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全英オープンが帰ってくる ゴルフ界、真の再始動へ

ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ

ローリーは2年ぶりに開催される全英オープンで連覇を目指す=AP

昨年、新型コロナウイルスの感染拡大で、ゴルフのメジャー大会では唯一開催されなかった全英オープンが、来週15日から英国南東部にあるロイヤル・セントジョージズGCで行われる。

全英オープンが最後に行われた2年前、世界は今とはまるで異なっていたが、ゴルフ界も同様に様変わりした。2019年のマスターズ・トーナメントを制し、11年ぶりにメジャーでの通算勝利数を更新したT・ウッズ(米国)は、世界ランキングを5位まで上げて全英オープンに乗り込んできた。久々に勢いを感じたものの、今は、今年2月に起こした交通事故のリハビリ中。復活のめどが立たないままだ。

今のトーナメントを盛り上げるC・モリカワ、M・ウルフ(ともに米国)、V・ホブラン(ノルウェー)の3人は、デビューしてまだ間もないルーキーだった。B・デシャンボー(米国)はすでに世界ランキングトップ10に入っていたが、今より50ポンド(約22.7キロ)も痩せていた。

新型コロナウイルスは、歴史の節目をも変えた。本来、今年は第150回の記念大会で、セントアンドルーズのオールドコースで実施されるはずだった。ところが昨年、第2次世界大戦以来(1940~45年)というキャンセルを余儀なくされたことから、150回大会は来年に延期。オールドコースでの開催も来年に延期されている。

結果的に、今年の全英オープンは、昨年の大会が行われる予定だったロイヤル・セントジョージズGCでスライドして行われるが、英国南東部サンドイッチにある同コースは、ロンドンからわずか90マイルという立地ながらこれまで、その理不尽なほどの難度も相まって、人気コースとはいえなかった。

全米プロゴルフ選手権で劇的な勝利を飾ったミケルソンは余勢を駆って全英制覇を狙う=ロイター

ただ、今年は様相が異なる。普段はさほど歓迎されない客でも、久々となれば、負のイメージは薄れる。あまりいい例えではないかもしれないが、世界中のゴルフファンが、全英オープンそのものが帰ってくることを待ち望んでいたのだから、もはやコースうんぬんの話でもないよう。

ではなぜ、全英オープンがここまで多くの人に愛されるのか。マスターズ・トーナメントは、息をのむほどのコースの美しさと高速グリーンで知られる。全米オープンは、フェアウエーが狭く、深いラフがトッププロを苦しめる。全米プロゴルフ選手権は、四大大会の中では一番通常の大会と雰囲気が似ているが、全英オープンには、全英オープンにしかないものが、やはりある。

地面は硬く、ボールはどこまでも転がっていく――ときに、まったく望まない方向へ。7月に開催されるものの、どんよりとした空、強い風によって寒々しく映り、まるで季節は1月のよう。それらは一見、ネガティブな要素でもあるが、自然そのままに近い地形、気ままな天候は、ゴルフが誕生したときから、ゴルファーが向き合ってきたもの。年に一度、人々はそうしたゴルフの原点に触れる。それがファンだけではなく、選手さえ魅了してやまない大きな理由なのかもしれない。

昨年、全英オープン以外は時期をずらして実施にこぎつけた。それによってゴルフファンは日常を取り戻したように錯覚したが、全英オープンがなかったことで、やはり何かを欠いた。今回、全英オープンが戻ってくることで、世界のゴルフ界の時計も再び動き出す。

そんな舞台にふさわしい見どころもいろいろ。前回大会を制したS・ローリー(アイルランド)は、今年の全米プロゴルフ選手権で4位タイに入るなど好調で、連覇を狙う。

モリカワは今季、全米プロゴルフ選手権と全米オープンでトップ10入りするなど好調だ=ロイター

今年のマスターズ・トーナメントで日本人として初めてメジャー大会を制した松山英樹は、先日、新型コロナウイルスへの感染が判明し出場が微妙だが、全米プロゴルフ選手権で劇的な勝利を飾ったP・ミケルソン(米国)、全米オープンで逆転勝ちを飾ったJ・ラーム(スペイン)らはもちろん、余勢を駆って年間2つ目のメジャータイトル獲得をもくろむ。

東京五輪出場を決めたモリカワは今季、全米プロゴルフ選手権と全米オープンでともにトップ10入りし、その勢いのまま、歴史に名を残そうと貪欲だ。メジャー大会では目立った結果を残せていないホブランだが、彼もまた五輪出場を決め、全英オープンで好結果を残し、そのままノルウェーの人々の関心が高い五輪でメダル獲得を――というシナリオを描く。

デシャンボーは、ドーバー海峡からの風をパワーでねじ伏せようと、手ぐすね引いている。R・マキロイ(英国)は、2014年の全米プロゴルフ選手権での優勝を最後に、四大大会の勝利から遠ざかったまま。R・ファウラー(米国)は、なんとか本来の姿を取り戻そうと、必死だ。

秘める思いはかくも様々だが、共通するのは優勝者に贈られるトロフィー「クラレットジャグ」をその胸に抱きしめることか。一度は手に――。そんな選手らの願い、そして待ち望んだファンの期待とともに、全英オープンが帰ってくる。

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