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現地に行けずスタジオで競馬実況 新たな挑戦に可能性

クイーンエリザベスⅡ世カップで優勝したラヴズオンリーユー=Hong Kong Jockey Club提供

2021年の前半を振り返るには早すぎるが、今年に入ってから色々と新たな経験をする機会に恵まれた。今回は筆者が個人的に印象に残っている競馬シーンとともに振り返ってみたい。

2021年最初の実況はばんえい競馬

私たちラジオNIKKEIのアナウンサーは中央競馬の全レース実況だけでなく、地方、海外の実況もたびたび担当している。だが、昨年末から今年にかけては事情が違った。北海道・帯広市で行われているばんえい競馬の中継を放送することになったのだ。ラジオNIKKEIの前身であるラジオたんぱの時代も含めて、史上初の試みだった。だが、ばんえい競馬中継のノウハウはないに等しかった。アナウンサー同士で知恵を出し合い、どのような番組にするか、意見交換した。結局、初心者でも分かるような内容にしようと、ばんえい独特の用語やレースの見方などを、解説者の方に教えていただきながら進めていく番組内容となった。

番組は現地の帯広ではなく、東京のスタジオからの中継だった。メインレースに出走する有力馬の騎手へのインタビューも電話をつないで行った。ばんえい競馬の騎手にインタビューするのは初めてで、とても良い経験だったし、騎手の皆さんが協力的だったのが何よりだった。実況は映像を見ながら行った。ばんえい競馬はスピードがゆったりしていて、画面を見ながらでも難しくないと思われるかもしれないが、何しろ実況したことがないので、別の競技をしゃべるような感覚だった。

準備も決して楽ではなかった。筆者が担当したのは1月3日の「天馬賞」。これが今年最初の実況となった。メムロボブサップが4~5歳の三冠を達成するかどうかに注目が集まった。結果は同馬の完勝で、大一番での強さが光った。その強さのおかげで実況しにくいレースにならなかったのは幸いだった。第2障害をクリアしてからはひたすら引きの画面で一頭一頭の馬は小さく映るので、そこは要注意だったが、何とか終えることができた。実況しながらもじっくりレースを見られるのがばんえい競馬の良さ。実物を見ながら実況したらもっと楽しいのだろうと思わせる瞬間だった。

高知競馬の中継も史上初

高知競馬の中継番組スタジオ

3月16日にも新たな試みがあった。高知競馬の中継である。これも会社としては初めてだった。筆者は毎週、高知競馬の予想番組を担当しているため、その流れで司会進行をすることになった。普段の予想番組は、共演者の軽妙な語り口に乗せられて、筆者もテンションが上がってしまい、普段の自分とはまるで別人格になってしまうようなパターンを繰り返している。毎回これで良いのかと後悔してしまうのだが、今回の中継も出演者は予想番組と同じ方で、同じテンションを半ば要求されているようなものだった。

やはり今回も、そういう心持ちで臨まなくてはならない……。ならない、ということもないのだが、リスナーの気持ちを考えると、その方が良いと思って中継に臨んだ。

当日のメインレースは中央交流重賞の黒船賞。高知最大のレースである。恥も外聞も捨ててテンションを上げ、番組を盛り上げようと必死だった。あっという間に時間が過ぎた。優勝は2番人気の中央馬テイエムサウスダン。2着スリーグランドに8馬身差の圧勝だった。勝利騎手インタビューで岩田康誠騎手が発した「(ゴール前は)風になりました」というコメントはインタビュー史上に残る名言と思う。

中継自体はなりふり構わずやらせてもらったので、非難が殺到したらどうしようと心配していた。結果的に、スポンサーの苦情はなく、リスナーの皆様からも上々の反響をいただいてほっとした。おかげで5月3日には地元重賞の「福永洋一記念」で、中継第2弾も担当することになり、また羽目を外してしまった。

初の海外競馬実況で得たもの

4月25日には、今まで経験したことがなかった海外競馬の実況も担当した。海外は馬番とゲート番が異なる国・地域があるかと思えば、複雑な勝負服や長い馬名も多く、とっつきにくいイメージがあって食わず嫌いでいた面がある。だが、仕事とあっては避けて通れない。腹を決めて臨んだ。

担当したのは香港・シャティンのチャンピオンズデー。スプリント、マイル、2000㍍のチャンピオンを決める一日で、過去に日本馬も数多く出走している。今回はチェアマンズスプリントプライズ(芝1200㍍)にダノンスマッシュが、メインのクイーンエリザベスⅡ世カップ(芝2000㍍)にはデアリングタクト、ラヴズオンリーユー、キセキ、グローリーヴェイズの4頭が出走した。どちらかというと地元勢が頼りない顔ぶれで、日本馬がどんな勝ち方をするかが注目された。

初の海外レース実況となった香港のレースは東京の狭いブースで担当

新型コロナウイルス禍で現地には行けず、実況は東京都内の専門局「グリーンチャンネル」のスタジオで行った。人1人しか入れない、ナレーションを収録するような狭いブースである。以前、テレビ局に勤めていた頃は、こういうスタジオでよくナレーションを収録したので、懐かしい気もした。ドアを閉めておけばどれだけ発声練習をしても迷惑にならない。競馬場で実況する際は、屋外で周りにスタッフがいる中、ブツブツと馬名を繰り返しつぶやきながら覚えるのだが、練習しているところは人に見られたくないもの。気兼ねなく準備ができるのはありがたい。今後、同じ機会があれば喜んで行きたいと思った。

頭数もスプリントが13頭、チャンピオンズマイル(芝1600㍍)が6頭、クイーンエリザベスⅡ世カップが7頭と少なめ。初経験にはちょうどよい(楽すぎる?)設定だったとはいえ、良い経験をさせてもらったと思う。少数精鋭のメンバーだったからである。というのも、日本でGⅠを実況すれば、ほぼフルゲートとなり、むしろ少数精鋭のGⅠを実況することがない。頭数が少ないと、各馬の順位をただ追うだけでは単調なものになってしまうため、工夫が必要になり、一概に簡単とは言えないのだ。

今回の香港は初の海外競馬実況でもあり「とにかく無事に」という思いが先立って、ひと工夫ができなかったのは大きな反省点だった。一方で、有力馬一頭一頭の動きをじっくり見ながら実況できるのも楽しい。今度はまた、少数精鋭のGⅠを実況してみたい。リベンジの意味でも。

偶然ではあるが、今回触れたレースは、いずれも現地で実況できなかったのが共通点になってしまった。コロナ禍や予算など理由は様々だが、一方で現地からでなくても、様々なことにトライできる可能性があるということも実感した。コロナ禍が沈静化するのはまだ先になりそうだが、今できる範囲のことを必死でやった先に、新たな展望が開けるのだろうと信じている。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 米田元気)

各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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