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現役時代から視野を広く 第二の人生でも輝くために

アスリートのセカンドキャリアを題材としたテレビドラマが話題を呼んでいる。かつて日本代表を経験したサッカー選手が突然、サッカーを離れざるを得なくなる。そこで人生の第2ステージとして、スポーツマネジメントという慣れない仕事で悪戦苦闘し、活躍するという内容だ。

アスリートはいつかは現役を引退する。監督やコーチなど競技にかかわり続けていけるのはごく一握り。華々しい活躍をみせた現役時代とのギャップに悩むアスリートは多い。旧知のアスリートが引退後に次々と職を変えて、心を患っているのを間近で見てきた。

人生という時間軸のなかで、アスリートとして輝ける時間はほんのわずかであり、引退後の方が圧倒的に長いことを大体全員、わかっている。にもかかわらず、現役時代から具体的に準備する選手は少ない。

そうやって彼らが競技に専念している時期に、同年代の若者たちはビジネススキルを磨くのだから、そこへ飛び込んでいくのは気が引けるのも確か。アスリートとしてそれまで常に一目置かれてきたというプライドが、第二の人生の選択の幅を狭めている面も否めないだろう。

アスリートは我慢して一つのことに専念できるという「異能」を備えている。私も思い悩むと、プレッシャーや極限の疲労の状態で闘った全盛期を思い出し、「あれに比べたら大したことはない」と考えて大抵の苦労を受け入れている。

スポーツと一般の仕事は違う。競技で培った経験と精神力でなんでも乗り越えられるというのは単純すぎる考えかもしれない。ただ、アスリートが積み重ねた努力がまったくの無駄と切り捨てるのは早い。競技後の人生を豊かなものにするもしないも、やはり現役時代の頑張り次第ではないかと思うのだ。

一方、引退後いつまでたっても競争意識が抜けない人は、自分はスポーツに携わることしかできないと苦しんでいる。そうした人は、競技同様に実社会でも勝ち負けがあるように考えがちだ。

ここでは自分が心から納得できる仕事かという点が重要であり、他者との比較や偏った職業の序列意識で苦しむ必要はない。前述の知人も競技レベルが同程度だったライバルが引退後にメディアに多く出演する姿を目にし、自分と比較して悩んでいた。

子供たちに自分の経験を伝え、遊休農地で農業にいそしんで料理人として幸せそうに過ごす元選手も見てきた。聞けば、軌道に乗るまでは並大抵の努力ではないという。それでも次の夢にも夢中になれたからこそ成功をつかんだのだろう。

現役時代からアンテナを張りめぐらせ、分野の異なる世界の人と積極的にコミュニケーションをとることは思いのほか大切だ。引退を待つまでもなく、社会の中で自身がアスリートとしてどうあるべきか、現役時から知っておきたい気づきを得る貴重な機会になる。

社会常識を知らないと揶揄(やゆ)されることもあるけれど、現代の仕事観は多様化している。むしろ畑違いのアスリートならではの柔軟な発想を生かせる場があるのではと感じている。

(プロトレイルランナー)

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今日も走ろう(鏑木毅)

プロトレイルランナーの鏑木毅さんのコラムです。ランニングやスポーツを楽しむポイントを経験を交えながら綴っています。

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