/

データ改革を先導 全柔連科学研究部・石井孝法㊤

柔道界改革の一翼を担ってきた石井孝法は「データをインテリジェンスに変えることこそ重要」と話す

男子で金メダル2つを含む全階級でメダルを獲得した2016年リオデジャネイロ五輪の日本柔道。復活の陰には感覚や根性に頼った戦いから脱却した科学の力があるといわれる。全日本柔道連盟科学研究部(科研)の石井孝法(40、了徳寺大准教授)は「ゴジラ」の愛称を持つ試合映像分析システム「D21-JUDO」の生みの親として改革の一翼を担ってきた。

危機感抱いたロンドン五輪

発端は13年。男子金メダルゼロと振るわなかった前年のロンドン五輪で海外選手の研究資料は重視されず、検証の場でも主観が先行する状況に石井は危機感を抱いていた。幸いだったのは、新しくなった指導陣に「議論できる人が多かった」。同僚の金丸雄介らコーチ陣に加え、井上康生ら男女監督も理解があった。思い描いたゴジラの「設計図」を説明すると、現役時代のライバルだった重量級コーチの鈴木桂治が膝を打つ。「これは宇宙も飛べちゃうね」

国の補助事業を利用し、15年に完成したゴジラは1つの大会で700にも及ぶ試合映像を片っ端から撮影し、約4000人のライバルの組み手や技の傾向、得失点の時間帯まで細かく分類。各国際審判が出す指導の特徴まで網羅し、その威力はリオの本番でもいかんなく発揮された。

ノーマークの中国選手が変則大外刈りをひっさげて大物食いを続け、準決勝でベイカー茉秋と当たった男子90キロ級。石井らは20分で映像を手早くまとめ、担当コーチの広川充志に伝えると、大外刈りを完璧に封じての一本勝ち。対策を畳で遂行した主役の力もさることながら、裏方まで一体となってつかんだ勝利だった。

データを指導や戦術に生かすノウハウ磨く

今夏の東京五輪に向けても、虎の巻となるゴジラの存在。しかし、その仕組みの保秘には石井は頓着しない。「ただのインフォメーションにすぎないデータをインテリジェンスに変えることこそ重要。まねされても同じことはできない」との自負があるからだ。

現役時代から筑波大大学院に進みバイオメカニクスとコーチ学を研究した石井は、統計の提供にとどまらず、指導や戦術に落とし込む「参謀」としてのノウハウも磨いてきた。コーチやトレーニング、栄養スタッフらが議論する定期会議にも常に加わり、選手の強化にもシステムを生かす。

「コーチは技術論にフォーカスしやすいが、罰則傾向や体力面など勝敗には様々な要因がある。技術だけが問題かを潰していくのも仕事の一つ」。単なるデータ屋には終わらぬとの気概が、数字に息吹をふき込み、日本のお家芸を支えている。=敬称略

(西堀卓司)

Tokyo Olympic and Paralympic 特設サイトはこちら

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン