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久々の函館、左回りの新潟… 2021年夏の「小さな冒険」

昨夏の出張シーズンは確か、もう少し外食とかもできたはずだった。今年はほとんどの時期が緊急事態宣言中で、現地到着が少しでも遅くなれば、もう食事もままならずコンビニのお世話になることがほとんどだった。

中央競馬実況中継の仕事をする中で一番の楽しみが、出張競馬で夜の街に繰り出すこと(もちろん健全バージョンである)。京都競馬場の全面改修のおかげで出張が増えて、大きな期待を抱いていた関係者は多かったはずだ。中には夜の街には興味もなく、ひたすら競馬を見続け、夜はホテルで競馬新聞を読み続けることに楽しみを見いだしていた人もいたようだが……。残念ながら今年の出張シーズンは、終わるのが本当に待ち遠しく感じられるほどだった。

そんな中、幸運にもイレギュラーな出来事が2度あった。函館競馬場、新潟競馬場への出張である。別に出張先で宴会があるわけでもないが、普段は行かない街と競馬場に行けたことは、自分にとって大きな刺激になった。

函館でのサラブレッドの重賞を初実況

まず7月30日から8月1日にかけて、函館に出張した。昨年の札幌に続き、西日本の競馬がオリンピックの影響で休催となったため、機会に恵まれた。函館競馬場は20年以上訪れていなかった。関西の競馬場でいつもモニター越しに見ていた函館山は、直接見ると本当に絶景だった。私自身、函館でサラブレッドの重賞競走をしゃべったことはなく、今は姿を消したアラブのタマツバキ記念しか経験はなかった。この話は多くの関係者にあいさつする際、格好の「つかみ」になった。

昨年に続いてクイーンステークスの実況を担当し、函館競馬場で初めてサラブレッドの重賞をしゃべることができた。実況アナウンサーにとって、こういう経験の一つ一つは、ジグソーパズルのピースが埋まっていくような小さな喜びに感じられるのだ。

函館での仕事が終わった後、幸か不幸か函館から大阪に戻る飛行機が午後2時台にしかなく、月曜まで延泊することになった。月曜は飛行機の時間まで、ひたすら函館市内を誰に会うこともなく1人で散策した。ぶらぶらと立待岬まで歩いたのだが、その風景にも本当に癒やされた。

そして8月20日から22日は新潟競馬場にも出張で訪れた。新潟は1999年まで右回りで、私は右回りの時代しか知らない。21日(土曜)の朝、新潟競馬場に向かう道すがらの風景は、うっすらとではあるが覚えがあった。競馬場に到着しての印象は「なんじゃこれ!」である。かつて見た風景とは一変していた。右回りから左回りに変わったのだから、当たり前といえば当たり前だ。何しろ新潟で最後にしゃべった重賞競走は、マイヨジョンヌが勝った新潟大賞典(97年)だから、どれほど空白が長かったかがお分かりいただけるだろう。この件も関係者へのあいさつの際、いい「つかみ」になった。

今年は関西エリアでも中京開催という左回りを多めに経験できていて、極端な違和感はなかった。回りの問題は侮れない。阪神と京都のみを主戦場とするテレビ局のアナウンサーは、コースに向かって左が3~4コーナーではなく1~2コーナーということが身に染みついていて、中京で実況すると一瞬、勝負どころで3コーナーを2コーナーといい間違えそうになったと聞く。新潟競馬場でもっと特徴的なのは、やはり芝直線1000メートルのレースだ。

新潟の直線競馬 緊張の初実況

実は私は今夏まで、弊社で唯一、直線1000メートルを実況した経験が全くないアナウンサーだったのだ。今回の新潟出張が決まってからは、何度もこのコースでのレースのVTRを流し、実際に服色の塗り絵も準備して実況のシミュレーションをした。直線1000メートル戦では、馬が外柵沿いに集まる。ところが、分かってはいても放送席に近い外ラチ沿いをついつい「内」と言いたくなってしまうのだ。今回は土曜日に直線のレースが一つもなく、ぶっつけ本番で臨むことになった。

結果、担当した閃光(せんこう)特別はあっという間に終わった。55秒4での決着。懸念していた内外に関しては、外ラチに寄っていく馬を「内にコースを……」と表現した部分があり、一筋縄ではいかない難しさを感じた。ただ、事故無く終えることができて本当にホッとした。久々に感じた種類の緊張感であった。

今回、新潟競馬場の出張でもう一つ経験したこと。新潟は同時開催の北海道と違い、いわゆる本場開催のため、実際放送席で司会進行をしながら、第一放送(東日本地区を担当)の現場を色々と、身をもって感じることができた。ラジコのタイムフリーで聴いただけでは分からない点も多かった。環境の違いもあり、第二放送(西日本地区を担当)の現場に全てをフィードバックすることは難しいのだが、少しずついい部分は取り入れていきたいと感じられたのは収穫だった。とにかく、今夏の2度のイレギュラーな出張はいい刺激になった。

この年齢(57歳)になり、第二放送の形態に慣れきっていた自分にとって、今夏の経験はちょっとした冒険だった。西日本では中京が3日で終わり、9日からは開催が阪神に移って秋競馬も本格化した。少しばかり違った気分で臨めている。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 檜川彰人)

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