井岡VS田中、日本人頂上対決 大みそかゴング

今年の大みそかも恒例となったボクシング世界タイトルマッチが行われる。しかも注目の日本人対決が実現した。日本初の4階級制覇王者で世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級王座を持つ井岡一翔(31、Ambition)に挑むのは、ミニマム級からフライ級まで3階級を制した田中恒成(25、畑中)。井岡が貫禄の防衛を果たすか、田中が世界最速のプロ16戦目で4階級制覇を達成するか。
「格の違い、レベルの違いを見せたい」(井岡)「ここで世代交代、文句のないKOで勝ちたい」(田中)。11月の記者会見で両者はライバル心をあらわにした。それだけ気合の入る一戦ということだろう。
どうしても2018年以降の井上尚弥(大橋)の圧倒的活躍に隠れてしまうが、両者の実績も史上に残るものだ。井岡の世界戦16勝は井上を1つ抑えて歴代1位。田中は世界最速タイの12戦目で3階級制覇を達成している。新型コロナウイルス禍のさなか、東京・大田区総合体育館で最大2000人ほど観客を入れて行われるが、本来なら大アリーナがふさわしいカードである。
ともに直近の試合は1年前の大みそか。井岡は終始前に出る戦いで指名挑戦者を判定で退けた。緻密な距離感と駆け引きのうまさを誇ってきたが、スーパーフライ級に上げてからは好戦的なスタイルに変わってきている。一方の田中はKO勝ち。コンディション調整に難があり、試合によってムラが大きいのが玉にきずだったが、アッパーによる鮮やかなフィニッシュで久々に会心の内容だった。
経験と防御では井岡が上だが、スピードと爆発力なら田中に分がありそう。1階級上げる田中は減量苦から解放されて勢いを増すか、それとも井岡のジャブとプレスに押されるのか。田中の仕上がり、出方が試合の行方を左右しそうだ。
「僕にはメリットのない試合」と井岡が言うのは、勝って当たり前という自負の表れだろう。田中も「日本のボクシング界を引っ張ってきた選手」と敬意を表しつつ、「俺にとってはキャリア最大の勝負」と気後れはない。多くの名勝負を生んできた日本人対決の系譜に連なる好ファイトが期待できそうだ。
(山口大介)
日本人同士の好カード続々
ボクシングは7月に興行が再開されたが、海外選手は来日後2週間の自主待機が減量を含む調整で大きな障壁となる上、チケット収入減で経費がかさむため呼びにくい。おのずと日本人同士のマッチメークが増え、井岡対田中以外も好カードが続々と決まっている。
26日には前WBOスーパーフェザー級王者の伊藤雅雪(横浜光)が無敗の東洋太平洋同級王者、三代大訓(ワタナベ)と対戦する。伊藤は国内最強を証明して世界再挑戦をもくろむ。
井岡対田中の前座では元フライ級王者の比嘉大吾(Ambition)がWBOアジア・パシフィック・バンタム級王者のストロング小林佑樹(六島)と拳を交える。
1月14日には、井上尚弥の弟で前世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級暫定王者の拓真(大橋)が、東洋太平洋王者の栗原慶太(一力)を相手に14カ月ぶりのリングに臨む。昨年11月に初黒星を喫し、再起戦でいきなり強敵と相まみえる。