ワリエワは個人戦も出場 3位以内ならメダル授与式なし

【北京=木村慧】スポーツ仲裁裁判所(CAS)は14日、昨年12月のドーピング検査で陽性となりながら北京冬季五輪に出場しているフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)について、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)の資格停止処分解除を不服とした国際オリンピック委員会(IOC)などの訴えを棄却する裁定を下したと発表した。ワリエワは女子シングル(15日ショートプログラム、17日フリー)への出場が可能となる。
3人の仲裁人による裁定は、出場を認めた理由として、世界反ドーピング機関(WADA)が規定した16歳未満の「要保護者」に当たることなどを挙げた。当初の処分をRUSADAの規律委員会が解除した根拠や、採取した検体の分析結果の判明が遅れた原因は明らかにされなかった。
検体の陽性反応に関する手続きは今後行われる見通し。CASは「五輪出場を妨げることは彼女に取り返しのつかない害をもたらす」と指摘し、昨年12月に採取した検体の陽性判明が今月に遅れたことを「深刻な問題」とし、「彼女の責任ではない」と強調した。陽性反応についての判断は持ち越した形で、疑惑は晴れぬまま15日の女子フィギュアスケートを迎えることになった。
IOCは14日、フィギュア女子シングルでワリエワが3位以内に入った場合、表彰式やメダル授与式を行わないと発表した。ドーピング規定違反をめぐる問題が解決していないためとしている。ワリエワも出場し、ROCとして金メダルを獲得した団体戦のメダル授与式も大会期間中に行わない。団体戦の扱いについて、CASは今回判断せず、別の手続きになると発表している。IOCは最終的な順位確定は国際スケート連盟(ISU)が決めると説明している。団体戦で日本はROC、米国に次いで3位だった。

この問題は8日に予定されていた団体戦のメダル表彰式が急きょ中止されたことで表面化した。昨年12月にロシア選手権で採取したワリエワの検体をスウェーデン・ストックホルムの検査機関が調べたところ、心臓疾患の治療などに用いられる禁止薬物トリメタジジンが検出された。
RUSADAは検査結果の判明を受けて今月8日に暫定資格停止処分を下したが、ワリエワの異議申し立てを受け、RUSADAの規律委員会が9日に処分を解除した。これを不服としてIOCとWADA、ISUがCASに提訴していた。
IOCなどは当初、ワリエワがドーピング規定などで身元や違反内容の開示義務がない16歳未満の選手であることを理由に詳細の説明をしていなかったが、ドーピング検査を管轄する国際検査機関(ITA)が11日に一連の経緯を公表した。
過去の組織的なドーピング不正により、ロシアは北京大会に選手団として参加することを禁じられ、過去に違反歴のない選手だけがROC名義の個人資格で参加している。
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