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マラソン人口1000万人超えでも 「福岡」失ったさびしさ

先日、新庄剛志さんがプロ野球、北海道日本ハムファイターズの監督に就任した。自分を「ビッグボス」と呼ばせるなど現役時代から変わらぬ新庄流スタイルを貫いていて、今からワクワクする。

指導力の真価が問われるのはペナント争いが始まってから。とはいえ、彼が監督となってメディアの注目度が上がり、一説には100億円超の効果が見込まれるとのこと。監督としての器量に加え、こうした波及効果も見込んでいたなら、球団関係者の手腕は大したものだ。

一方、陸上競技では今月5日、福岡国際マラソンが75回の歴史に幕を下ろした。このレースは瀬古利彦、宗茂・猛兄弟のデッドヒートや、中山竹通の雨中の大独走、藤田敦史による30年ぶりの福岡での日本最高記録樹立など、数々の名シーンを生んだ。オリンピック代表を決定する大舞台で、日本マラソンの代名詞というべき大会だった。

中止の主な要因は収入源であるスポンサーを獲得できないことにあるようだ。確かに近年は日本選手があまり優勝できず注目度は低くなってしまった。エリート選手だけでは大規模マラソンのような参加費収入が見込めず、台所事情は苦しいに違いない。びわ湖毎日マラソンが今年2月のレースで幕を閉じ、統廃合で消滅したばかり。「時代に合わない」の一言で切り捨てられていく伝統を、なんともさびしい思いで見つめている。

新型コロナウイルス禍での運動不足解消の意識も高まり、国内のランニング人口は1000万人を超えたという。誰でも標準記録を切れば出場できるエリートマラソン大会は、市民ランナーにとっての最高峰=オリンピックと位置づけられる。工夫次第でコロナ後のマラソン界のけん引役となる道もあったのではと惜しまれてならない。

テレビ放映権など様々な利害の調整が必要になるけれど、五輪マラソン代表を決めるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の実施や、運営費をクラウドファンディングなどで募り、一定額以上の出資者にはスタートから5キロまでの出走権やエリート選手の思い出の品を受け取れるなどの特典を付ければ人気を呼んだのではないだろうか。

有名な自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」のように、レース序盤を盛り上げる工夫として、5キロごとの先頭をとった選手や自己記録を大幅に上回った選手にボーナスを与えたり、レースの動きが比較的少ない序盤のテレビ放映をダイジェストにして、レース直後に上位選手による「感想戦」の対談を入れたりするといったアイデアが思い浮かぶ。マラソン大会運営の素人による浮薄な考えとのそしりを受ける覚悟で提案してみたかった。

新庄ビッグボスの大胆な発想と行動力をみても、野球などほかのスポーツは時代に合わせた「見て楽しめる」変化に柔軟に対応している。マラソン大会も強化と演出を両輪とした大胆な取り組みが必要だろう。「福岡国際」は日本マラソンの原点であり文化だった。関係者のご苦労には頭の下がる思いだけれど、手放してよいとはどうしても思えない。

(プロトレイルランナー)

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