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世界2位リーグへの野望 Bリーグチェアマンに聞く

島田慎二Bリーグチェアマン

バスケットボール男子Bリーグが大胆な構造改革に乗り出す。リーグ誕生から丸10年に当たる2026~27年シーズンから競技成績によるチームの昇格や降格を廃止。クラブの事業規模に応じてカテゴリーを分ける新方式を採用する。新型コロナウイルス禍以前は右肩上がりで成長してきたBリーグだが、島田慎二チェアマンは「選手強化に重きを置く今の仕組みではこれ以上拡大できない。ビジネス面を重視することでアリーナやフロントスタッフにもっと投資できる」と強調。米プロNBAに次ぐ世界第2位のリーグを目指すという大きな目標を掲げる。

――現在の1部(B1)に替わって最上位クラブが集まる「新B1」(仮称)の参入要件をクラブの売上高12億円、ホームゲームの平均入場者数4000人、収容人数5000人超・一定のVIPルーム設置などを満たすアリーナの使用――とした。事業規模によるカテゴリー分けの理由は。

「勝った負けたではなく、しっかりした経営母体や環境があれば上の舞台で戦える仕組みの方が、絶対にビジネスとして大きくなると考えているからだ。新B1に人気クラブが集まれば、アウェーへのファンの訪問など関連ビジネスが大きくなり、スポンサーも増える。魅力を感じた企業がM&A(合併・買収)も含めてバスケット界に参入することを期待している」

「Bリーグは誕生以来、着実に成長してきたが、ここにきて何のためにクラブを運営しているのかが見えにくくなっている。良い選手は限られているのに、各クラブが強化にばかり力を入れることで年俸が高騰してきた。チームへの投資で企業努力が促された一方、フロント(の強化)や地域貢献などにはなかなか手が回らず、クラブ間格差が広がっている。みんなで頑張って果実を享受し、さらに大きく成長できるリーグにしたい」

――事業拡大を通じ、どんなリーグを目指すのか。

「Bリーグは『バスケで日本を元気にしたい』という理念を掲げて活動してきた。プロ野球やJリーグを超えようと言ってきたが、世間の関心がすごく高まったわけではないし、世界ランキングも低い。少子化などで競技人口も減っている。まだまだマイナースポーツという自覚を持っている」

「アリーナを根幹とする将来構想により、各地で経済価値を高め、人口交流を進めるというインパクトを残せるクラブを増やしていきたい。事業規模の拡大は目的ではなく、社会の公器として良い影響を与えていくための手段。常にこの意識を持たないと世間とずれていくし、ステークホルダーの協力も得られない」

――「新B1」のチーム数のイメージや目指す事業規模は。

「初年度となる26~27年シーズンは10~18チームくらいで始められたらと考えている。新B1のハードルはそれなりに高いので、ここを目指すクラブはこれから大変な努力をしてくれるはず。その勢いのまま新B1を十数クラブで開幕できたら、ものすごくワクワクする環境になる」

「カテゴリー分けは24年3月に行うが、その後もしばらくは門戸は開けておくつもりだ。『自治体との調整で数年後には要件を満たしたアリーナが使えるようになる』といったクラブが増えていくことを想定している。厳しい条件で絞り、希少性を高める『プレミア化』の意識はあるが、ふさわしいクラブがいるのに排除する考えはない。そうしないとB2、3部(B3)のクラブも夢を持てない」

「アリーナを根幹とする将来構想により各地で経済価値を高め、人口交流を進めるインパクトを残せるクラブを増やしたい」と島田チェアマンは語る(2019~20年シーズン開幕戦、横浜アリーナ)=Bリーグ提供

「29年ごろには新B1の各クラブの平均売上高を20億円にしたい。(コロナ禍前の18~19年シーズンに18億円弱と史上最高の売上高を記録した)千葉ジェッツのようなクラブばかりになる世界観だ。NBAに次ぐ規模のユーロリーグや中国リーグと同水準となる、1シーズンのリーグ全体の入場者数500万人(18~19年シーズンは259万人)、リーグの事業規模500億円(同265億円)を目指したい」

――全国にB1とB2は計36、別会社が運用するB3を含めると47クラブある。リーグ構造が「開放型」から「閉鎖型」に変わる影響は。

「B3も含めると、現在クラブが存在していないのは全国に7県。そこには積極的にクラブをつくっていきたいが、Jリーグのようにずっと拡大する方法は採らない。B3への入会はいったん22年夏に凍結し、当面は限られたクラブがアリーナ保有に集中できる環境にシフトチェンジしていきたい」

――沖縄県沖縄市にNBAにもひけをとらない沖縄アリーナが完成し、全国各地で建設計画が進んでいる。コロナ禍以前、人気クラブのホームゲームは満席が続き、チケット収入などは頭打ち状態だった。

「アリーナこそ、将来構想の一丁目一番地だ。現在も多くのクラブは試合の運営を地域の施設に支えてもらい、少ない収入の中でも試合のたびに設営と撤収費用を捻出してファンを楽しませる工夫をしている。ただ大半の施設は『スポーツをする体育館』であり、『スポーツを見る、見せるためのアリーナ』ではないのが実情だ」

「バスケットはスポーツ・ライブ・エンターテインメント。アリーナをワクワクや憧れといった感情移入できる場にすることでプレーがより生きてくる。これまでも最高のファン、高いレベルのプレーは存在していたが、最高の舞台が整うことでさらに多くのファンやステークホルダーを魅了できるステージに上がっていける」

――アリーナ計画へのコロナ禍の影響は。

「直接の影響は聞いていないが、向かい風ではあると思う。ただアリーナを単なる『箱物』と捉えるのではなく、地元の活性化、防災減災といった様々な要素を盛り込み、地元企業を巻き込んで事業として成り立つ可能性を示せれば、ムーブメントが起こせる」

「沖縄アリーナは計画段階から(ホームコートとして使用する)B1琉球の木村達郎社長が関わり、自治体と協力関係を築いてきた。コンパクトでも機能性があり、ファン目線でつくられた。今後のスタンダードになってほしい」

広がるクラブ間格差、にじむ危機感


今回のBリーグの構造改革のひな型を大河正明・前チェアマンが示したのは2019年夏、コロナ禍前のことだった。目標を上回るペースで事業規模を拡大していたが、このタイミングでリーグの根幹を変えるのは「今のシステムはもう限界」(島田チェアマン)という危機感があるからだ。
18~19年シーズンの決算ではB1トップの千葉を筆頭に上位5クラブの事業規模が12億円を超えた一方、集客で苦戦するなどした下位は5億円前後。格差拡大が始まっており、選手人件費の高騰が一因で債務超過に陥ったクラブもあった。
各カテゴリーの明確な数値目標が掲げられたことで、今季からB1の広島やB2で圧倒的な勝率を残す群馬などは新オーナーのもと事業面を含めて成果が出始めている。プロ野球やJリーグと比べ、クラブの高い成長率に魅力を感じる企業は今後も現れるだろう。
ただ、コロナ禍で昨季決算ではB1、B2の計36クラブ中22クラブが赤字になった。影響は来季も続く見通しで、特に経営基盤の弱いB2クラブには構造改革が逆風になる可能性もある。島田チェアマンには当面のリーグ運営と将来構想の両立という難しいかじ取りが求められる。
(鱸正人)

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