/

オーダーメードで指導 陸上プロコーチ・横田真人㊤

「全員に当てはまるメソッドはない」と選手の性格を見てアプローチを変える

昨年12月の陸上日本選手権女子1万㍍。横田真人(33)は、日本新記録で優勝して東京五輪代表を決めた新谷仁美(積水化学)と記者会見に臨んでいた。「結果が出なければ絶対横田コーチのせいにしてやろうと思った」。隣に座る主役が冗談交じりに語り、笑いを誘う。コーチと選手、その関係性は様々だが、ここまで言えるのは2人が同学年ということだけが理由ではないだろう。

2020年に立ち上げたトラッククラブ「TWO LAPS」。横田はその代表でありコーチを務める。新谷や昨年の日本選手権男子1500㍍を制した館沢亨次(横浜DeNA)ら実績ある中長距離の選手が、男子800㍍の元日本記録保持者で12年ロンドン五輪代表の指導を求めて集まる。

「全員に当てはまるメソッドはない。選手と一緒につくっていく作業」と語る横田は、それぞれの選手と絶妙な距離で信頼を得ていく。17年夏からチームでも圧倒的な存在感を放つ新谷のコーチを引き受けているが、「常にあなたのためにやっていますよ、スペシャルですよという姿勢でいる」。当時の新谷はなかなか周囲に心を開かず2人の間にも距離があった。「彼女のテリトリーを無理に侵そうとせず」、少しずつ一緒に過ごす時間を増やして胸襟を開き、思いを共有することで壁を取り除いていった。

19年のドーハ世界選手権1万㍍で11位に終わった際は現地で話し合いの場を設け、それまで新谷が自ら考えていた練習メニューの作成を引き受けた。「練習について思うところが結構あった。彼女の基準が世界だったので(国際大会の敗戦が)一番響くタイミングだった」

「変わらないとね」という横田の言葉を新谷も受け入れて好転。昨年1月のハーフマラソン日本新記録など現在の快進撃につながっていく。新谷が「大きな心で全部受け止めてくれる」と表現するほどの関係は、横田でしか築けなかっただろう。

自分の考えを押しつけず、選手の性格を見てアプローチを変えていくオーダーメードの指導は、多くの引き出しがなければ成り立たない。その点、本人は自信を持っていた。慶大時代は陸上部の主将として先頭に立つ一方、長距離や短距離ほど目立てない中距離に身を置く中で周りを引き立てる役目も担った。様々な立場での経験が生き、「選手によってポジションを変えるのは難しくない」と語る。

追い求めているコーチ像は「自分が選手だったら一緒に戦いたいと思える存在」だという。そう考えるようになったのは、現役時代に指導者がいなかったことに起因している。=敬称略

(渡辺岳史)

Tokyo Olympic and Paralympic 特設サイトはこちら

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン