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大谷翔平、MVP間違いなし?  米記者が強く推す要因

スポーツライター 丹羽政善

すでに、歴史的な偉業を達成した選手に贈られるコミッショナー特別表彰、選手間投票による年間最優秀選手、ア・リーグ最優秀野手など、様々な賞を手にした大谷翔平(エンゼルス)。18日には、両リーグの最優秀選手(MVP)が発表される。

もっとも、大谷の受賞はもはや確実で、満場一致なるか? に注目が集まっている。振り返れば、5月の段階でア・リーグのMVPを予想するオッズは大谷が断トツの人気。その時点ではまだ気の早い話ではあったが、失速するどころか、むしろリードを広げて、シーズンを乗り切った。

では実際、今年の投票権を持っている、あるいは過去にMVPに投票したことのあるア・リーグの記者、ナショナルベースボールライター(特定のチームを取材するのではなく、大リーグ全般が取材対象)らの目に大谷はどう映ったのか。

MVPにふさわしいのは大谷

14人に連絡を取って誰がMVPにふさわしいかを聞いたところ、なんと全員が大谷の名を挙げた。今回、その理由を彼らなりの投票基準とともに紹介していきたい。

まずはじめにリーグMVPの選出方法について触れておくと、各リーグのフランチャイズがある15都市からそれぞれ2名ずつの記者が、1位から10位までを投票。1位が14ポイント、2位が9ポイントで、以下、1ポイントずつ減って10位が1ポイント。そのポイントの合計で一番多い選手が受賞となる。全記者が同じ選手に1位票を投じれば420ポイント。つまりこれが満場一致のケースだ。

投票する2名の記者は各支部のチェアマンが選出し、基本的には持ち回りだが、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズ、ワシントン・ポストなどは、記者の投票を禁じている。

最後にそれぞれの記者の視点をまとめたが、今年のア・リーグMVPレースは大谷とブラディミール・ゲレーロ・ジュニア(ブルージェイズ)との一騎打ちという構図。そのことを前提に彼らの選考基準を整理すると、大きく分けて3つに絞られた。

① 個人成績

記者歴40年以上のジェイソン・スターク記者(ジ・アスレチック)は、「2人の本塁打、長打率、OPSなどは似通っている」とまずは基本的な数字について触れた。

打率はゲレーロの.311に対し、大谷は.257だが、近年は評価対象としては価値が低くなり、wRC+(球場要素などを加味し、打席あたりどれだけ得点を生み出しているか、その傑出度)、 wOBA(その選手が打席あたり、どれだけチームの得点に貢献しているか)、wRAA (リーグの平均的な打者と比べ、どれだけ得点を創出しているか)など、得点の創出能力に関する数値の方が、重視されている。

それらの数値はどうかといえば、いずれもゲレーロが大谷を上回る。wRC+とwOBAは僅差で、wRAAはやや差があるが、やはり全体としてみれば、2人の成績は甲乙つけがたい。よってオフェンスの数字だけを比較すれば接戦だが、「大谷の場合、投手としての数字がここに上乗せされる」とスターク記者。

大谷は130回1/3を投げ、防御率3.18、WHIP(1イニングあたり何人の走者を出したか)1.09。いずれも130イニング以上を投げた投手の中ではリーグ8位で、FIP(被本塁打、与四球、奪三振など、投手の能力のみでコントロールできる数値から換算)3.51はリーグ10位。規定投球回数には達していないものの、多くのデータが、大谷はリーグでも10本の指に入る投手であることを証明している。

よってLAタイムズ紙のマイク・ディジオバンナ記者も明言するのである。

「二刀流といっても、もしも大谷が投手としては非凡でも打者としては平凡なら、あるいは、打者としては非凡でも、投手としては平凡なら、決してMVPは獲れなかっただろう。しかし、ともに非凡であり、彼以外にMVPは考えられない」

② 貢献度

勝利にどれだけ貢献したか。その年のチーム成績はどうだったのか?

ESPNなどで長く記者を務めたジム・ケイプル記者は、「MVPというのはかつて、チームの勝利に貢献した選手という前提があった」と指摘し、記者歴46年というバリー・ブルーム記者も「MVPはチームの勝敗と連動するケースが少なくなく、それが受賞の原則だった」と慣例を説明する。

その価値観を物差しとするなら、ブルージェイズはプレーオフこそ逃したが、シーズン最終日までポストシーズン出場を争っており、ゲレーロJr.はその原動力となった。一方のエンゼルスは早々にプレーオフレースから離脱。有利なのは断然、ゲレーロJr.だ。

よって、 「私のような古いタイプの記者には抵抗がないわけではない」とブルーム記者は言うものの、「これだけのパフォーマンスを見せられたら、もうチームの成績など関係ない。大谷は間違いなくMVPだ」と感服した。

その一方でこういう視点もある。シアトル・タイムズ紙で大リーグのナショナルライター/コラムニストを務めるラリー・ストーン記者は、「エンゼルスがプレーオフ争いから早々に脱落したことをマイナスポイントに挙げる人がいるかもしれない」と、否定的な見方に理解を示しつつも、独自の基準を披露している。

「私のMVPの定義はその所属チームにとって〝最も価値のある選手〟であり、リーグ全体を見渡しても、大谷以上に価値のある選手はいない」

③ 二刀流の歴史的価値

この3つ目こそ今年のMVPレースを読み解く上でもっとも重要な要素で、成績や慣例は補足でしかない。

5月、ニューヨーク・タイムズ紙に大谷の原稿を寄稿したスコット・ミラー記者も歴史的価値を重視する一人である。

「大谷は100年に一度というか、我々が今までに見たことのないことを年間通してフィールドで表現した。まさに歴史的シーズンだった」

他にも多くが、そこを根拠に挙げている。

「大谷が今季成し遂げたことは、前例がない」(アンソニー・マッキャロン記者)

「ベーブ・ルースも二刀流選手だったが、期間は限られるし、100年前の野球とではレベルが違う。おそらく今の方が二刀流として結果を残すことは難しい。歴史上、こんな選手はいなかった」(ダン・ハイエス記者)

「評価そのものはそれを測る物差しがない。投打、どちらでもMVPクラスなのだから彼には新しい評価指標が必要だ」(ジェフ・パサン記者)

米全国紙「USAトゥデー」でナショナルベースボールライターを務め、過去30回以上のMVP投票歴を持つボブ・ナイチンゲール記者は、先ほどの要素も絡め、こう総括した。

「大谷は"歴史に残るような"シーズンを送った。大谷にとって不利な要素があるとしたらそれは、エンゼルスがプレーオフ争いをできなかったこと。MVPは本来、価値のある選手という賞であり、ベストプレーヤーではない。しかし大谷はその不利をも跳ね返し、地滑り的勝利を収めるだろう。おそらく、投票権のある30人の記者の内、少なくとも25人は彼を1位に投票するのではないか」

もちろん、三冠王に迫ったゲレーロJr.に対する評価も高く、その点でも記者らの評価は一致するのだが、こう表現する記者も少なくなかった。

「ゲレーロは不運だった」

記者歴43年のジョン・ヒッキー記者も 「通常のシーズンであればゲレーロJr.が、満票でMVPを受賞していたかもしれない」とそのことを示唆する。

もっとも、過去に同じような例がなかったわけではない。

1941年、テッド・ウィリアムズ(レッドソックス)は打率.406を記録。さらに37本塁打を放ちホームラン王になった。しかしながら、その年のア・リーグMVP(最優秀選手)は、ジョー・ディマディオ(ヤンキース)が受賞。ディマジオはその年、56試合連続安打を達成し、ヤンキースのリーグ優勝に貢献したことで、ウィリアムズを上回った。

おそらく今年、ゲレーロJr.が三冠王を獲ったとしても、大谷にはかなわなかったのではないか。ただ、不運な選手としてウィリアムズの仲間入りを果たし、ファンの記憶に刻まれるのだとしたら、それもある意味、名誉なことだといえるのかもしれない。

14記者の視点まとめ

●アンソニー・マッキャロン(元NYデイリーニュース ヤンキース番記者 現フリーランス 記者歴21年)

「大谷が今季成し遂げたことは、前例がない。投票する人はゲレーロJr.が三冠王に迫る活躍をし、チームが最後までプレーオフ争いをした貢献度を考慮するかもしれないが、二刀流をとしての実績はそれを上回る」

●ダン・ハイエス(ジ・アスレチック ツインズ番記者 記者歴15年)

「ベーブ・ルースも二刀流選手だったが、期間は限られるし、100年前の野球とではレベルが違う。おそらく今の方が二刀流として結果を残すことは難しい。歴史上、こんな選手はいなかった」

●ラベール・ニール(スタートリビューン 大リーグナショナルライター 記者歴32年)

「2018年に(米国に)来たとき、彼が本当に二刀流で成功するなんて考えられなかった。しかし、彼は見事にそれが可能であることを証明してみせた」

●ジェフ・パサン(ESPN 大リーグナショナルライター 記者歴18年)

「評価そのものはそれを測る物差しがない。投打、どちらでもMVPクラスなのだから彼には新しい評価指標が必要だ」

●マイク・ディジオバンナ(LAタイムズ 大リーグナショナルライター 記者歴40年)

「もしも大谷が投手としては非凡でも打者としては平凡なら、あるいは、打者としては非凡でも、投手としては平凡なら、決してMVPは獲れなかっただろう。しかし、ともに非凡であり、彼以外に、MVPは考えられない」

●ジョン・ヒッキー(元アスレチックス、マリナーズ番記者 現フリーランス 記者歴43年)

「通常のシーズンであればゲレーロJr.が満票でMVPを受賞していたかもしれない。しかし、100年に一度の選手という――大谷の存在はゲレーロの勝ち目を限りなく下げている」

●ジム・ケイプル(元ESPN 大リーグナショナルライター 現フリーランス 記者歴32年)

「MVPというのはかつて、チームの勝利に貢献した選手という前提があった。最近はその年のもっとも優れた選手に贈られる賞という認識になった。価値観がかつてのままであれば、ゲレーロがMVPにふさわしいといえる。しかしながら、後者の価値観であれば、やはり大谷ということになる。仮に、70年代の投票でも大谷が慣習を覆した可能性はある。それだけ二刀流の価値は他を圧倒する」

●ジェイソン・スターク(ジ・アスレチック 大リーグナショナルライター 記者歴40年以上)

「今年のア・リーグMVPレースに関しては、本が書けるぐらいだ。まず、ゲレーロJr.のことも、高く評価されるべきだ。オフェンスの数字もさることながら、チームが最後までプレーオフ争いに加わる原動力となった。しかし、それでも勝者は大谷だろう。まず、大谷とゲレーロのオフェンスの成績を比べた場合、本塁打、長打率、OPSは極めて似通っている。しかし大谷の場合、投手としての数字がここに上乗せされる。しかも、チームのエース。いや、リーグでも屈指の投手。どれだけ加点したらよいのか分からない。ゲレーロは不運としか言いようがない」

●ライアン・ディビッシュ(シアトル・タイムズ マリナーズ番記者 記者歴15年)

「大谷が獲るべきだ。彼は1人で打線の核を担い、その責任を全うした。投手としては柱のいない先発陣の中で、エースとして引っ張った。もう、ありえない世界だ。しかも、走塁も非凡。MVPは彼以外に考えられない」

●ラリー・ストーン(シアトル・タイムズ 大リーグナショナルライター/コラムニスト 記者歴42年)

「対抗馬としてはゲレーロだが、もしも彼が三冠王を獲ったとしても、結果を覆すことができたかどうか。エンゼルスがプレーオフ争いから早々に脱落したことをマイナスポイントに挙げる人がいるかもしれない。しかし、私のMVPの定義はその所属チームにとって〝最も価値のある選手〟であり、リーグ全体を見渡しても、大谷以上に価値のある選手はいない」

●スコット・ミラー(元CBSスポーツ 大リーグナショナルライター  現在はフリーランスとしてニューヨーク・タイムズなどに寄稿 記者歴33年)

「大谷は100年に一度というか、我々が今までに見たことのないことを年間通してフィールドで表現した。まさに歴史的シーズンだった。2人の候補がいて、同じような成績だった場合、最後はチームの成績が左右するということがある。その点で大谷はゲレーロJr.に劣るが、そのハンディを考えても大谷は安全圏にいる」

●バリー・ブルーム(スポーティコ 大リーグナショナルライター 記者歴46年)

「MVPはチームの勝敗と連動するケースが少なくなく、それが受賞の原則だった――例えば、88年のカーク・ギブソン(ドジャース)のように。 しかし今や、トップパフォーマーが選ばれるようになった。私のような古いタイプの記者には抵抗がないわけではない。しかし、これだけのパフォーマンスを見せられたら、もうチームの成績など関係ない。大谷は間違いなくMVPだ」

●ボブ・ナイチンゲール(USAトゥデー ナショナルベースボールライター 記者歴35年)

「ゲレーロは素晴らしいシーズンを送った。そこは否定できない。しかし、大谷は〝歴史に残るような〟シーズンを送った。大谷にとって不利な要素があるとしたらそれは、エンゼルスがプレーオフ争いをできなかったこと。MVPは本来、価値のある選手という賞であり、ベストプレーヤーではない。しかし大谷はその不利をも跳ね返し、地滑り的勝利を収めるだろう。おそらく、投票権のある30人の記者の内、少なくとも25人は彼を1位に投票するのではないか」

●デイブ・シェイニン(ワシントン・ポスト 大リーグナショナルナショナルライター 記者歴24年)

「100%、彼が受賞することに疑いはない。ゲレーロは不運だ。数字的にもチームの成績的にも、例年なら本命だろう。しかし大谷のおかげで、すっかり影が薄くなってしまった。本来なら今ごろ、スポットライトを浴びていてもおかしくないのに。それだけ大谷が、飛び抜けているということ」

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