日のオマーン戦(マスカット)をともに1-0で勝利した。これで年内に予定された6試合をすべて消化、3連勝で通算成績を4勝2敗の勝ち点12とし、B組2位に浮上した。

9月2日(大阪・吹田)のオマーン戦で0-1の黒星スタートを切った時はどうなることかと思わせた。現在も決して攻守の歯車がガッチリとかみ合っているわけではないが、それでも自動的に本大会に出場できる2位以内に順位を上げてきたのは、やはり地力のなせる業なのだろう。

11月のベトナム、オマーンとのアウェー2連戦は結構心配だった。日本代表のコンディションに相当問題があったからだ。

ベトナムの新型コロナウイルス禍による国際定期便の渡航制限を受け、今回も移動はハードだった。28人の選手を週末の各国内リーグの日程に応じて第1陣5人(7日夜ハノイ着)、第2陣12人(8日夜ハノイ着)、第3陣11人(9日朝ハノイ着)に分け、全員そろってのセッションを9日夜、10日夜(公式練習)と最低でも2つ確保できるように準備していた。

ところが、日程どおりにハノイに着けたのは第1、第2陣だけ。オランダに集めてわざわざチャーター便を飛ばした欧州組の第3陣は給油地のロシアで足止めを食い、ハノイに着いたのは9日夜だった。そのせいで全員そろっての練習は10日夜の公式練習だけになった。

今予選で日本を苦しめているのは相手うんぬんよりも、移動(長旅+時差ボケ)によるコンディション不良と、海外組を多く抱えた宿命で選手の合流のタイミングが常にばらばらで、まともにそろって練習できる機会が乏しいことにある。9月2日のオマーン戦も10月7日のサウジアラビア戦(ジッダ)も、日本が喫した2敗は、ともに2連戦の初戦の方だった。

これはシンプルに敗因が、コンディション不良とセッション不足が試合に影響していることを意味する。押っ取り刀で駆けつける1試合目は低調でも、2試合目は休養と練習のローテーションをうまく回せて試合の中身が向上するのである。

この「2連戦のアタマ、日本を苦しめる説」からすると、11月の2連戦で初戦のベトナムに勝てたのは非常に大きかった。そのハードルをクリアした瞬間、私は続くオマーン戦の勝利を確信していたくらいだった。

実際、オマーン戦は負ける要素がほとんどない展開になった。W杯に出るためには日本以上に勝ち点3が必要なはずなのに、オマーンは吹田で日本から金星を挙げた時ほど前に出てこなかった。前半の日本は褒められた出来ではなかったが、後半に選手交代とともにギアを上げるとチャンスが増え、81分に三笘薫(サンジロワーズ)のアシストから伊東純也(ゲンク)が決勝点をもぎ取った。

日本にとって、交代で出た三笘、古橋亨梧(セルティック)、中山雄太(ズウォレ)がしっかり持ち味を発揮したのはよかった。特に三笘の緩急をつけたドリブルは今予選の日本になかった武器で、どんどん相手選手を引きつけてくれるから、周りの味方のマークが勝手にはがれていく。本当にありがたいジョーカーである。

年明けの次の試合から久保建英(マジョルカ)も帰ってくるだろう。南野拓実(リバプール)や東京五輪で活躍した堂安律(PSVアイントホーフェン)もいる攻撃陣は、もともと代表の最激戦区だが、三笘の猛アピールで、森保一監督はうれしい悲鳴を上げているのではないだろうか。逆に1トップの大迫勇也(神戸)のところはタマ不足の感は否めないのだけれど。ラスト4試合を考えたとき、古橋をそこで使うのか、別の手立てを考えるのか人選を含めてしっかり練っておく必要がある。

私は常々、W杯のアジア最終予選とは本大会のグループリーグと同じだと思っている。1位になれるかどうかより、上のラウンドに勝ち上がることが大事だと。16日の試合の結果、首位は勝ち点16(5勝1分け)のサウジ、2位は同12の日本、3位は同11(3勝2分け1敗)のオーストラリアとなった。同7のオマーンは3位になるのがやっとという感じで、2位以内を目指す戦いは上位3チームに絞られた感がある。

得失点差は日本は+2、サウジは+6、オーストラリアは+5。依然として差はあるものの、日本は残り4試合のうち、22年3月24日のオーストラリア戦だけがアウェーで、1月27日中国戦、2月1日サウジ戦、3月29日ベトナム戦はホームで戦えるから、ここからは心理的にぐっと楽になる。

日本としては、3月29日の予選最終日のベトナム戦と並行して、サウジ対オーストラリア(サウジのホームゲーム)が行われることの意味をかみしめたい。避けたいのは、サウジとオーストラリアのどちらにも「引き分けで可」という状況を与えてしまうこと。そうなったら、どちらも適当に〝ダンス〟をしながら試合終了の笛を聞くような試合になりかねない。

逆に日本がこのまま2位以内をキープし続けてベトナム戦に臨むことができたら、サウジとオーストラリアは最終戦が〝決戦〟になる。そこまでいけば、W杯出場はもう目の前という感じになるだろう。

そういう状況に持ち込むためには年明け最初の中国、サウジとのホーム2連戦が鍵を握る。今季のJリーグは12月4日に最終節、天皇杯全日本選手権も12月19日に終わるから、選手はたっぷり休みが取れる。その分、全クラブは来季への始動を早くすると思うけれど、実戦から遠ざかることに変わりはない。中国戦、サウジ戦において、Jリーグの国内組のゲームフィーリングにはあまり期待できない。

その点、クリスマスも正月もない英プレミアリーグ勢を筆頭に、欧州組の1月のゲームフィーリングに問題はなさそうだ。しかし「2連戦のアタマ苦戦する説」からすると、彼らには移動即試合となる最初の中国戦が落とし穴になるリスクはある。

ゲームフィーリングはあってもコンディションに問題がある欧州組と、オフ明けで体調はいいけれどゲームフィーリングに難のある国内組。この両者をどう案配してホーム2連戦で確実に勝利をたぐり寄せるか。少なくとも代表候補とおぼしきJリーガーには、ぬかりなく準備させるようにしなければならない。

あくまでも私の推測だが、海外組のコンディションを少しでも良くするという意味において、長年代表の主将を務めた長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)は本当にクレバーだったと思う。フランクフルトという欧州でもハブになるような空港があるクラブに所属していたからだ。日本との便数がたくさんあり、世界各国どこにでも行けるところを拠点にしたから移動にロスがない。過酷な代表活動を乗り切るには、こういうところも踏まえてクラブを選んでいくことも大事かもしれない。

(サッカー解説者)

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