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競走馬のセレクトセール熱く セリ活発、落札額20%増

セレクトセール1歳部門の最高価格3億円で売却されたディープインパクト産駒「ゴーマギーゴーの2020」=日本競走馬協会提供

初日 ディープインパクト最後の世代をめぐり

毎年、世界最大規模の取引が成立する競走馬のセリ市場「セレクトセール」(日本競走馬協会主催)が、2021年も7月12、13の両日、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われた。昨年に続いて、コロナ禍の収束が見えない中での開催。メディアの取材は今年も各社1人とされ、密集を避けるために会場近くでの写真撮影も、主催者側指定のフォトグラファーのみに制限されるなど、より厳しい条件が設定された。

初日の1歳部門は、前日から降り続く小雨の中で進んだ。この日一番の注目は19年7月にこの世を去ったディープインパクトが送り出す最後の世代。数少ない産駒の中から上場されたのは4頭。将来の種牡馬としての価値をもにらんだ牡馬2頭は、それぞれ当日の最初と最後の上場となった。

上場番号1番は、米国で重賞勝ちのあるゴーマギーゴーを母に持つディープインパクト産駒。1番と当日の最後の上場馬は慣例で、鑑定人が最初に価格を示さずにセリを始める。「会場の皆様、お声がけいただけますか?」とのアナウンスに、会場中央の購買者から「2億!」の声がかかり、場内にちょっとしたどよめきが起きた。

価格は1000万円単位で競り上がり、15秒後には2億5000万円、25秒後に2億9000万円。少しの間があって1分弱で3億円まで上昇。結局、2分弱で当日の最高価格となる3億円に鑑定人のハンマーが落ち、期せずして場内から拍手が起こった。

その後も活発なセリが続いた。とにかくどの上場馬も競り上がる。傘下の牧場など、関連する上場者を含めて全上場馬の3分の2を送り出したノーザンファーム(NF)は、事前にウェブサイトでリザーブ価格(希望する最低売却価格)を公表。今回はカタログ記載の血統表とリザーブ価格から、高値がつきそうな馬をある程度予想することができた。ところがフタを開ければ、予想をはるかに超えて会場の熱気は冷めることなく、取材者にとっては食事をとる暇もない熱狂の一日となった。

最も驚いたのがセリ終盤の上場番号141番ギエムの2020だった。リザーブ価格2000万円からみるみる価格が上昇。2億6000万円まで上がってやっとハンマーが落ちた。その父シルバーステートは卓越したスピードと瞬発力を見せた馬だが、今年初めて産駒をレースに送り出したばかりで未知数な部分が多く、予想外の高額となった。

最後に登場した父ディープインパクトの牡馬は、1番の馬と同じく会場の2億円の一声からスタート。それから1分ほど、鑑定人の促す声にも反応はなく、そのまま2億円でハンマーが落ち、長い初日のセリが終了した。この日の落札総額はセリ史上最高の116億3800万円。落札率も93.4%という驚異的な数字だった。

上場した馬が完売となったノーザンファームの吉田代表=日本競走馬協会提供

価格上位4頭を含めて、関連上場馬117頭を完売したNFの吉田勝己代表は、初日の市場を振り返り「(セリ開始の)午前10時から(終了の)午後7時半まで、息つく暇がないぐらい会場の雰囲気が落ちることがなかった、言いようがないぐらいすごいセリだった。コロナ禍でも競馬が休みなく行われ、売り上げも伸びていること。それが一番大きかった。購買層が厚くなっていろんな人がセリに参加してくれました」と語った。

2日目 ポスト・ディープインパクトを探して

2日目は雨が上がり、午前8時から会場横の林と奥の放牧地を舞台に上場馬の一斉展示が行われた。今年生まれた子馬230頭が母馬と並んで一斉に立つ姿はいつ見ても壮観だ。2時間の展示の後、午前10時から始まった当歳(零歳)馬のセリは、前日の熱気を引き継いで予想外の高額取引馬が続出した。

当歳馬の個体展示

ディープインパクト産駒がいない世代である。最初に登場したレイデオロの初年度産駒の一頭である牡馬が1億5000万円で落札されたのを皮切りに、種牡馬引退でこの世代が最後となるハーツクライ産駒3頭は全てが2億円超え。ロードカナロアなど12頭の種牡馬の産駒が1億円を超える高額落札馬(全24頭)のリストに顔をそろえ、ポスト・ディープインパクトの混沌を象徴するような流れとなった。

2日目の最高価格は、前日の1歳市場で初めて1億超えの落札馬を出したキズナ産駒の牡馬だった。リザーブ価格の4000万円から、価格はぐんぐん上昇。際限なく続くと思われた熱い競り合いは4億1000万円でハンマーが落ち、ようやく決着がついた。

この日の落札総額は109億2300万円で前年比31.1%増。当歳部門としては初の100億円超えだ。売却率も92.6%と、やはり当歳部門で初めて9割を超えた。2日間の落札総額は前年比20.3%増の225億6100万円。今年も取材者、関係者の驚きの中でセリは幕を下ろした。

熱気に満ちた2日間で注目を集めたのは、サイバーエージェントの藤田晋社長だった。初日に最高タイの3億円まで競り上がったロードカナロアを父に持つ牡馬など、1億円超えの11頭を含む18頭を次々に落札した。同社の子会社が展開する競馬をテーマにしたゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」が大ヒットしている。2日間で藤田氏の購入額は23億6700万円に上り、市場全体の1割を超えた。

日本競走馬協会会長代行の吉田照哉・社台ファーム代表は「キングカメハメハの子供がおらず、ディープインパクトの産駒もわずかとなって落札総額が下がるのもやむを得ないと思っていた。今回はサイバーエージェントの藤田さんが落札した馬を買えなかった人が、他の馬を競りにいくことになり、押し出されるような形で高額になったのではないでしょうか。購買者数も昨年から1割ぐらい増えて750人ぐらい。新しい人たちが幅広い価格帯でセリに参加してくれて予想を超える結果になった。(購買者の増加には)ウマ娘効果のようなものがあるように聞いている。そんないろんな要素が重なって今回の結果になったのでは。でも、分かりませんね。ただ驚いています」と2日間を総括した。

セレクトセールの2週間後の7月27日に行われた日高軽種馬農協(HBA)主催の「セレクションセール」も売却総額、売却率ともに従来のレコードを大幅に更新。購買者の熱は冷める気配がなかった。8月23日からは5日間の日程で、国内最大規模の1000頭以上が上場されるサマーセールが予定されている。セール出身馬の活躍に加えて地方競馬の賞金上昇という追い風も吹くなか、夏の終わりのサマーセールも競走馬市場の熱気に包まれそうだ。=金額は税抜き

(ラジオNIKKEIアナウンサー 佐藤泉)

各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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