メッシ、マラドーナ超えるW杯9点目 アルゼンチン8強

「大変な試合になることは分かっていた。フィジカルの部分がすごく問われることも。次のステップに進めて本当に幸せだ」
12日間で4試合という立て込んだ日程の中で、粘るオーストラリアを突き放したアルゼンチンのメッシは晴れ晴れとした笑顔を見せた。サウジアラビアに不覚を取った初戦から3連勝と立ち直ったチームに希望の光を見いだした。そんな表情だった。
見事な35分の先制点だった。「あれで一気に試合内容が改善した」とスカロニ監督を喜ばせた一撃はFKから。メッシが右サイドから上げたボールがクリアを挟んで再び自分に戻ってくる。それをマカリテルに預けると、一目散にゴール前へ。

マカリテルはオタメンディへの縦パスを選んだが、止め損ねて大きく足元から離れたボールがメッシへの絶好の落としになった。特長である膝から下の小さな振りのシュートは正確にゴール左下隅へ。
野球でいえば、振りかぶらずにクイックモーションで投げるようなもの。DFは寄せるタイミングを狂わされ、GKからはDFと重なった状態から飛び出てくる見えにくいシュートになる。今大会3点目は偉大なる先達、ディエゴ・マラドーナを追い抜く、W杯通算9点目でもあった。
エースが決めれば、チームは自然に活気づく。初戦でサウジアラビアに不覚を取った後の「この世の終わり」みたいな暗い顔はどこにもない。パスは小気味よくつながり、要所で相手の突進をかわすテクニックも挿入する。その度にスタンドを埋めた圧倒的多数のサポーターからマタドール(闘牛士)をたたえるようなやんやの喝采。

終盤のピンチはGKのE・マルティネスがビッグセーブ。GKといえば、長年アルゼンチンの泣きどころだった。今回はそこに人を得ている。
スタジアムの熱狂は、まるでブエノスアイレスにいるよう。試合後、サポーターとエールを交換したメッシは感動の面持ちで語る、語る。

「この美しい瞬間を彼らと共有できたことがたまらなく幸せだ。彼らが、ここに来るためにどれだけの努力を払ったかを私は知っている。この絆、この団結こそが代表チームの美しい何かなのだと思う」
準々決勝はオランダと対戦する。8年前に準決勝で当たってPK戦で勝った相手で、チームを率いるはその時、敗将となった知謀の人、71歳のファンハール監督。最終ラインには当代最高のCBとされる、ファンダイクがいる。悲願の優勝を目指すメッシにとって、これまでと桁違いの難関になる。
(アルラヤン=武智幸徳)
プロ1000試合、主将でW杯16試合…メッシ記録ずくめの夜
オーストラリア戦はメッシにとって、記録ずくめの試合となった。
アルゼンチン協会の公式サイトによると、2004年10月16日のエスパニョール戦に始まって、この日でプロ通算1000試合出場を達成(バルセロナで778試合、パリ・サンジェルマンで53試合、代表で169試合)。18年のキャリアの中で789得点、348アシストを積み上げたという。
また5大会目のW杯で出場試合数は23となった。これはイタリアのパオロ・マルディーニに並ぶ史上3位で、準決勝まで行くと1位のローター・マテウス(ドイツ)に並ぶことになる。主将としての出場数16はメキシコのラファエル・マルケスを抜いて、こちらは単独トップに立った。
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