子供にスポーツとの接点を 球団10周年にかけた思い

日経電子版の読者の皆さん、初めまして。横浜DeNAベイスターズの高橋美絢です。球団の広報担当として、プレスリリースの作成や取材の調整・立ち会いといった仕事をしています。エースの力投に、主砲の豪快な一発……。プロ野球には、見ている方の心を揺さぶるような華々しいプレーが数多くありますよね。選手と違って普段は表に出てきませんが、実は数多くのスタッフが球団の運営に携わっているんです。
本コラム「プレーボールの舞台裏」では、プロ野球あるいはスポーツビジネスに少しでも興味を持っていただけるよう、広報ならではの視点から、球団の取り組みやチームの表情などを幅広く紹介していきます。よろしくお願いします。
さて、第1回はベイスターズの「球団誕生10周年プロジェクト」の担当者の思いをご紹介します。日本野球機構(NPB)にDeNAのプロ野球への参入が承認されたのが2011年12月1日でした。つまり今年は球団発足から10周年という節目の年になります。
5周年だった16年には、神奈川県下の全ての小学生にチームのベースボールキャップをプレゼントしました。県内各地でこのキャップをかぶった子供たちが元気に外を駆け回ってくれて、私たちにとって思い出深い企画となりました。
さあ今年は記念すべき10周年。どんな企画で子供たちや地元の人たちに喜んでもらおうか。20年7月、社内横断で9人のプロジェクトチームが発足しました。

ただ、世の中は新型コロナウイルスの感染拡大で揺れ動くまっただ中。プロ野球にも強い逆風が吹き荒れました。コロナ禍でどのようにプロジェクトを進めていったのか。リーダーを担った広報・コミュニケーション部の山中勝美に振り返ってもらいました。
山中 球団もコロナの影響を受けて決して楽ではない状態でした。ただ、このプロジェクトは未来への投資という意味合いが強く、実施することに迷いはありませんでした。
5周年と同様、プロジェクトの目玉となるのは46万人いる神奈川県内の小学生へのプレゼント企画です。昨今は子供のスポーツ離れや野球離れを指摘する声もあり、子供へのアプローチは球団にとって大きなテーマでもあります。
山中 野球を好きになる原体験として、誰かに球場に連れていってもらうことが多いと思います。我々世代と違い、テレビをつけたらゴールデンタイムに野球がやっているという環境にないのが現代の子供たち。こちらから働きかけないと、そもそも野球を見てもらう機会がありません。加えて、コロナで運動会や体育の時間が減ってしまい、子供たちがスポーツから遠ざかってしまっていることにも危機感を感じました。
コロナ禍という状況で子供たちに喜んでもらえて、球団をより身近に感じてもらえるプレゼントは何か。プロジェクトチームがたどり着いたのはオリジナルのフェースカバー(マスク)とミニタオルの入ったナップザックでした。

山中 まずは子供たちにスポーツとの距離を縮めてほしい。しかし、スポーツをしようにもコロナと向き合わなければいけない状況です。そこで飛沫を防止するマスク、手洗いに使えるミニタオル、そして感染予防や消毒の観点から荷物が増えることを想定したナップザックの3点をセットにしました。マスクは選手が試合で着用しているものと同じようなデザインです。スポーツをしていても呼吸が楽にできるような素材を選び、小学生みんなが着用できるようにゴムひもの長さを調節できるアジャスターもつけました。
このプレゼントは子供たちと球団とのコミュニケーションの入り口です。プロジェクトチームは連動する複数の企画を考えてきました。

山中 ナップザックをもって試合の観戦に来ると別のプレゼントがもらえる企画を練っています。また、チームのトレーニングを担当するスタッフが監修し、ミニタオルを活用できる「ベイスターズ体操」も作りました。「投げる」「走る」という野球の動作を取り入れ、教室でも楽しく身体を動かしてもらえます。プレゼントを起点として、長い時間軸で子供たちとの接点を作っていきたいと思っています。
球団誕生10周年プロジェクトのキャッチフレーズは「感動を、みんなと一緒に未来へとつなげる」です。子供たちへのプレゼント企画で口火を切ったプロジェクトはこれから先、全ての世代の方に楽しんでいただけるように広がっていきます。楽しみにしていてくださいね!
(横浜DeNAベイスターズ広報 高橋美絢)
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