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環状2号線「五輪ロード」が映す、東京の現在と未来

東京五輪・パラリンピックの選手村と主要な競技会場を結ぶ都道環状2号線が「五輪ロード」として機能し始めた。一般車両の通行を制限し、大会車両を使った輸送訓練が行われている。五輪の開幕まで2週間。臨海部から見える開催都市・東京の風景はコロナ下の現状と、コロナ後の未来を映し出している。

テニス、体操、バレーボールなどの競技会場が集まる江東区の有明エリア。「会場が五輪のマークで飾られると、本当にやるのだという感じが出るね」。新交通ゆりかもめ有明テニスの森駅にいた男性は、駅前に広がる自転車BMXなどの競技会場「有明アーバンスポーツパーク」を見渡しながら話す。

2020年3月に東京大会の1年延期が決まり、準備がストップしたことで競技会場は一時、雑草が伸び放題だった。今は雑草が駆除され、BMX競技を表現する巨大なピクトグラム(絵文字)の装飾もお目見えした。会場内では大会スタッフが動き回っている。

有明アーバンスポーツパークの前から都心方面に延びる五輪ロード。選手村がある晴海エリア、中央卸売市場跡地を活用した大会の車両基地がある築地エリアなどを結ぶ大会の主要な輸送路だ。大会車両で選手村や車両基地、各競技会場などを巡る輸送訓練が始まっている。

晴海に向かって進むと、すぐに豊洲市場に着く。選手村周辺の五輪ロードは、東京パラリンピック後の9月12日まで一般車両の通行止めを実施中。市場関係車両も通行を大幅に制限されている。市場内にある寿司大の漆原訓店長は「交通規制で市場周辺は朝の渋滞が深刻。その影響で朝は客足が減っている」と言う。

沿道では、五輪後を視野に入れ、そしてコロナ後もにらみながら都市開発が進んでいる。

清水建設は豊洲市場の隣に約600億円を投じ、ホテルやオフィスなどの複合施設を整備、9月に開業する。来春オープン予定のホテルは大浴場やプールを備えており、観光需要が回復すれば、市場の集客力をテコにして街のにぎわい創出を担う。バス高速輸送システム「東京BRT」の停留施設を整備し、都心の新橋や虎ノ門に直行できるようにもする。

マンション開発も加速している。選手村がある晴海に隣接する勝どきエリアでは三井不動産系のデベロッパーなどが地上58階建ての超高層マンション「パークタワー勝どきサウス」の販売を9月に開始する。入居開始は2024年春の予定。販売を休止している選手村を活用するマンション群「晴海フラッグ」も11月には販売を再開する。こちらも24年春には入居できるという。

テレワークが浸透し、郊外の暮らしが見直されているとの指摘もあるが、三井不動産レジデンシャルが昨秋に販売を開始したタワーマンション「パークタワー勝どきミッド」は3億円超の物件を含む507戸すべてが契約済みとなった。「書斎付き物件など、コロナ下での新しい生活様式に対応したプランが好評だった」と説明する。

勝どき、晴海といった人気エリアを抱える中央区の人口は東京大会の開催が決まった8年前に12万人だったが、現在は17万人にまで増加している。大会後、選手村は人口1万2000人の街に生まれ変わり、マンション開発も進むため27年には20万人を超えると予想される。

五輪ロードを見ていくと、東京大会は臨海部の都市開発と一体だったことが分かる。官民挙げての街づくりは進んだ。大会後は交通、医療、教育などの生活インフラ整備が急務となりそうだ。

(山根昭、近藤康介)

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