ペルー・パラリンピック委員会、逆境下でも歩み止めず
マセソン美季

「ありがとう NPCペルーとトヨタ」というメッセージが入った写真をビデオ会議システムを通じて見せてくれたのは、ペルー・パラリンピック委員会(NPCペルー)のルチャ・ヴィラー会長。写っているのはパラ水泳の選手とその母親だ。足元に、パラリンピックのワールドワイドパートナーであるトヨタ自動車の支援で送られた食料品が並べてあった。
新型コロナウイルス感染拡大で、ペルーでは昨年3月に出された緊急事態宣言がまだ解除されていない。国内には約350人のパラアスリートがいて、うち4人が東京大会の出場権を獲得している。トレーニングは全面的にストップ。NPCペルーはすぐ活動再開のためのガイドラインを策定したが、政府に承認されたのは8月だ。バドミントン 、パワーリフティング、射撃、陸上から少人数でのトレーニングを再開した。
ただ公共交通機関の利用は禁止されているため、自家用車で移動が可能なアスリートやトレーニングセンターに住み込みができる選手に限定されている。オンライン指導への移行もスムーズには進まなかった。多くは非正規雇用で仕事をしながら競技生活を送っており、解雇や雇い止めで、自宅でインターネット環境を整えられない例が少なくない。そのため、NPCペルーはトヨタ自動車と全国障害者協会の支援で、食料品を選手たちに届け、その際、職員らが選手の生活やトレーニング状況の把握を行っているという。
また厳しい環境でも、パラ競技の紹介をするオンラインでのワークショップなど月に1度の活動は継続。昨年は約1000人が参加した。米国やエクアドルのパラリンピック委員会ともコロナ下の強化方法について情報共有をはかり、パラリンピックムーブメントを停滞させまいと懸命の努力を続けている。
経済の落ち込みで、パラスポーツの予算も前年に比べ6割減ったという。だがヴィラー会長は東京大会でアスリートとともに、トヨタ自動車の豊田章男社長に「ありがとうございました」と直接伝える日を夢見て、頑張る力に変えているそうだ。
