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メジャー投手に粘着物質使用疑惑 対応遅れるリーグ側

スポーツライター 杉浦大介

ヤンキースのコールは粘着物質の使用経験を問われ、苦しい返答に終始した=USA TODAY

米大リーグで現在、一部投手による粘着物質の不正使用疑惑が最大の話題になっている。5月下旬以降、The Athletic、スポーツイラストレイテッドといった大手メディアが「多くの投手がボールに異物をつけて投球してきた」と告発。それがメジャーリーグに投高打低の時代が訪れた主要因の一つだとしている。

米球界ではこれまでも松ヤニなどの使用が暗黙の了解とされてきた。投手の投球時の滑り止めには必須であり、危険球のリスクを減らすため、打者側もその使用を望んでいるという論調を聞いたことがあるファンは多いだろう。

しかし、現代ではその粘着物質使用の主目的が変わってしまった。ボールに異物を塗り、摩擦をより多く発生させることで、回転率が上がった速球は勢いを増し、変化球も鋭くなったのだとすれば、問題視されて当然だろう。

「何といえばよいのか分からない。世代を超えて受け継がれてきたもので、中には明らかに境界線を超えてしまったものがある。野球を愛する多くの人々、選手、ファン、チームにとってこれは重要な問題。MLB(大リーグ機構)が規制を設けることを望むなら、議論されるべきだと思う」

8日、やり玉にされている粘着物質「スパイダータック」の使用経験があるかを聞かれた際、ヤンキースのゲリット・コールはそんな苦しい返答に終始した。しゃべり始めるまでに約5秒。このように剛球右腕が言いよどんだ姿は、この問題を語る際の象徴的なシーンとして記憶されていくことになるのかもしれない。

コールはフォーシームの回転数が2017~19年に一気に上がったことが不自然だと指摘されてきた。粘着物質の不正使用をめぐって騒ぎとなり、MLBが取り締まりのための新ルールを導入すると伝えられると、3日のレイズ戦では回転数の数値が下がった上で5回5失点。そんな経緯があったので、ツインズの内野手、ジョシュ・ドナルドソンが「偶然なはずがない」と述べたのをはじめ、コールに疑いの目が注がれるのは仕方なかった。

19年オフ、ヤンキースと投手史上最高額の9年3億2400万㌦の契約を結んだとこともあってコールが注目されているが、疑いがかかるのはもちろん1人だけではない。アストロズのジャスティン・バーランダーなど、疑惑を指摘されたことのある投手たちは投球内容、回転数ともにこれまで以上に周囲の関心を集め続けるはずだ。

今回の件に関して、疑惑のかかっている投手と同等かそれ以上に、MLBへの批判の声が大きいことも特徴といえる。

「ボールに問題があるってMLBはわかってんのに、お金のためかずっと滑りまくるボールを提供してくる。そっちを先にどうにかしましょう」 

パドレスのダルビッシュ有がそうツイートしていた通り、メジャーリーグのボールが滑りやすく、危険なことはかねて指摘されてきた。それでもリーグ側は改良せず、滑り止めの使用を黙認。しっかりとした規制を設けなかったことが現在の事態を招いたのだろう。

ダルビッシュら、MLBを批判する声も出ている=USA TODAY

特に現代の球界では回転数が投手評価の重要な基準となり、契約、給料にまで響くようになっている。だとすれば、ダルビッシュが言うところの「度を超す人間が出てくる」のは必然だった。MLBが多くのスター選手のドーピングに歯止めをかける努力をせず、それゆえに問題が大きくなった、いわゆる「ステロイド時代」と流れは似ているといえるのかもしれない。

「あの時代はみんなが使っていた、なんて言う人がいるが、実際にはみんなが使っていたわけではないんだ」

「ステロイド時代」のあと、ヤンキースのデレク・ジーターが苦々しい表情でそう述べていたことが思い出される。現代にも正当なやり方でスピン向上を追い求めてきたピッチャーは数多くいるはず。そういった選手たちは大迷惑で、苦々しい思いを味わっているに違いない。

このように投手優位に拍車がかかり、平均打率も記録的な低さになったあとで、MLBはどのような対応を施すのか。どんなルールを目指し、評判の悪いボールについに改良はなされるのか。サイン盗み事件に続いて訪れた新たなスキャンダルの後、遅ればせながら、リーグがどういった方向に向かっていくかに注目が集まる。

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