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渡辺雄太、NBAプレーオフ初出場 見つけた自信と課題

スポーツライター 杉浦大介

トロント・ラプターズの一員として、初めての米プロバスケットボールNBAプレーオフに臨んだ渡辺雄太の生き生きとした表情が印象的だった。

皆がギアを上げてくるプレーオフの戦い

4月16日から始まったフィラデルフィア・セブンティシクサーズ(76ers)との東カンファレンス1回戦(7回戦制)で、渡辺は全部で4試合に出場したが、多くのプレー時間を手にしたわけではない。5分27秒コートに立った第1戦を除けば、4、5、6戦はすべて1〜2分という短い時間。それでも、緊張感に溢れる大舞台で得たものは少なくなかったようだ。

「レギュラーシーズン中は手を抜いていたとかそういうことではなく、プレーオフになって気持ちがより引き締まり、全員が全プレーのギアを一段階上げている感じ。スカウティングも1つ1つがシーズン中より細かくなっています。1試合1試合、ゲームプランを変えながらやっているので、本当に集中しておかないとわけがわからなくなってしまう。そういったことを経験できたのは本当に大きかったと思っています」。4月25日、敵地で行われた第5戦後、渡辺は目を輝かせながら話した。

結局、ラプターズは2勝4敗で敗れたものの、まだ伸びしろを残した27歳の渡辺にとっては貴重な時間になったはずである。

NBAでの4年目はアップダウンの激しいシーズンになった。初の本契約選手としてシーズンに臨んだが、ふくらはぎの負傷で開幕は欠場。昨年11月24日に復帰後は持ち前の守備力、運動量、ハッスルプレーでチームに貢献し、一時は不可欠の存在になったようにも思えたが、1月に新型コロナウイルス感染防止規定の対象となり欠場を余儀なくされた。以降、プレータイムは激減。故障者が徐々に復帰し始めたチームの中で、ローテーション復帰はかなわなかった。

「今までは最初から出られなくて当たり前の選手だったのが、ローテーションで出る楽しさを知ってしまったから、外れたときはしんどくて、自分の中の気持ちの整理がつかなかった。その部分が大変ではありました」

シーズン中は最後まで「チャンスはまた必ず来る」と話していたものの、シーズン終了後、揺れた胸の内をそんなふうに吐露していた。

プロアスリートにとって何より辛いのは、試合に出られないこと。学生時代は常に所属チームの主力選手だった渡辺も、NBAでは安定したプレー時間を得るには至っていない。世界最高のリーグであるNBAに到達して様々な喜びを手にする一方で、これまでにほとんど味わったことがないような悔しさも経験し続けているのだろう。

1年を通じて戦力であり続けたシーズン

それでも、2021~22シーズンは渡辺にとって大きな意味がある時間だったように思える。ラプターズが多くの離脱者に見舞われた前半戦の活躍は見事で、プレータイムが減った後半戦でも重要な場面でプレーすることは少なくなかった。

「突然第4クオーターから出されたりという場面もあり、今シーズンは準備の大切さを学んだ」という本人の言葉通り、東5位に入ったラプターズでほぼ1年を通じて戦力であり続けた。1、2年目はNBA下部のGリーグで多くの時間を過ごし、4年目にしてついにNBAでも強豪チームの勝利に貢献できる位置まで到達したのだから。

「大変なこともたくさんあった。それでも自分がこの世界でやっていけるだけの選手っていう自信をつけられたシーズンだったかなと思います」

シーズン中から「自信」について繰り返し語り続けた渡辺の言葉も、もう単なる強がりには聞こえない。

もちろんNBAで生き残るための課題はまだある。渡辺は個人成績にこだわるタイプではないが、今季の平均11.7分のプレー時間、4.3得点(フィールドゴール成功率40.6%、3ポイント同34.2%)、2.4リバウンドという数字は満足できるものではなかったろう。特に3ポイントシュートの成功率が昨季の40%から大きく下がってしまったのは残念。ここが安定した形で向上すれば、「優勝できるチームのローテーション選手になること」という目標に向けて、次のステップが見えてくるはずだ。

長く、苦しく、波乱のシーズンは、初のプレーオフ出場という、渡辺のバスケ人生の新たなハイライトで幕を閉じた。が今オフ、フリーエージェントになるため、来季の所属チームはまだわからない。どんな状況であれ、「努力する才能」は色あせることはないはずだ。

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