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米大リーグ、駆け引き続く労使関係 波乱の予感も

スポーツライター 杉浦大介

米大リーグ機構(MLB)は1月末、レギュラーシーズンを154試合に減らすプランを選手会に提示した(写真は2019年のキャンプで報道陣に対応するMLBのマンフレッド・コミッショナー)=ロイター

メジャーリーグはスプリング・トレーニング開始が迫った1月下旬から2月上旬にかけて、リーグと選手会の間で気になる動きがあった。

1月31日、米大リーグ機構(MLB)は選手会に対し、キャンプと開幕を3週間から1カ月程度延期し、公式戦のゲームを162戦から154戦に削減するプランを提出した。その提案によると、スプリング・トレーニングは3月22日スタートで、開幕は4月28日。それと同時に、ポストシーズン出場枠を10から14(昨季は16)に拡大し、両リーグでのDH制度の採用といった鍵になる要素が含まれていただけに、このプランの行方が注目されたのだった。

MLBの試合開催案を選手会は拒否

米国内では依然として新型コロナウイルスの感染拡大が継続している。特にアリゾナ州では感染状況の悪化から、キャンプ施設のあるフェニックス、スコッツデールなどの各市の市長が1月下旬、MLB宛にキャンプ延期の要望書を提出したほど。そんな状況下では、球春の開始を遅らせ、ワクチン確保、観客動員の可能性を膨らませることは非常に理にかなった方向性にも思えたのだ。

ただ、選手会は翌日にこの提案をあっさりと拒否する。2月1日、選手会のSNSアカウントに投稿された声明の概要は以下のようだった。

「開幕を遅らせれば、複数のダブルヘッダーをプレーしなければならなくなる。また、プレーオフ拡大、DH制の両リーグでの採用という一度は退けられた提案を受け入れなければならなくなる。試合数が減っても減俸はされないとはいっても、シーズンのさらなる遅延や中断、中止が起きたときの年俸やサービスタイムの保証がない」

交渉の焦点はプレーオフ拡大の有無

このようなやりとりが健全な形で行われているのであれば、それは適切なことではあるのだろう。雇い主のオーナーと身体を張る選手たちが、より良い日程や報酬を主張し合い、話し合うのは当然のこと。特にパンデミック(世界的大流行)のような難しい状況下ではそれはなおさらだ。

しかし、ここで気になるのは、両サイドのやりとりの焦点が安全問題よりもプレーオフ拡大の有無に集中していると見られていることだ。特にリーグ側は健康面の配慮という主張を前面に出してはいるが、一方で昨季に成功したポストシーズンの試合数増加を今年も実現させたいという意図が見て取れる。ESPN.comが「MLBの懸念材料が本当に選手の安全面であるならば、なぜ日程変更だけではなくプレーオフ拡大の話まで今回の提案に含めたのか」と記したのをはじめ、多くの米メディアがこの点を指摘してきた。

昨季のプレーオフは出場枠を従来の10から16に増やして実施された(ナ・リーグ地区シリーズのブレーブス対マーリンズ戦)=ロイター

プレーオフのテレビ収入はオーナーの取り分になるため、試合数増加はリーグ側に恩恵が大きい。2020年は出場枠をそれまでの10から16に増やしたことで、総試合数も2019年の37から53に増えた。おかげでテレビマネーだけで1億ドル以上の増収があったと見られている。

プロスポーツはビジネスなのだから、オーナー側が利益を主張するのも必然ではある。ただ、安全対策をうたいながら、現行の労使協定を変えて再びポストシーズン拡大に臨もうとしているのであれば、選手会側が不信感を感じるのも無理はない。

選手にもポストシーズンの入場料収入の取り分はあるが、コロナ禍ではどれだけ観客を入れられるか不透明。昨季はプレーオフのテレビ収入もオーナーと選手とが折半するという歩み寄りがなされたが、今年はまだそんな協定の話し合いはない。しかもプレーオフ枠が増え、ポストシーズン進出がより容易になれば、各チームが補強に費やす投資額がさらに減るという推測もあるだけに、選手会側には簡単に受け入れられる提案ではないはずである。

シーズン後に労使協定が満了、ストライキも?

昨年の春から夏にかけて、無観客シーズンの報酬分配などをめぐってオーナー側と選手会側が真っ向から対立したことは記憶に新しい。両者の関係悪化から、12月1日に現在の労使協定が満了後、ロックアウト、ストライキの可能性が高まっているという見方は後を絶たない。今回の両者のやりとりが、最悪の事態を回避するための助けになるものでなかったのは確かだろう。

ともあれ、最新の提案が拒否されたあとで、アリゾナ、フロリダ両州のロックダウンといった緊急事態がない限り、スプリング・トレーニングは2月17日にスタートすることになりそうだ。その後、開幕までにDHやプレーオフ枠の話が蒸し返されるかもしれないが、話し合いは今後も一筋縄ではいきそうにない。

パンデミック の中でもオーナー側と選手会の駆け引きは続く。昨季同様、ナショナル・パスタイム(国民的娯楽)と呼ばれるMLBの周囲には、キャンプ開始前から波乱の予感が漂っている。

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