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3日に1度以上だと成績下降? 救援投手の酷使ラインは

野球データアナリスト 岡田友輔

今年のプロ野球は3年ぶりに延長十二回制が復活した。トータルのイニングが増えれば、リリーフの負担は必然的に大きくなる。先発完投型が減り、ブルペンの重要性が増している現代野球。リリーフ投手の登板頻度とパフォーマンスにはどのような関係があるのだろうか。

データ分析を手がけるDELTAのアナリスト・市川博久氏が救援投手に関する数字を集計している。まずは連投からみていこう。

2014~20年のプロ野球における救援登板では全体の2割が2日の連投、3.4%が3日の連投、0.4%が4日以上の連投だった。出塁能力や長打力に基づいて打者の得点獲得力を算出したwOBA(加重出塁率)でそれぞれのパフォーマンスをみてみると、一見意外な結果が浮かび上がる。

連投ではない投手の平均被wOBAが.314なのに対し、2連投のケースでは.315とほとんど差がない。ところが3連投だと.305、4連投以上では.303。つまり、連投が伸びるほど数字が良くなるのだ。しかしこのデータをみて、連投するほど投手のパフォーマンスが上がると考えるのは早計だ。

連投はとりわけ三振奪取能力に影響

ベンチは信頼できる投手ほど、負担が増えるのを知りつつ連投させる。3、4連投時の数字が良いのは、連投がパフォーマンスを押し上げるからではない。因果関係はむしろ逆で、能力の高い投手だからこそ、連日使われるのである。

ブルペンの屋台骨を担う投手とその他大勢の成績を比べたのでは事の本質を見誤る。連投の影響を知るには、実際に連投をした投手のパフォーマンスが、本来の力に比べてどのように変化したかを調べなければならない。

実際にリリーフ登板した投手のシーズンを通じた平均被wOBAをみてみると、連投ではないケースで起用された投手は.316だった。これが2連投でマウンドに上った投手の平均だと.308になり、3連投以上だと.300まで下がる。やはり連投する投手ほど、基礎能力が高いのだ。

これを投手本来の地力と仮定すると、連投の影響が明らかになる。連投でないケースでは登板時の成績は.314。若干ながら地力(.316)を上回ったといえる。しかし連投時のパフォーマンスをみると、2連投でマイナス.007、3連投で同.005といずれも悪化している。つまり、連投によってパフォーマンスが落ちることを示唆している。

連投の影響がとりわけ顕著なのは三振奪取能力だ。連投時の奪三振比率は、連投の日数が伸びるほどシーズン平均からの乖離(かいり)が大きくなり、4連投以上ではその差はマイナス2.4ポイント(シーズン平均21.1%、登板時18.7%)にもなる。連投しても球速面での目立った変化は確認できないが、球のキレが落ちると考えられる。

次に、もう少し長い期間で登板頻度とパフォーマンスの関係をみてみよう。連投同様、こちらもタイトになるほどマイナスの影響が確認できる。6日以内に4試合に救援登板した投手の4試合目の被wOBAをシーズンの平均値と比べてみると0.008のマイナスだった。やはり奪三振率も平均値より低下する。これは4試合目が連投であろうとなかろうと、似たような傾向だ。

本来の力を出し切れない傾向は10日以内に4回登板したケースまで続く。個人差はあるだろうが、3日に1度を上回る登板ペースでは、多くの投手は回復が追いつかないのかもしれない。

登板過多もマイナス面多し

市川氏はさらにスパンを広げ、シーズンの前後半のパフォーマンスの推移も集計している。奪三振や与四球をみる限り、前半戦で31試合以上投げた投手は後半戦の数字が悪化している。前半戦に好調だった投手が成績を落とすのは「平均への回帰」という要素もあるので早急に結論は出せないが、過密登板が疲れにつながっている面はあるだろう。

リリーフ投手の酷使が起きやすいのは、連投や登板過多によって優秀な投手が本来の力を出せなくなったとしても、並の投手に比べれば彼らのパフォーマンスはまだなお優れているからだ。目の前の試合に勝つことを第一に考えるなら、エネルギーが満タンの並の投手をつぎ込むより、消耗しているリリーフエースを送り込む方が近道という面は否めない。

幸か不幸か、一本立ちのハードルが高い先発に比べ、リリーフは次々と人材が現れるポジションでもある。例えば昨季は栗林良吏(広島)が37セーブを挙げて新人王に輝いたし、今年の巨人もルーキーの翁田大勢が抑えとして活躍している。しかし若くして台頭しながら、登板過多がたたって故障に泣いた投手は数知れない。

リリーフの消耗度を数値化するのは難しい。登板数、投球数、登板間隔など様々な変数が絡むうえに、ブルペンでどれぐらい球数を投げているかといった外からは見えない要素もある。さらに多くのデータに基づき、起用法と故障の関係などを明らかにするのは今後の課題だ。

だが今回紹介したようなデータをみるだけでも、連投や登板過多が投手にマイナスの影響をもたらすのは確かなように思われる。投手の消耗を抑えながら、いかに勝利を拾い、勝負どころでムチを入れるか。通常モードに戻ったペナントレースでは、監督や投手コーチの手腕が過去2年以上に問われることになる。

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