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大谷、投打とも試行錯誤の2020年 言葉で振り返る今季

スポーツライター 丹羽政善

 投手で故障後は打者に専念したが不振を極めたエンゼルス・大谷=共同

前進か、後退か。

本格的な二刀流復帰が期待された大谷翔平(エンゼルス)の2020年だったが、投手としての出場はわずか2試合で幕を閉じ、打者としても結果を残すことができなかった。

「その分、伸びしろがあるのかなと思っている」と大谷はプラスに捉えるが、「体への負担が大きすぎる。どちらかに絞るべきでは?」という声が聞こえてきたことも確か。この結果を、そうした声を大谷はどう受け止め、来季を見据えているのか。

大谷の2020年の言葉から。

春はボールを持った右手の位置を意識

2月のキャンプ序盤、ある程度の強度で投げられるようになった大谷は、フォーム修正に時間をかけた。例えば、テークバックのとき、左足が地面に着地する瞬間にボールを持った右手が右ひじよりも上にあるかどうか。その方がひじへの負担が少ないとされ、チームからも意識するよう伝えられていた。大谷はキャッチボールでも1球1球、ビデオで投げる様子を撮影し、位置関係を確認していた。

「自分がここを通したいって思っている腕のルートだったりとか、タイミングだったりとか、ある程度大げさにやってもあんまり見栄え的には変わっていなかったりとか…。客観的に見ているものと主観ではちょっと違っていたりするので、そういうのはやっぱり、見てもらったり、撮ったりしないとわからない」

ルートを通すというのは、大谷独特の表現だ。バットの軌道に関しても、同様の言葉を使う。故障のリスクが低い投げ方が必ずしも投げやすいフォームとは限らないが、ズレがあるときはどう折り合いをつけるのか? そんな問いにもこう答えた。

「それは、バッティングでもピッチングでも、合う、合わないがある。例えば、腕を通す位置だったりとか、ルートだったりとか。(合う人には)それでいいけど、全然タイミングが遅れるんだったら、それは良くないルートなのかな、というか。いいタイミングで(腕を)上げられるんだったら良いと思いますけど、それを今やってできるかといったら、(すぐに)できる人もいると思いますけど、合った人はできるし、合わない人だったらすぐにはできないので、そういうところで折り合いはつけないといけないですし、言われたらやってみるのも一つの手ではないかなと思います」

キャンプ中断で調整プランに狂い

3月上旬の段階ではまだしっくりこなかった新しいフォーム。それでもキャンプ中断前の3月11日、雨の中でブルペンに入ったときにはある程度の手応えをつかみ、次へのステップが視界に入った。

「ブルペンのレベルでは意識してできる。あとはバッターに集中したときに(できるか)。そういうところまで落とし込めるような練習をする必要はある。試合のレベルで投げるときにも、基本的に緩やかに順序よく加速させていけるかどうか」

 7月26日のアスレチックス戦に先発し、2季ぶりに投手復帰した大谷。5失点で1死も取れず負け投手になった=共同

そこからは、実戦を重ねることで運動の自動化を目指したが、翌12日にキャンプの中断が決まると、順調に消化していたリハビリプランが大きく狂った。

7月、キャンプが再開。もちろん紅白戦に登板して開幕に備えたものの、相手チームとの対戦は7月26日の復帰登板が初めてだった。徐々に体を慣らしながら100%に近づけていくというプロセスを省き、いきなり出力を上げざるをえなくなった。

「タイミングも大事ですけど、順番を守って投げるっていうのがすごい大事かなと思う、(フォームなど)メカニックの中では。強度が上がってくると難しいんですけど、1球1球、再現性を高めていければ」

登板前日にそう話した大谷だったが、いきなりの実戦で、順番を守って投げるーーという余裕はなく、最後のチューンアップを省かざるを得ない影響を否定しなかった。

「タラレバなので、それはわからない。でももちろん、同じ感じではないと思う。本来なら何回かマイナーで5〜6回投げて、どうなのかな、という段階」

当初は今季をこう位置付けていた。

「まずはリハビリの過程を含めたフィジカルの状態次第。その中で出た課題を今年中に改善していきたい。もちろん、一昨年に出た課題もその中で改善できればベストですけど、まずはフィジカル面が一番かなと思う」

しかし、その肝心のフィジカルでつまずき、2試合目の先発で右前腕屈筋回内筋群を痛めると、その後はキャッチボールさえ制限され、フォームの修正も仕切り直しとなった。

打撃の基本は「立ち方、構え」

一方の打撃は、シーズンを通して「立ち方」「構え」「距離感」といった言葉を何度も口にした。メジャー初のサヨナラヒットを打った9月4日にもこう話している。

「ピッチャーがよりクリアに見えてましたし、距離感の詰め方だったりというのも良かった。ヒットが出たっていうよりは、見え方というか、打席での感じが、前の打席もそうでしたけど良かった」

大谷にとって、打席に立った時のボールの見え方、距離感は、打撃の根幹をなすもの。その前提として大切なのは「立ち方、構え」だという。

「そこから始まる。みんな簡単そうに見えるかと思うんですけど、同じように毎回毎回、立っていくっていうのはすごい難しい。そこは何回やっても難しいかなと思います」

それはキャンプ序盤からずっと意識してきた課題でもあった。2月23日、オープン戦を前にまずは実戦で何を確認したいかと問われた大谷は、「ボールとの距離感」と話している。25日のオープン戦初打席では死球。原因も距離感だった。

「反応が遅かった。距離がいまいち取れてない。見え方というか、距離感がちょっと遅いのかなとは思うので、(本来なら)よけられる球でした」

この時点では、打席を重ねることで徐々に距離感が合っていく、と考えていたよう。実際、その日の3打席目にはさっそく手応えがあった。

「最後の打席は、僕的にはしっかり捉えているつもり。ツーシームでしたけど、上の方に当たってゴロになってしまっている。最後になるにつれて距離感は良くなった」

キャンプも中盤に差し掛かった3月6日の試合後にも、こう感覚を説明している。

「だいたい構えで決まるかなと思っているので、そういう意味では(きょうの打席は)良かったですね。その後の動きも悪くなかったですし、際どいコースもしっかり見ることができました」

 投手で故障後は打者に専念したが不振を極めた大谷=共同

しかし、シーズンに入ると、その構えがなかなか決まらなかった。よって距離感もつかめない。開幕1カ月がたっても試行錯誤を繰り返した。

「(不振の要因は)いろいろあると思いますけど、タイミングと距離感がずれていて、良くなったり悪くなったり。良くなった中でもヒットが出なかったり、その中で難しさがある」

9月に入ると、不振からスタメンを外れることもしばしば。その間に取り組んだのも構えだった。

「構えているときの全体の見え方が最初なので、そこを取り組みました。まだまだ、出来ている部分、出来ていない部分があるので、それはもっともっとこれからやることはあるかなと思います」

9月23日、パドレス戦で左投手から今季初本塁打。

「きょうはけっこういい形で捉えているかなと思う。2打席目も。3打席目の三振もボールの見え方としては悪くないと思っているので、全体的に良かったかなとは思っています」

久々に充実感を漂わせ、ようやく構えがしっくりしてきたーーとも聞こえたが、異例のシーズンはその4日後に幕を閉じた。

二刀流継続?「やれと言われたら」

投打ともに苦しんだシーズンとなったが、それに伴って増えたのが二刀流継続に関する質問だった。体力的な負担が投手としての故障を招き、ひいては打撃にも影響したのではないか。投手としての登板が今季絶望となると、今後も二刀流を続けたいか? と度々聞かれている。

「やれと言われたら……野手をやれと言われたらやりますし、ピッチャーやれと言われたらやりますけど、どちらも出来るのであれば、もちろんその可能性があるなら、やりたいなと思います。そのことを含めて、エンゼルスにとってもらったので、まずは投げられるように、もう1回、頑張りたい」

投手を諦めようと思ったことは? そんな質問さえ投げかけられた。

「去年の感じとも違いますし、長引くような感じはないのかなと思うので、リハビリの過程での炎症という感じかなと思います。(二刀流として復帰できるかどうかは)どれだけ投げられるか次第」

 オンラインのインタビューで今季を振り返るエンゼルスの大谷=共同

その後、大谷が試合前に一塁や外野の守備練習を始めると、投手断念か?という憶測も飛び交った。9月に入ると、来年100%投げたいと考えているのか?復帰できる自信は?などと聞かれ、シーズン最終戦前の取材ではやや殺伐としたやりとりもあった。

——二刀流としてフィニッシュできないシーズンが続いているが。

「その通りかなとは思いますね」

——二刀流を続けたいという気持ちは変わらないのか?

「前にも言った通りかなと思います」

それぞれの言葉の裏にあるのは、自信か、不安か。

米「TIME」誌は最近、その表紙で2020という数字に大きくバツを付け、「史上最悪の1年」と書き添えた。

大谷なら、どう書き添えるのだろうか。

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