「球場外でも収益 多彩に」 横浜DeNAビジネス統括本部長
コロナに負けない球団経営(下)
球団経営参画から順調に観客動員を伸ばしてきたDeNAにとって、今季は初めて経験する逆風下の1年となった。オンラインでのファン開拓、収益の複線化――。コロナ下でも球団の魅力を高めうる次の施策を、林裕幸ビジネス統括本部長は練っている。

――無観客となった開幕戦など、一部の試合で有料のオンライン観戦イベントを実施した。
「ファンは球場で応援できず、選手は声援を受けられない。ここのギャップを球団のアイデアで何とかしたかった。『オンラインハマスタ』と銘打ち、ビデオ会議システムで試合映像やOBのトークショーなどを提供した。ファンからの応援メッセージはイニング間に球場で放映した」
――価格は1試合1000円だった。価格設定の考え方は。
「通常のチケットよりは安く、コンテンツを充実させることでDAZN(ダゾーン)といったスポーツ動画配信よりは高く、と考えた。参加した8割の人には価格に納得してもらえた」

――収益につながるという手応えはあったか。
「プロ野球の主催試合は年間70試合程度。コロナの前から、興行依存から脱却して球場の外でしっかり収益をつくることは必要だと考えていた」
「これまでは有料のライブビューイベントなどを行い収益の複線化を図っていたが、コロナに適した形としてオンラインに行き着いた。今季は4カード12試合で実施し、収益化できた部分もあった」
――今後の展開は。
「地方や海外のファンも多数参加してもらえた。デジタルには物理的距離を取っ払える利点があるし、試合映像ありきでなくてもいいと思う。誰に何を提供するか、来季に向けて深掘りして考えたい」
――来季もコロナの影響は続きそうだ。
「観客制限の有無を含めて複数のシナリオで準備している。グループでの観戦がしやすくなるように、簡易的なボックスシートを導入するのも一案だ」
「球団経営に参画してから、イベント開催や演出強化など、試合以外にも球場で楽しめる要素を加えてきたことが観客動員の増加につながってきた。前例踏襲ではなく、常に新しい風をスポーツ界に巻き起こすのがDeNAらしさ。『コロナだから仕方ないね』ではなく、この時期だからこその楽しみ方をファンに提供していきたい」
(聞き手は木村慧)
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