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「人間力を見たい」 スカウトが語るドラフトの裏側

横浜DeNAベイスターズ広報 河村康博

プロ野球球団で仕事するようになり、私がとても驚いたことの一つはドラフト会議が持つ「熱量」でした。ドラフト会議当日、球団はもちろん、メディア、プロ野球ファンの皆さんのみならず、日本全国が指名を受けた若い選手の話題で持ち切りとなります。プロ野球の人気は、チームの勝敗や選手のスーパープレーだけではなく、ここから始まる新たな「ストーリー」が支えていると言っても過言ではないようです。

当日の盛り上がりだけでなく、事前の情報戦も魅力の一つです。1位指名については各球団が公表か非公表かと戦略を練り、メディアは予想合戦を繰り広げます。そして実際のドラフト会議で1位選手指名が重複した場合はくじ引きという誰も恨みっこなしの運がモノをいう勝負。そのドキドキ感も含めて、一つのエンターテインメントとして完成されていると感じます。

我が横浜DeNAベイスターズはドラフト戦略が注目を集める球団の一つ。例年、その戦略の多くは事前に公にせず、1位指名選手を公表することもありませんでした。

今年のドラフト会議の前日、最後のスカウト会議を終えた編成部スカウティングディレクターの河原隆一に話を聞くと、「これまでベイスターズのスカウトを引っ張ってくれた高田さん(高田繁・元ゼネラルマネージャー)と吉田さん(吉田孝司前スカウト部長)が退任され、新体制で挑むドラフトですが、これまでと考え方は変わりません。今年も事前に指名を公表することはありません」と言っていました。しかし、その言葉に続けて「今年は勝負するかもしれないですよ」と、こっそり耳打ちしてくれたので「もしかすると……」とワクワクした気持ちでいました。

結果はご存じかと思いますが、ベイスターズは市立和歌山高の小園健太投手を重複覚悟で1位指名。阪神タイガースと競合しましたが、三浦大輔監督が見事にくじを引き当てて交渉権を獲得しました。ファンの皆さんと同じようにスカウト陣も大興奮。遠征中の広島で見守ったベイスターズの現役選手も盛り上がったようです。その様子は球団公式Twitterで公開していますので、ぜひご覧ください。

ドラフト会議の主役はもちろん指名された選手たちですが、今回のコラムでは陰の主役である球団スカウトにスポットを当てたいと思います。横浜DeNAベイスターズで進藤達哉編成部長とともにスカウト陣を引っ張るのは、私に耳打ちをしてくれた河原スカウティングディレクターです。スカウト歴の長い河原をもってしても、若い才能を見つけ、そこから数人を選び抜くことは難しいと言います。

河原「ドラフト会議を見据えて本当は早めに判断したいのですが、若い選手たち、特に高校生は短い期間でガラッと変わります。2年の夏まで試合に出ることができなかった選手が新チームになり、3年の夏で一気に出てくることはよくあるんです」

野球の技術云々(うんぬん)は一旦置いておき、プロのスカウトはどんな選手に魅力を感じ、「この選手はプロでも活躍できる」と考えるのか、ポイントを聞いてみました。河原の答えには、ビジネスを含めどの世界にも通ずるものがありそうです。

河原「面談などを通して選手と接する機会もありますが、自分のことを客観的に見ることができる選手は魅力的ですね。また、主体的な選手か否かという点は、ベイスターズとしてとても大切にしています。これは『人間力』と言い換えることができるかもしれません。その力を見極めるのもいろいろな方法がありますが、スカウトによっては、練習を見に行くことを伝えず、選手に見つからないようにグラウンドの陰からこっそり観察したりする人もいます。プロのスカウトが見ていない状態でも、自ら考え動くことができるのか。その時の姿勢でどんな選手なのか分かったりするんですよ」

スカウトが見ていれば気合の入らない選手はいないと思います。そうではない日常の姿勢にプロで活躍できるかどうかのカギがあるということでしょうか。スカウトが実際に観察し、時にはR&Dチームのデータも駆使しながら、悩みに悩んでベイスターズは9人の選手を指名しました。

河原「まずは、球団として一番求めていた小園健太投手を三浦監督が引き当ててくれて、幸先良くドラフトを進めることができました。小園投手は非常に完成度が高い。総合的な力として高校生としては頭一つ抜けた投手だと思います。先発ローテーションの柱になれるポテンシャルがありますし、早く1軍のマウンドへ出てくれると思いますよ。また、即戦力として期待できる東京六大学を代表する選手である徳山壮磨投手(早大)と三浦銀二投手(法大)を指名できました。中長期の視点から若い内野手や足の速い選手も獲得できて、非常にバランスが取れた狙い通りのドラフトだったと思います」

これまで長い間準備をしてきたスカウトの考えた通りのドラフトができたとのこと。メディアからの取材依頼が多くて私たち広報が「もう勘弁してください……」と思ってしまうほどの活躍を今から期待しています。最後に、未来のプロ野球選手へ、河原からのメッセージをお届けします。

河原「楽しんでプレーし、『野球が好きなんだな』ということが伝わる選手はプロのスカウトから見ても魅力的です。せっかくいい選手でもダラッとしていたりするとがっかりしてしまいますし、そういうのは私たちから見ていてもわかります。これからプロを目指す選手たちは、プロの世界を諦めず、『野球が好きでうまくなりたい』という向上心を常に持ってプレーしてほしい。一人でも多くの魅力的な選手に出会えることを楽しみにしています」

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