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野球でのデータと感覚を融合 ベイスターズ流IT活用術

横浜DeNAベイスターズ広報 高橋美絢

ブルペンでは場違いに思えるような全身タイツ姿でボールを投げ込むドラフト5位ルーキーの池谷蒼大投手。指先から放たれたボールが捕手のミットに吸い込まれていきます。池谷投手が着用しているタイツは39個のセンサーが付いた特殊なもの。投球動作の際の関節角度、角速度、移動速度などを計測・分析する「オプティトラック」という名前の最新機器です。測定結果をもとに、理想のボールを求めて投球動作の修正を行っています。

今日では当たり前となりつつある、野球でのIT(情報技術)活用。横浜DeNAベイスターズでは2012年シーズンから、チーム強化のためのIT・データ活用を目指してチーム企画室を立ち上げました。チームが保有していたアナログデータを、少しずつデジタルデータに転換していき独自のシステムに蓄積、チームを陰から支える体制を整えていきました。17年にはデータ分析の専門部隊としてR&D(リサーチアンドディベロップメント)グループが発足。メンバーは元プロ野球選手から海外の有名大学出身者まで様々です。テクノロジーを駆使して、選手の育成やチーム戦術の構築をサポートしています。今回はI T・データ活用を推進するチーム統括本部チーム戦略部長の壁谷周介にベイスターズ流のデータの活用法や課題について聞きました。

壁谷「チーム戦略部には4つの機能があります。①データの収集・分析を用いてチーム全体の強化やサポートを行う『R&Dグループ』②ゲームアナリスト(他球団ではスコアラー)が対戦相手攻略の助言を行う『アナリストグループ』③外国人選手を獲得するために動く『国際スカウトグループ』④選手の来日手続きや来日中の家族を含めたケアサポートを行う『国際サポートグループ』です。加えて、オーストラリアン・ベースボールリーグのキャンベラ・キャバルリーや米大リーグのアリゾナ・ダイヤモンドバックスとの戦略的パートナーシップ締結など、国際的に球団の可能性を広げる仕事を担っています」

キャンベラ・キャバルリーとのパートナーシップの一環として、新型コロナウイルス禍の前は志願した選手をオフシーズンにオーストラリアリーグへ派遣していました。これは技術面の向上に加え、海外生活を通じた精神面の成長を促す取り組みです。過去には今永昇太投手や大貫晋一投手も参加し「新たな気付きを得て良い刺激になった」と語っています。

壁谷「R&Dグループを発足するにあたり、データ活用で先行している米大リーグのアナリティクス(分析)部門の体制などを知るため、アリゾナ・ダイヤモンドバックスやタンパベイ・レイズなど5球団のアポイントを取って調査に向かいました。驚いたのは、どの球団も新しい学びに積極的で、日本から来た私とのミーティングに多くの方が参加され、逆にたくさんの質問を受けたことです。アナリティクス部門の規模や体制は各球団の方針を映して千差万別でした。すぐに取り入れられること、独自で構築していくべきことなど、話を聞きながら具体化していきました」

アナリティクスにより、それまで選手個々の感覚でしか捉えることができなかった野球がテクノロジーで数値化され、分析できるようになります。プレーの一つ一つが、根拠をもって客観的に捉えられるようになるということです。必要とされるのは各種の数字への理解が深く、それを使いこなし選手が理解できる言語に翻訳すること。元プロ野球選手でなくても、様々なバックグラウンドを持った人材がチーム強化に有用な存在となります。現在R&Dグループには8人が所属しており、プロジェクトベースでは親会社DeNAや大学など外部の専門家の力も借りながら、チームへのサポート力を高めています。

壁谷「それぞれの細かい説明は省きますが、18年に『ブラストモーション』、19年に『ラプソード』、20年に『エッジャートロニック』、今年は『オプティトラック』と最新のテクノロジーを積極的に取り入れています。単に機器を導入するだけではなく、R&Dグループのメンバーが即座に選手やコーチにデータをフィードバックできる体制をとっています。もちろんデータをただ押し付けるだけではいけません。コーチ、アスレチックトレーナー、そしてR&Dグループという分析部隊が三位一体となって選手の育成を行っています。何より大切なのはデータと感覚の融合です。互いの専門性を尊重し、積極的にコミュニケーションをとり、信頼関係を構築していく。みんなが共通言語と共通理解を持ち、選手の個性に合わせてわかりやすく伝えるのがベイスターズ流のデータの活用術です」

ベイスターズはデータ分析・活用で日本のプロ野球界の先頭を走っているとの評価をいただけるようになりました。アナリティクス部門は野球界のなかでは新しい職種です。昨今はデータ分析に関わるような人材は業界を問わず獲得競争が激しくなっていますが、まだまだチームを強くする仲間を増やしていきたいと考えています。

壁谷「我々はどの球団にも負けない、世界の最先端を走り続けるアナリティクス部門を目指しています。もっともっと成果を出していきたいですが、人的なリソースが足りないと感じています。より多くの方にこの仕事のことを知ってもらい、興味を持っていただきたいですね。私自身、前職は経営戦略コンサルタントでした。様々な業界で経営課題に取り組めてグローバルに活躍できる仕事に満足していましたが、ある日、球団職員募集の広告を目にしたことがきっかけで転職してきました。ビジネスで培った自分の強みを大好きな野球に生かせるチャンスだと直感的に感じたんです。そこから新しいことを手探りでコツコツと作り上げてきて、やっと組織としての体制が整いつつあります。スポーツビジネスは多くの方と感動を分かち合う経験ができる業界です。野球の魅力をもっと高め、多種多様なビジネスのバックグラウンドを持った方々がこの業界に飛び込んできてもらえるようにしていきたいです」

ベイスターズでは4月23日午後7時からウェブ会議システムの「Zoom(ズーム)」を使ったオンラインイベント「"ベイスターズ流"監督・コーチ・選手を支える『データ』の導き出し方」を開催します。このイベントではR&Dグループのメンバーが参加者の皆さんと一緒に、データをもとに「最適な打順」を考えるワークショップを実施します。ご興味のある方は、球団公式ホームページ(https://www.baystars.co.jp/news/2021/03/0330_02.php)からご応募ください!

(横浜DeNAベイスターズ広報 高橋美絢)

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