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「負けず嫌い」大阪野球の強さ 田中秀昌さん

関西のミカタ 近畿大硬式野球部監督

たなか・ひでまさ 1957年生まれ、大阪府出身。85年大阪・上宮高コーチに就任。91年同校監督となり、93年選抜高校野球大会で優勝。2003年に大阪・柏原高(現東大阪大柏原高)の監督に就任し、11年夏に甲子園出場。14年から母校の近畿大を率い、阪神の佐藤輝明らを育てた。

■大阪府出身の近畿大硬式野球部監督、田中秀昌さん(64)は、阪神のルーキー佐藤輝明が無名だった高校3年時にその才能を見抜いて育て上げた。大阪・上宮高の監督時代には元大リーグ投手の黒田博樹(大阪府出身)を指導。1993年春のセンバツでは同校を優勝に導いた。数多くの名選手を輩出し、甲子園大会では全国最多の春夏通算25回の優勝を誇る大阪。関西アマ球界を代表する名将は、その強さは負けず嫌いの気質にあるとみる。

関西人、とりわけ大阪人は負けず嫌いが多い。とくに東京に対しては「負けてたまるか」という思いがある。私も高校野球の監督時代は「東京のチームには絶対に負けるな」という指導になりがちだった。大阪人はバイタリティーがあり、粘り強く、泥臭く、イケイケのノリもある。こうした様々な気質が絡み合い、高校野球界では大阪勢の圧倒的な強さとなって表れているのではないか。

勝負への執念も違う。上宮のコーチ時代に指導した元木大介(大阪府出身、元巨人)が春の甲子園で隠し球をした。学校には抗議電話が殺到したが、私は見事なプレーだと思った。隠し球は反則ではないし、ルール内であらゆる手を尽くすのは勝負事では当然だ。同じく上宮の教え子の中村豊(大阪府出身、元日本ハム―阪神)も相手の犠飛でサヨナラ負けして全員が泣き崩れる中、一人だけ「三塁に投げろ」と叫んだ。タッチアップが捕球より早かった可能性があると思ったのだろう。結局アウトにはならなかったが、審判が「ゲームセット」というまで決して勝負を諦めない姿勢に驚かされた。

試合前のウオーミングアップからして東京と大阪のチームは違う。東京はホイッスルに合わせて体を動かし、どこか洗練された印象がある。一方、大阪勢は「さあ、やったるぞ」といわんばかりの勇ましい雰囲気でアップする。必ずしもそうではないだろうが、東京人はスマートに勝つことを美学とし、大阪人は泥臭くても勝ちにこだわる傾向があるように思う。

■教え子の黒田が大リーグで活躍しているときに米国で一緒に食事をした際、使用している野球用具のメーカーをずっと変えていないという話を聞いて心を打たれた。

東京人は高価なモノを買ったときに自慢し、大阪人は値切りに成功したときに自慢するといわれるように、大阪人はケチといわれる。でも、クロ(黒田)は無名時代から支えてくれた用具メーカーとの付き合いをずっと続けた。大リーガーになった後の大手メーカーからの高額契約のオファーも断ったそうだ。

彼はお世話になった人への恩を決して忘れない人間。プロは金銭面の条件を優先して当然なのに、義理人情を何よりも大切にするところはいかにも大阪人らしいなと思う。

大阪・上宮高で指導していた時から東京のチームには対抗心を燃やした

■現在の願いは、まな弟子の佐藤輝が阪神では86年のランディ・バース以来となる本塁打王を獲得すること。自身はいま率いる母校、近大の98年以来となる大学選手権優勝を目指している。

佐藤は阪神のお膝元の兵庫県西宮市出身で、子供のころにはタイガースのジュニアチームに所属していた。やはり阪神とは見えない糸がつながっていたのだろう。阪神は関西人にとって特別な球団。そのチームで教え子が活躍してくれれば、こんなにうれしいことはない。阪神ではバース以来本塁打王が出ていない。もし佐藤がタイトルに輝けば関西は盛り上がるだろう。持ち味のフルスイングを忘れず、ホームランをたくさん打って関西を元気づけてほしい。

近大の監督としての悲願は大学選手権での優勝。関西勢は2006年の大阪体育大を最後に優勝から遠ざかっている。日本一を奪還して大学球界でも関西の存在感を再び高めたい。(聞き手は田村城)

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