/

フルゲート割れしたダービー 異変の理由、判然とせず

大接戦の末、2021年の日本ダービーを制したシャフリヤール㊨=共同

本格的な夏競馬シーズンが到来。有力2歳馬のデビューは年々早くなり、来年のクラシックやGⅠレースをにぎわすと期待される素質馬が既に続々と勝ち名乗りを上げています。「ダービーからダービーへ」。2歳馬の成長を見守り、1年間追いかけるのは競馬の大きな楽しみのひとつです。

初の出馬投票時点でフルゲート割れ

シャフリヤールが歴史的大接戦を制した今年の日本ダービーでは、ある異変が起きていました。出走馬がフルゲート(出走可能な最大頭数)である18頭を割ったのです。18頭が出走できる皐月賞も、今年は16頭立てとフルゲート割れ。近年の皐月賞では15年が15頭、18年も16頭と、フルゲート割れは数年に1度、起きています。

しかし、こうした年でも、日本ダービーは必ず18頭が出馬表に名を連ねました(取り消し馬が出て17頭立てとなったのは4回)。ところが今年は出走権のある馬の回避が相次ぎ、レース2週前の特別登録頭数はフルゲートと同じ18頭。その後、有力馬の1頭が骨折判明で回避を発表し、出馬投票段階で17頭立てとなりました。

例年は優先出走権を持たず、収得賞金もボーダーラインに満たない2勝馬や1勝馬の登録が何頭かあったものですが、今年はそうした馬の登録もゼロ。今年の状況なら、滑り込みで出走できたはずで、フルゲート割れの事態に「登録しておけば……」と悔やんだ馬主さんもおられたかもしれません。

2021年の日本ダービー実況用に作成した塗り絵。17頭の名前しかない

なぜ今年は登録の段階から少なかったのか、理由は判然としません。レース体系の細分化? 大手グループの生産馬が多数出走? いずれも今に始まったことではありません。コロナ禍にしても、昨年と同じです。

クラシックによりつながる、上半期の「牡馬が出走できる芝1800㍍以上の3歳オープン・重賞競走」について、過去5年の出走頭数と延べ出走回数を調べてみました。

2021年(178回) 114頭

2020年(169回) 108頭

2019年(180回) 113頭

2018年(191回) 119頭

2017年(167回) 105頭

頭数や出走数そのものは例年と大きく変わらず。それだけに、日本ダービーの登録が少なかったのが不思議です。たまたま今年そうだっただけなのか、来年以降もフルゲート割れが続くのか。注視したいところです。

日本ダービーの出走頭数がフルゲートに満たないのは、最大18頭となった1992年以降では初めてのこと。それ以前ではダイナガリバーが勝った86年以来35年ぶりで、フルゲート24頭に対し出走は23頭でした。

日本中央競馬会(JRA)発行の「中央競馬年鑑」などによると、日本ダービーが行われる東京芝2400㍍のフルゲートは、85年まで28頭でしたが、86年に24頭、90年に22頭、91年に20頭と変わり、91年秋から18頭となりました。その経緯をJRA競走部番組企画室企画課に教えてもらいました。

「87年以降、競走馬の競走能力向上に伴い、競走中の危険防止・競走馬の事故防止等の観点から、馬場形態・競走の流れ等を総合的に勘案して出走可能頭数の見直しを順次進めました。そして91年秋季競馬より、東京競馬場の2400㍍の、当時のAコースとBコース(筆者注:比較的幅員の広いコース設定)について20頭から18頭に削減しました」

この変更により、中央の全競馬場での最大出走可能頭数が18頭に定められたそうです(冬季は16頭)。

ラジオNIKKEIに残っている28頭が出走していた時代の、日本ダービーの実況を聴くと、先行争いの描写がゴール前のそれに負けないほどに迫力があります。最初のコーナーを先頭から10番手以内で回らないと勝てないといわれた「ダービーポジション」、せめてテレビ画面には映ろうと玉砕覚悟の先行策を取る「テレビ馬」といった言葉からも、かつてのダービーがどんなものだったかが分かります。

筆者は最高で25頭立てのレースの実況経験がありますが、それを超える出走頭数のせめぎ合いはさぞ難しい実況だったろうと、先輩アナを改めて尊敬しました。

発馬機導入前は33頭立ても

さらに時代を遡ると、ボストニアンが優勝した53年の日本ダービーは史上最多、33頭もの出走馬を数えました(ほか出走取消が2頭)。今年の日本ダービーのほぼ倍の頭数が一度に出走……想像がつきません。当時のフルゲートのルールはどうだったのでしょうか。

1953年の日本ダービーの成績表。2頭が出走を取り消したが、なお33頭が出走した(日本中央競馬会発行の中央競馬全重賞競走成績集・GⅠ編)

同課によると「競馬番組上での出走可能頭数の設定はありませんでした」とのことで「60年よりウッド式発馬機(スターティングゲート)を採用することに伴い、発走の際、ウッド式発馬機では従来行われていた二列発走ができないので、馬場の幅員の関係上、出走できる馬を制限し、出走可能頭数を競馬番組で定めることとしました」。同コースの出走可能頭数は当初33頭で、66年に28頭と定められました。

現在、各競馬場のフルゲートは「馬場形態・競走の流れ・人馬の安全面等を総合的に勘案」(同課)して決定しているということです。2017年に札幌と函館のダート1700㍍のフルゲートが13頭から14頭に変更されました。これに関しても聞くと「競走内容の充実および円滑な出走機会の確保の観点から、安全面を十分点検の上、関係者との調整を踏まえ出走可能頭数を増やしました」(同課)。最近、変更があったのが阪神競馬場の芝3000㍍。従来のフルゲートは16頭でしたが、今年から18頭に変更されました。

3歳クラシック最終戦の菊花賞は、今年はその阪神芝3000㍍で行われます。フルゲート変更は「菊花賞を阪神で実施することがひとつの契機になったことは事実」(同課)とのことです。ダービーに限らず、クラシックは競走馬にとって生涯一度の晴れ舞台。そして当然、出走しなければ勝利という栄誉に浴することもできません。菊花賞は最後の一冠をかけて、「18頭による」激しい戦いが見られることを期待しています。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 小塚歩)

各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン