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まず正確なパスから サッカーA代表、生き残り難しく

サッカージャーナリスト 大住良之

タジキスタン戦の内容はよくなかった。試合後、勝利に喜ぶ中谷(中央)ら日本代表=共同

森保一監督率いる日本代表(今回は「A代表」と書く)は、5月28日のミャンマー戦を10-0で勝ってワールドカップのアジア第2次予選の首位通過を決定すると、中止になったジャマイカ戦に代わるU-24日本代表との「兄弟マッチ(3-0の勝利)」を経て6月7日に大阪・吹田でワールドカップ予選のタジキスタン戦を戦い、4-1で勝利を収めた。これで予選は7戦無敗となり、15日のキルギス戦に「全勝突破」をかける。

「日本代表」と呼べるレベルでなかったタジキスタン戦  

タジキスタン戦は、この予選で初めての失点を喫したことは別にしても、ミスやコンビネーションのずれなどが目立ち、勝ったものの非常に内容の悪い試合だった。

選手が手を抜いたわけではない。いわゆる「消化試合」であっても、選手たちはキックオフから終了の笛まで全力で戦い抜いた。球際の強さ、攻守の切り替えの速さなど、森保監督が求める「チームのベース」が崩れたわけでもなかった。しかし個々の判断が遅く、プレーが雑で、鋭いパスが通らないものだから、前半の途中から何人もの選手が個人プレーに走るようになり、本当に悲惨な試合となった。

代表中心フィールドメンバーで唯一出場した南野。タジキスタン戦の前半、チーム2点目のゴールを決め喜ぶ。右は祝福する古橋=共同

「責任は私にあります」と、試合後、森保監督は語った。「チームをあまりに変えすぎました。強度が強いプレーをする相手に対し、全体練習ができたのは1回だけというチームを送り出してしまったのは私の責任。コンビネーションを合わせることは難しいので、ミスが増えることは予想していた。しかしそれでも、クオリティーを上げようと、選手たちは試合のなかでトライしてくれたと思います」

たしかに、これまでにA代表の中心となってきたなかでこの試合に先発したのは、フィールドプレーヤーではMFの南野拓実ただひとり。メンバーが大きく変わるなかで、ある程度のズレが出るのは仕方がない。しかし私の目には、それ以前に、個々の判断が遅く、パスにも精度を欠いたため、試合がぎくしゃくしてしまったように見えた。すなわち、この日プレーした多くの選手が、「日本代表」と呼ぶレベルには達していないように思われたのだ。

W杯最終予選に向けてのテストチーム?

今回の「A代表」は少し特殊だ。5月28日のミャンマー戦には「Jリーグ組」を呼ぶことができなかった。そのため、「五輪世代」のU-24選手を含めた「欧州組」だけで戦った。6月の試合にはJリーグ組が加わったが、A代表は、五輪で「オーバーエージ」として出場する3選手を抜かれた。DFの吉田麻也、酒井宏樹、そしてMFの遠藤航である。さらにU-24年代でありながらA代表でも中心メンバーであるDF冨安健洋、MF堂安律、久保建英らも抜けた。それに追い打ちをかけるように、タジキスタン戦では、エース格のFW大迫勇也が故障でメンバー外になった。

そうして弱体化したA代表から、さらにMF鎌田大地、伊東純也、守田英正といった主力が外され、これまで試合出場の機会が多くなかった選手たちを先発で起用したのがタジキスタン戦だった。

タジキスタン戦で指示を出す森保監督㊨=共同

「責任は自分にある」と語った森保監督だが、考えなしに「テストチーム」を送り込んだわけではないだろう。9月には、ワールドカップのアジア最終予選が始まる。2次予選とは比較にならない強豪を相手に、来年3月までの間にホームアンドアウェーで計10試合も戦わなければならない。当然、「主力」だけで戦い切ることなど望めない。さまざまなアクシデントが起きるだろう。そのときのために、ひとりでも多くの「プレーできる選手」をかかえておかなければならない。日本にとっては「消化試合」とはいえ、ワールドカップ第2次予選という公式戦、しかも相手は2位にはいるために必死という試合で、誰に頼るわけでなく、個々の選手がどう賢く立ち向かっていけるかを見たかったに違いない。

しかし勝ちはしたものの、プレー内容は非常に悪かった。「スピード」や「強度」が強調される近年のサッカーだが、最も重要なのが「タイミングの良い正確なパス」であることに変わりはない。パスが正確に味方に渡らなければ、どんなサッカーをやろうとしても実現はできない。それが7日のタジキスタン戦のA代表だった。

要の選手が故障した時に残る不安

ただし私は、9月に始まる最終予選に懸念をもっているわけではない。五輪の「オーバーエージ組」が戻るだけでなく、冨安、堂安、久保といった「U-24世代」の選手たちもA代表に加わるからだ。なかでも卓越した視野の広さとパスの鋭さ、正確さで、日本を代表するMFになりつつある田中碧が、「U-24」にオーバーエージで加わっている遠藤航とのボランチコンビで日本の中盤を一挙に国際クラスに引き上げたことは注目される。

最終予選には(右から)久保建、田中碧らU-24の中心メンバーも加わる=共同

森保監督は、A代表と五輪代表をひとつのコンセプト、サッカーの方向性で導き、「ワンチーム、ツーカテゴリー」と表現してきた。オリンピック後にスタートするワールドカップのアジア最終予選では、五輪の経験を経た若手が、A代表の力と選手層を大きく底上げするだろう。

だが、7日のタジキスタン戦を見る限り、この日の先発選手の多くはA代表で生き残っていくことさえ難しくなるのではないだろうか。彼らが「主力組」に負けないパフォーマンスや判断の速さ、パスの精度などを見せてくれていれば、A代表の競争が激化し、たとえいくつものアクシデントが重なっても代わりがいる万全の体制が築けたのだが……。

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