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GⅠで響く生のファンファーレ 競馬場で初演奏に喜び

皐月賞の生ファンファーレの演奏風景=光ウィンドオーケストラ提供

中央競馬は11日から秋競馬が開幕。10月3日のスプリンターズステークスで、秋のGⅠシリーズも始まります。筆者にとっては、「GⅠファンファーレの生演奏を堪能できる」季節の到来でもあります。上半期にオークスの実況を担当しました。無観客だった2020年と異なり、海上自衛隊東京音楽隊によるファンファーレの生演奏があり、演奏の後、東京競馬場に大きな拍手が響きました。これだけでも、昨年とは全く違う高揚感があったことをよく覚えています。

演奏者が違えばそれぞれに個性が出るもの。日本中央競馬会(JRA)のホームページにある開催ごとのイベント情報には、各GⅠで生ファンファーレを担当するグループが公表されます。「このGⅠは○○が演奏するんだ」と発見するのが、個人的な楽しみになっています。

今年3月に更新された第3回中山開催のイベント情報では、皐月賞が「光ウィンドオーケストラメンバーによる生ファンファーレ」と紹介されていました。同オーケストラにとってファンファーレの生演奏は初登場のはず。筆者は当日、新潟競馬場にいて、画面越しの皐月賞観戦となりましたが、重厚な生演奏を存分に堪能しました。

皐月賞はエフフォーリアが圧勝=JRA提供

文化や芸術を愛しながらも、日ごろの研さんの成果を披露する機会を奪われてしまった人々が、今も世にあふれているコロナ禍の日本。中山競馬場のウイナーズサークルで拍手に包まれるまでの道も、決して平たんではなかったはず。そこで今回は、光ウィンドオーケストラの音楽監督・佐藤博さん、団長・神尾彰宏さん、事務局長・三須絵里佳さんにオンラインでお話を伺ってみました。

コロナ下、届いた晴れ舞台のオファー

JRAのサイトによると、光ウィンドオーケストラは「千葉県東部地域の吹奏楽経験者を中心に構成され、山武郡横芝光町を拠点に活動している吹奏楽団」となっています。コロナ禍が世界に影を落とす直前の19年には、第67回全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞。現在は団員約130人で、千葉県内でも最大規模の社会人吹奏楽団です。

毎週土曜の練習をベースに、毎年2月に主催する地元でのコンサート、夏のコンクールといったイベントが活動の柱となっています。しかし、コロナ禍の影響でこうした「柱」が軒並み倒れてしまったのが昨年でした。

そんな中でも、団の土台が崩れなかったのは「地元の横芝光町の協力が大きかった」(神尾さん)といいます。「横芝光町の協力で、イベントはできなくても、練習をさせてもらうことができました。20人くらいから練習を再開して、今では60人くらいの規模になっています。団員はみんな辞めなかったですし、結束、絆はコロナ禍の状況でも深まったと思います」と、神尾さんは熱っぽい口調で語ってくれました。

今年1月、再度の緊急事態宣言でまたも練習ができなくなってしまった頃に舞い込んだのが「皐月賞のファンファーレ演奏」のオファーでした。オファーを出したJRAの担当者が、かつて高校教員だった佐藤音楽監督の教え子という縁もあったそうです。

光ウィンドオーケストラはコロナ禍でこんなふうに集まる機会が失われていた=同オーケストラ提供

佐藤さんはグリーングラス、神尾さんはオグリキャップやメジロマックイーンに魅せられたと語るように、メンバーには競馬ファンも少なくないらしい光ウィンドオーケストラ。「GⅠなんてすごい舞台ですし、メンバーのみんなもビックリしていました」と三須さんが振り返るように、団内の反響は相当だったようです。

とはいえ、コロナ禍のただ中で演奏を担当するメンバーが集まるのは難しく、4月の本番前の練習はわずか3回。しかも当日は、屋外の中山競馬場ゆえの苦労も。佐藤さんは「4月の中山はまだ寒いので、本番までに楽器の音を出さずに待っている時間で唇がうまく動かなくなってくるんですね」。全く知らなかった屋外演奏の難しさ、これは筆者も聞いて驚かされました。

映像越しにその姿を見守った神尾さんも「他のメンバーも固唾をのんで見ていましたね。何とか成功して!という気持ち」だったそうですが、本番はお見事、の一言。ファンファーレの後には、スタンドの数千人のお客様から大きな拍手が送られました。スネアドラム担当だった三須さんは「やり切った、ホッとした……という気持ちでしたね。あの皐月賞が1年半ぶりに、演奏したあと拍手をもらえた本番だったのです。忘れられない思い出になりました」。反響も相当にあったようで、各種SNS(交流サイト)のフォロワー数も一気に増えたとか。あのウイナーズサークルで久々に味わうことができた充実感は格別だったのでしょう。

競馬好きも音楽好きも、共にハッピーに

ファンファーレは実況アナにとって「しゃべり始めの合図」でもあります。取材中、その音を奏でる方々と「僕たちって、お互いにバトンをリレーしていたんですね」という話になりました。そんな意識を共有することができたのが、今回の最大の収穫だったのかもしれません。「今回来られなかったメンバーもいるので、また違うメンバーで演奏できたら。このGⅠのファンファーレといえば光ウィンドオーケストラ、となってくれればいいですね」というのは、お三方全員の願いでした。

「当日中山競馬場へ初めて行くメンバーがほとんどで、競馬場の広さにみんなテンションが上がっていました。サラブレッドが美しいと感じました」と三須さんが語るように、皐月賞のファンファーレの生演奏を契機に、新たに競馬の魅力に触れる人が現れたことになります。しかも、音楽を愛する方々に、演奏を披露する機会も新たに訪れました。競馬を愛する人も、音楽を愛する人もハッピーになれる。ウィンウィンの関係といえないでしょうか。

コロナ禍の収束はまだ先になりそうですが、GⅠファンファーレの生演奏が増え、そんな方々からバトンを受け取ってアナウンサーが実況に臨む――。そんな機会が増えることを切に願っています。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 大関隼)

各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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