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成長するサッカー五輪組 フル代表、大変わりの可能性

サッカージャーナリスト 大住良之

準決勝でスペインに敗れ、円陣を組む日本イレブン。五輪代表の選手たちが今後、フル代表の主力を形づくっていくことは間違いない=共同

東京オリンピックのサッカーで、女子なでしこジャパンは準々決勝で敗退したが、男子U-24(24歳以下)日本代表は3位決定戦でメキシコと銅メダルを争うこととなった。中2日での6連戦。しかも準々決勝と準決勝は120分間の戦いで疲労困憊(こんぱい)だろうが、チーム総力で最後まで戦い抜いてほしい。メダルに手が届くかはわからないが、オリンピックの戦いを経て、ひとつだけ確実なことがある。「兄貴分」の日本代表が大きく変わることだ。

日本代表は、9月にスタートするワールドカップ2022年カタール大会のアジア最終予選を控えている。最終予選は本来ならそろそろ大詰めを迎えるはずだったが、新型コロナウイルス禍のためにスタートが1年間遅れた。9月~22年3月にかけてほぼ隔月に2試合ずつ消化し、7大会連続出場を目指す。そのメンバーが、これまで2次予選を戦ってきた顔ぶれから大幅に変わりそうなのだ。

日本代表とともにオリンピック代表も率いてきた森保一監督は、「1チーム2カテゴリー」を標榜し、オリンピック年代を含む「ラージグループ」をひとつの戦い方の下で強化してきた。その結果、今回のオリンピックに出場している選手の多くが日本代表での出場経験をもち、それがオリンピックでのプレーに反映され、好結果につながっている。

しかしこのオリンピック終了とともに「1チーム2カテゴリー」が解除されて「1チーム」になる。そしてそのとき、オリンピックのカテゴリーにいた選手たちが日本代表の主力を形づくっていくことが確実になったのである。

準々決勝のPK戦でニュージーランド選手のキックを止めるGK谷=共同

経験を必要とするGKは、権田修一(32、清水)の安定感を外せないかもしれない。しかし今回のオリンピックで見せた谷晃生(20、湘南)のパフォーマンスは抜群だった。21歳で日本代表の正GKとなった川口能活(日本代表1997~2010年)以来の「若い正GK」の誕生も十分ありうる。

DFラインは、オリンピックには2人の「オーバーエージ」が含まれ、吉田麻也(32、サンプドリア=イタリア)と酒井宏樹(31、浦和)は当然日本代表でもレギュラー。森保監督が就任して以来ずっと吉田の「相棒」となってきた冨安健洋(22、ボローニャ=イタリア)を含む3人は、これまでの日本代表と同じだ。

しかしこのオリンピックで左サイドバックとして中山雄太(24、ズヴォレ=オランダ)が飛躍した。日本代表の左サイドバックは10年以上にわたって長友佑都(34、所属先未定)の独壇場だったが、中山がポジションをつかむ可能性は高い。

中山㊨は五輪で左サイドバックとして飛躍した=AP

オリンピックのボランチは、オーバーエージの遠藤航(28、シュツットガルト=ドイツ)を軸に、田中碧(22、デュッセルドルフ=ドイツ)と板倉滉(24、マンチェスター・シティー=英国)が使われたが、田中は攻撃面で、板倉は守備面で日本代表の常連となった守田英正(26、サンタクララ=ポルトガル)をしのぐ能力を見せている。板倉はセンターバックとしても日本代表レギュラークラスの力をもっており、今後中心的存在になるのは間違いない。

オリンピックの攻撃陣では、攻撃的MFの堂安律(23、PSV=オランダ)と久保建英(20、レアル・マドリード=スペイン)が、個としてもコンビとしても世界のどんなディフェンスも脅かす力があることを証明した。とくに久保の急成長は、このオリンピックの最大の収穫だった。

「オリンピック組」がいなくても、日本代表の攻撃陣は多士済々だ。右サイドにはベルギーリーグで圧倒的な存在感を見せているスピードスターの伊東純也(28、ゲンク)、トップ下にはブンデスリーガのスターになりつつある鎌田大地(25、アイントラハト・フランクフルト=ドイツ)、そして左サイドにはイングランドで奮闘する南野拓実(26、リバプール=英国)がいる。そしてワントップは、不動のエース大迫勇也(31、ブレーメン=ドイツ)だ。

しかし堂安と久保がその一角を崩すのは確実だ。またFW上田綺世(22、鹿島)はポストプレーの能力で大迫の有力なバックアップ候補になるだろう。

堂安㊨と久保が多士済々な日本代表の攻撃陣の一角を崩すのは確実だ=共同

日本代表でいきなりレギュラーというわけにはいかないかもしれないが、オリンピックで高いレベルの「ポリバレント(複数のポジションをこなせる多機能性)」な能力を見せた旗手怜央(23、川崎)、サイド突破の能力を示した相馬勇紀(24、名古屋)も、日本代表に名を連ねる可能性は十分ある。またオリンピックではコンディションが整いきれなかった三笘薫(24、川崎)も、今後日本の切り札になる可能性をもち、期待される選手だ。

サッカーのチームには「安定」はない。あるのは、「成長しているチーム」と「下り坂のチーム」だけだ。そしてチームの成長とは、個々の選手の成長であり、選手の伸びる力だけがチームを成長させる。

「オリンピック組」の合流で、日本代表の競争はこれまでになく激しくなる。競争の激しさは選手個々の挑戦と成長をうながし、それがチームの成長に直結する。9月からのワールドカップ・アジア予選を勝ち抜き、来年のカタール大会を迎えてもまだ成長を続ける日本代表であるために、今回のオリンピックは決定的な意味をもつことになりそうな予感がする。

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