ボクシング京口、米国デビュー飾る 5回TKOで防衛

世界ボクシング協会(WBA)ライトフライ級タイトルマッチ12回戦は13日、米テキサス州ダラスで行われ、スーパー王者の京口紘人(ワタナベ)が挑戦者のアクセル・アラゴン・ベガ(メキシコ)に5回TKO勝ちし、3度目の防衛に成功した。
両者は序盤から接近戦で力のこもった打ち合いを展開。5回、ベガが自らのパンチで右拳を痛め、レフェリーが試合を止めた。2019年10月以来の一戦だった京口は、米国デビュー戦を白星で飾った。戦績は15戦全勝(10KO)。
挑戦者が負傷、あっけない決着
幕切れは突然だった。5回、右フックを京口の側頭部にたたきつけた挑戦者が次の瞬間、くるりと背を向けて後退。追いかける京口が右をお見舞いした直後、レフェリーが割って入って試合を止めた。グローブを外すベガの表情が苦痛にゆがむ。自らのパンチで拳を痛めたらしい。京口はリング上でセコンドに「僕、石頭なんで」と笑顔を見せた。
「ホッとしています。欲を言えば(自分のパンチで)倒したかったけど、勝ててよかった」。試合後、日本メディアのリモート取材に応じた京口は、素直な思いを口にした。ここから、というところで試合が終わり、消化不良のきらいもあるが、米国デビューを無難に終えた安堵感が漂った。
身長150センチに満たない無名の挑戦者は、想像以上に手ごわかった印象だ。筋肉が詰まった短軀から繰り出すパンチはパワフルで「もらったら危ないなと思った」と京口。頭をくっつけての接近戦に応じた2回は、右クロスをもらって一瞬後退した。会場には「メヒコ」コールが再三こだました。

京口が距離の差を生かし始めたのは4回から。ジャブで突き放すと、ベガに3回までの勢いがなくなった。「ジャブが機能したなと思う。相手が(手を出せなくなり)見る時間が長くなった。冷静にゲームメークはできたかなと思う」。主導権を引き寄せ、ここから攻勢を強めていこうとしたところでの試合終了だった。
昨年11月、故郷大阪で防衛戦が組まれていたが、試合前日に新型コロナウイルス感染が判明し、中止になった。影響の大きさに打ちのめされ、隔離されている間は「引退も考えた」という。ただ、ファンや周囲の温かい励ましを受けて「やめるのは逃げだなと思った」。再び練習に打ち込むなかで、米国での試合オファーが届いた。コロナ対策に細心の注意を払ったのは言うまでもない。「スタッフも1カ月間、自宅とジムの送迎などサポートしてくれた。支えてくれた全ての人に感謝している」

契約した英国のプロモーター、エディー・ハーン氏は、この日の試合も中継したスポーツ配信DAZN(ダゾーン)とのタッグで米国市場における存在感を増している。京口にもさらなるチャンスが与えられそうだ。
「僕の持ち味はアグレッシブなボクシング。今回はアピールは半分くらいかな。これからもオファーをもらえるよう、精進したい」。失意から立ち上がった27歳の王者に、異国のリングで再び光が差した。
(山口大介)