鹿島アントラーズが地域と取り組む教育事業 - 日本経済新聞
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鹿島アントラーズが地域と取り組む教育事業

まちづくりは人づくりから、企業人を一日講師に

サッカーのJリーグは地域貢献に熱心なクラブが多いことで知られる。昨年、親会社のメルカリとともに茨城県鹿嶋市と地方創生事業を推進する包括協定を結んだ鹿島の場合、協業は教育の分野にも広がっている。

公式パートナーの昭和産業と組んだホームタウン5市の小学生を対象とした食育キャラバンなど、鹿島はこれまでもさまざまな教育事業を行ってきた。昨年度は鹿嶋市内の小学校のコンピューターのプログラミング授業にも関わった。

プログラミング教育は2020年度から小学校で必修になったが、教えられる人は不足気味。鹿島は、その道に明るいパートナー企業の子会社であるキラメックスと連携し、教育現場の悩みの解消に一役買ったのだった。

そんな鹿島の最新の取り組みが「アントラーズキャリアデザイン教室」だ。パートナー企業の関係者を一日講師として中学校に送り、夢を育む生徒の一助になろうというもの。コロナ禍でリモート授業になったが、講師第1号は鹿島の小泉文明社長(メルカリ会長)が務め、鹿嶋市の大野中学(1月22日)、行方市の玉造中学(1月28日)の2年生が受講した。

小泉社長は洋楽やファッションに興味を持った中学時代が人生の出発点で、それが今の仕事につながっていると語りかけた。中学生のときに買ったスニーカーが値上がりし、商売の基本的な構造や自分がよいと思ったものが周りに評価される楽しさを知ったこと、自分の将来を変えられるのは自分の行動だけだが、すべてを一人で解決はできず、励まし成果を喜びあえる仲間の大切さも訴えた。

鹿嶋市教育委員会教育指導課の生井澤雅人係長は「中学2年は心身ともに大きく変化する時期。自己肯定や希望を見いだすのが難しい子もいる。激しく変化する時代に必要な道を切り開く力、生涯にわたって学び続ける態度を身につける上でも、社会への関心をかき立てる上でも、今回の教室は有効と考えた」と語る。

実際、回収したアンケートでの生徒の反応は上々で「すごく心に刺さったようだ」(生井澤係長)。今後も鹿島と関わりの深い企業から、さまざまな経験を積んだ〝先生〟を招く予定だ。

小泉社長は鹿島を「フットボールのチームからライフスタイルも提案できるクラブにしていきたい」と話す。クラブ単独では無理でも、それに見合った企業(人)と行政をうまくマッチングできれば、できることはもっと広がる。

その結果、人々の生活の中に、心の中に、鹿島というクラブがさらに広く深く根を張ることができる。教育事業への踏み込みは、未来のファンの開拓だけでなく「まちづくりは人づくりから」という考えが根本にあるようだ。

(武智幸徳)

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