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「飛ばしの思想」覚悟の弟子入り ロッテ・安田尚憲㊦

安田は「変わらなくては」と、松中臨時コーチ(右)らの教えを貪欲に吸収する=共同

昨年オフ、いつものように高校時代の師、大阪・履正社高監督、岡田龍生へのあいさつに出向いたロッテ・安田尚憲はこう話したという。「これというものが、まだつかめていません」

3年目の昨季、1軍に定着し、86試合連続で4番を務めたものの、確たる感触は残らなかった。

「変わらなくてはいけない」という思いは切実だったのだろう。福田秀平のソフトバンク人脈から、柳田悠岐にオフの自主トレへの参加を願い出たのは昨年10月。優勝争いが続くさなかのことだった。

「1年間1軍でみたなかでも最高の打者」で、しかも同じ左打ちだ。温泉地での合同自主トレで2週間あまりをともにした柳田は体から何から違っていて「衝撃に近いものがあった」と話す。

背中の筋肉の厚み、スイングの速さ。近いところからのトスを、外野めがけて飛ばすロングティーは地力がはっきりと出る練習だ。その飛距離も段違いだった。

自分の打球はなぜフェンス手前で失速するのか。113試合、460打席で6本塁打。昨季パ・リーグで規定打席数に達した26選手中、本塁打数で下にいるのは5人だけだった。

それは「力負け」を示す数字だった。「150キロ、155キロの直球をどうやって打ち返すか。基本的に、いい打者はストレートに強い打者。まずは直球を打ち返さないと戦えない」(昨年の契約更改後)と身にしみた。

クライマックスシリーズ第1戦で、パ・リーグが誇る速球王、ソフトバンク・千賀滉大から先制2ランを奪った。球速表示は136キロ。変化球だった。直球を打ち返さない限り、千賀を打ったとはいえない。

柳田には「(直球に負けまいとして)バットを上からかぶせてしまうと、他の球が打てなくなる」との助言を受けた。ロングティーのコツはバックスピンを効かせて、高くて大きなアーチを描く、とのことだった。ライナー性の打球が多かった打撃からすると、かなりの転換が迫られるかもしれない。それはもちろん覚悟の上の弟子入りだ。

キャンプで臨時コーチを務めたソフトバンクOB、松中信彦が強調したのは下半身を使うこと。47歳になる松中本人の実演は強烈だった。練習の合間にフリー打撃のケージに入り、軽く柵越えをしてみせた。「飛距離はパワーだけではないんだな、と」

柳田、そして松中。ソフトバンク球団会長の王貞治が監督として種をまき、福岡の地で脈々と受け継がれてきた飛ばしの思想が、千葉の大器に移植されつつある。

故障で昨季途中離脱したブランドン・レアードが三塁に戻ってきて、どうやらまた、一からレギュラー取りに挑むことになる。大半の試合で4番を務めた身が〝平幕〟からとはやるせない話だが、本人は当然だという。

「去年出た成績が、自分の実力。そこをしっかり受け止めて」。6本塁打という数字に、心が燃え立つ。=敬称略

(篠山正幸)

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