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「自信のなさ見せるな」に奮起 ロッテ・安田尚憲㊥

ソフトバンクとのクライマックスシリーズでの活躍に「不動心」がうかがえた(第2戦で千賀から先制2ラン)=共同

ロッテ・安田尚憲が4番の任を解かれたのは昨年10月31日だった。7月21日からの4番での連続出場が、86試合で止まった。前日まで打率2割2分3厘。直前の10試合、打点がなかった。しかし、監督の井口資仁は数字で判断したのではない。

「成績、打率を上げたいということで、スイングが小さくなったり、当てにいったりしているところが見受けられた」(シーズン総括の会見で)

低打率とはいえ、ソフトバンクに互角以上の戦いをし、優勝戦線に食らいつくうえで、貢献をしていたのは確かだ。

王者との本拠地初対戦となった8月の6連戦の初戦、千賀滉大から先制打。3戦目は七回に同点弾、延長十回逆転サヨナラ勝ちに絡む安打を放っている。

一方、気になる傾向があった。188㌢、95キロ。堂々の体格で、天性の飛距離もある。芯に当たりさえすれば、柵越えするはずなのに、本塁打数が伸びなかった。

右中間、左中間にいいライナーが飛んではいたが、大砲というよりは中距離ヒッターとしてまとまってしまう気配が出てきた。それは球団が望む姿ではない。よほどのことがない限り、4番ははずさない、としていた井口だが、打撃のスケールが損なわれては元も子もなくなる。

4番の先輩、ブランドン・レアードなら「自分の仕事は本塁打を打つこと、打点を稼ぐこと」と割り切って、打率は気にしない。失敗も引きずらない。だが、1軍に定着したばかりの身に、そこまでの達観を求めるのは無理な話。打席での迷いのしぐさ、手探りのスイングに「自分はまだ、実力で4番の座を取ったわけではない」という引け目がのぞいた。

その謙虚さは人としての誠実さを示してはいたが、戦いの場では無用なばかりか、有害にすらなりかねなかった。

「打席で自信のない姿は見せるな」。そう諭してくれたのはレオネス・マーティンだった。キューバ出身で米メジャーを経て、2019年途中に加入した。世界を渡り歩いてきた猛者の目からすれば、自分から小さく縮こまり、相手に足元をみられることは絶対のタブーだった。

「あの言葉はありがたかった」。いい意味でのふてぶてしさが備わり始めた。

「不動心」も、心が揺らぎそうになるときに思いだす言葉だ。尊敬する松井秀喜(巨人、メジャー)の著書のタイトルで、いいときも悪いときも、変わらず準備に取り組み、試合に臨む心のスタンスのことだ。

先輩たちの言葉から自分を見つめ、1年間もがいただけのことはあったようだ。

ソフトバンクとのクライマックスシリーズ第1戦で千賀から右越えに先制2ラン。7番から4番にあがった第2戦は東浜巨から先制2点打を放った。打順が変わってもスイングは不変。不動心の手前の微動心くらいまで、腹は据わってきた。=敬称略

(篠山正幸)

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