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ロッテ・佐々木朗希、実戦初登板にみえた「自制」の才

編集委員 篠山正幸

12日のオープン戦でプロとして実戦初登板を果たしたロッテ・佐々木朗希=共同

ベールを脱いだ、というにはまだ早い。ロッテ・佐々木朗希(19)は12日、待ちに待ったプロ2年目での実戦初登板で、1回を三者凡退とした。直球主体の12球からみえたのはその才能の全体からすれば、氷山の一角。「底知れなさ」が印象に残る登板となった。

実戦のマウンドに上がるのは1、2軍を通じて初めて。衆目の関心を呼ぶ中でのお披露目に、前日から「緊張している」と話していたが、本番では緊張のかけらもみえなかった。

出番は対中日のオープン戦の六回。2番の京田陽太を初球の直球で詰まらせて一ゴロとすると、3番阿部寿樹には、1球だけ投げた変化球のスライダーが外れるなどし、カウント3-1となった。それでも四球は出さない。内角の直球で遊ゴロに。阿部はバッティングカウントから、直球一本に絞っていたと思われるのに、芯に当たらなかった。

中日の4番・ビシエドは見逃し三振に仕留めた=共同

4番ダヤン・ビシエドは直球のみで空振り、ファウルを奪い、カウント1-2と追い込んだ。勝負にいったこの登板最速の153キロの外角球ははずれたものの、次はきっちりと決めて見逃し三振とした。

「マウンドからみた景色がすごくて、興奮したし、楽しんで投げられたかな」

ここまで実戦登板がかなわなかったのは、吉井理人投手コーチや医療部門を含め、故障がないよう配慮し、慎重を期したこともあるが、何より本人が、変化の著しい若い肉体とフォームの折り合いをつけてから出力を上げたい、という青写真をもっていたこともある。

だから同期の奥川恭伸(ヤクルト)や、宮城大弥(オリックス)が1軍デビューを果たすのを横目にしながらも、焦りはなかったようだ。

とはいえ、若い投手が投げないでいることが、どれだけ辛抱のいることか。マウンドを楽しんだ、との言葉に、我慢の日々の心境がうかがわれた。

「高校生最速の163キロ」という看板からすると、153キロはまだまだの感があるが、井口資仁監督によれば、制球に重きを置いたから、とのこと。若い人には珍しく、マックスへの欲求を制御できるところが、この投手の長所かもしれない。

速球派にありがちな四球から自滅、のパターンとは無縁そうなだけでも、高卒2年目の投手としては非凡といえる。

ロッテの井口監督、吉井コーチとも「指先の感覚がいい」とその非凡さを認める=共同

首脳陣が注目するのはその制球を可能にする手先の感覚だ。

井口監督に制球の良さについて尋ねると「もともと、指先の感覚がいい投手なんで。マウンドの初球からスライダーを投げる投手ですから」と事もなげに答えた。マウンドの初球から、というのは投球練習の初球から、という意味らしい。最初は直球で肩慣らしというのが普通だが、佐々木朗はそうした手順を必要としないようなのだ。

吉井コーチも指先の繊細さに驚く。「すごく感覚がいい子なんで、コントロールもいいし、変化球もうまく投げられる」

「制球は指先の記憶力である」という稲尾和久投手(西鉄=現西武)の言葉を思い出す。正確無比の制球を誇った大投手は指先に宿したもう一つの「頭脳」の記憶により、何球でも同じところに決められた、と語っている。

球速も大事だが、プロの世界でモノをいうのは駆け引きを可能にするだけの制球力だ。佐々木朗は以前、こんな話をしたことがある。

「(安打性の打球を)打たれないのが一番だが、空振りがほしいときもあるし、絶対に空振りを取らなきゃいけないときもある」。理想の直球とは、と尋ねたときのことだ。球速は追求すべきものだが、問題はスピードガン表示の「額面」より、アウトを取れるという「使いで」だ。そこに重きを置いている。

シーズンで本拠地のマウンドにあがるのはいつになるか=共同

吉井コーチの評が面白かった。「まだ子どもの体で、これだけのボールを投げられる。どんな投手になるか、すごく楽しみ」

その肉体はまだ固まりきっていない。今後の起用も、故障のリスクを考え2回、3回とゆっくり球数を増やしていくことになるようだ。1軍の公式戦登板はまだ先になる。

開幕から1軍で投げることを期待していた首脳陣はキャンプ中の2月11日の紅白戦登板を望んでいた。だが、佐々木朗はそこに無理に合わせようとはしなかった。若手は特に、肩肘の不調を押してでも投げたい、アピールしたい、となるはずなのに自制した。

悠々として急がず。じれったくなるようなペースこそ、大器のあかしかもしれない。

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