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サッカー日本代表、示した「覚悟」 本調子までもう一息

サッカージャーナリスト 大住良之

前半、先制点を決め、喜ぶ田中。日本はオーストラリアを2-1で下し2勝目をあげた

日本代表は10月12日に埼玉スタジアムでオーストラリアと対戦、2-1で勝ってワールドカップのアジア最終予選第4戦で2勝目を記録した。

5日前にアウェーで行われたサウジアラビア戦を0-1で落とし、オーストラリアに勝てなければ、ワールドカップ出場権獲得の2位以内が大きく遠のいたはずだった日本。しかし8分にMF田中碧(デュッセルドルフ)のゴールで先制し、いちどは追いつかれたものの、86分にFW浅野拓磨(ボーフム)のシュートが相手DFのオウンゴールを誘って2-1で勝ちきった。

日本サッカー協会の集計ではシュート数は10対9(アジアサッカー連盟=AFC=の集計では12対9)。ボール保持率は46.6%対53.4%(同45.8%対54.2%)。どう転んでもおかしくない、際どい試合だった。

田中の先制点は、左から田中に送ったMF南野拓実(リバープール)のクロスがMFアーバインのつま先に当たってわずかにコースが変わったため、カットしようとしたDFベヒッチが届かず、右で受けた田中がフリーになって決めた。決勝ゴールは、左から放った浅野のシュートがこれもブロックにきた相手DFセインズベリーの足に当たって少し浮いたためオーストラリアGKライアンの左手が届かず、そのまま右ポストの内側に当たったボールがベヒッチのオウンゴールを誘った。

後半、浅野のシュートがオウンゴールを誘い、決勝点となった

南野のクロスは、アーバインの足に当たっていなければベヒッチにカットされただろう。浅野のシュートも、セインズベリーに当たっていなければ、GKライアンの胸にすっぽりと飛び込んでいたかもしれない。まさに「紙一重」の小さな接触が、この試合では日本に大きく利したことになる。

それは「幸運だった」という意味ではない。この試合の日本選手は、ともかく味方につなぎ、ともかく相手ゴールに向かい、そしてともかく勝とうという意欲にあふれていた。その気持ちの強さが、相手の足にかすかに触れたボールを日本に有利なところに運んだのだ。サッカーは「紙一重」のゲームだが、そこには、「偶然」や「幸運」などという言葉では済ませられないなにかがある。

オマーンに敗れ、中国に勝ちはしたものの、非常に低調なプレーに終始した9月の2試合。「10月シリーズ」の初戦、酷暑のジッダでの一戦は、9月よりずっと体が動き、チャンスもつくった。表面的に見れば、敗れたものの内容は悪くはなかった。しかし私には、非常に大きな疑問があった。選手たちの態度である。

キックオフ直後から、日本の選手は倒れるとファウルをアピールし、自分が反則を取られるとレフェリーに大声で抗議をした。DF吉田麻也(サンプドリア)、DF長友佑都(FC東京)のような百戦錬磨のベテランたちまでそんな態度をとっているのに驚いた。

後半立ち上がりには、MF柴崎岳(レガネス)がハーフラインを越えたところで相手に奪われ、両手を広げて「ファウルだ」と抗議した。その間にボールを奪った相手選手はあっという間にドリブルで進み、日本ゴールは大きなピンチにさらされた。私が監督なら、この時点で柴崎を交代させている。

サウジアラビアに敗れ、厳しい表情の吉田(左)と、うつむく古橋。この試合の選手の「覚悟」は本物ではなかった=共同

「10月シリーズ」で当たるのはともに2連勝で9月シリーズを終えたサウジアラビアとオーストラリア。日本は、その強豪になんとしても勝たなければならない状況に追い込まれていると、だれもが理解していたずだった。しかしサウジアラビア戦では、選手たちの「覚悟」は本物ではなかった。本当の覚悟があれば、ファウルをされてもすぐに追いかけ、ファウルの笛を吹かれたら顔色も変えずに次のポジションに動いていくはずだ。

サウジアラビア戦では欠けていたその「覚悟」が、オーストラリア戦にはあった。ファウルのアピールなど、ほとんどなかったし、レフェリーに異議も唱えなかった(後半半ばにPKの判定をされたときを除き)。それは、「どんなことがあっても勝利を獲得するために戦い抜く」という本物の覚悟だった。その覚悟が、ほんのわずか相手の足に触れたボールを得点に結びつけたのだ。

9月からの4試合を振り返ると、日本代表は1試合ごとに調子を上げてきた。初戦のオマーン戦は30%ぐらいだったのが、中国戦では50%、10月のサウジアラビアでは70%、そしてこのオーストラリア戦では攻撃のスピードも生まれ、80%程度まで調子を上げてきた。本調子までもうひと息だ。しかしまだ安心することは許されない。

11月の2試合も「どうしても勝たなければならない」試合。森保監督はどう準備して乗り越えていくか

オーストラリアに勝っても状況が変わったわけではない。2位との差は詰まったが、同じ日にオマーンがベトナムに3-1で勝ったため、日本は「総得点数」でオマーンに抜かれ、10月シリーズを終えたところで順位としては「4位」に後退している。11月に予定されているベトナム、オマーンとの「アウェー連戦」も、このオーストラリア戦と同様、「どうしても勝たなければならない」試合だ。

4戦して2勝2敗。その2敗は、いずれも2連戦の最初の試合である。欧州各国から集まって、2日程度のトレーニングで臨まなければならない初戦は、どうしてもコンディションを合わせるのが難しくなる。しかし迎える「11月シリーズ」で、過去2カ月の過ちを繰り返すことは許されない。森保監督は、どんな準備をし、どんな選手を使って「初戦の落とし穴」を乗り越えようとするのか。厳しい戦いはまだまだ続く。

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